高校数Ⅱ「式と証明」。3次式の因数分解と対称式の計算。
今回から数Ⅱの学習に入ります。
まずは、「3次式の因数分解」です。
例えば、こんな問題です。
問題 27x3+8y3 を因数分解せよ。
3乗+3乗 の因数分解の公式を使うのだと、すぐにピンとくる人が多いと思います。
この公式は、一応数Ⅱの学習範囲なのですが、数Ⅰの教科書や参考書にも載っていますので、そこで学習済みの人が大半でしょう。
公式は、
a3+b3=(a+b)(a2-ab+b2)
です。
この公式は、右辺を展開すると左辺と同じになることから証明できます。
疑問を感じる人は、一度、右辺を地道に展開して、左辺になることを確認すると良いと思います。
公式が信頼できたところで、利用してみましょう。
27x3+8y3
=(3x+2y)(9x2-6xy+4y2)
できました。ヽ(^。^)ノ
では、こんな問題はどうでしょう。
問題 x6-64 を因数分解しなさい。
上の類題に見えて、これが意外に難しいのです。
3次式の因数分解の公式のもう1本は、
a3-b3=(a-b)(a2+ab+b2)
です。
直前まで、この公式の基本練習をしていると、それに引きずられやすくなります。
xの6乗は、xの2乗の3乗。
ということは、
x6-64
=(x2-4)(x4+4x2+16)
=(x+2)(x-2)(x4+4x2+16)
よし、できたー、と思ってしまいそうですね。
しかし、これはまだ正解ではありません。
x4+4x2+16 は、さらに因数分解できるのです。
数Ⅰで学習しました。
複2次式の因数分解というものです。
x4+4x2+16
=x4+8x2+16-4x2
=(x2+4)2-(2x)2
=(x2+4+2x)(x2+4-2x)
=(x2+2x+4)(x2-2x+4)
平方完成の考え方を利用する解き方です。
存在しないものをあえて足し、その後同じものを引いて辻褄をあわせます。
そんなことをしていいの?とキョトキョトする高校生もいます。
答えを見たら理解できるけれど自分ではきっと発想できない、と諦めてしまう子もいます。
それにしても、この問題、本当にこんなに難しい解き方しかないのでしょうか?
実は、もっと易しいやり方があるのです。
中3で学習した2次式の因数分解の公式、a2-b2=(a+b)(a-b)をまず利用します。
その後、3次式の因数分解の公式を利用します。
x6-64
=(x3+8)(x3-8)
=(x+2)(x2-2x+4)(x-2)(x2+2x+4)
随分簡単に解いていくことができます。
3次式の因数分解を勉強したのだから、3次式の公式だけを使うのだ。
そういうふうに視野が狭くなっていると、一番上の解き方しか発想できません。
6次式を2次式と4次式に分解したら、後が厄介なのではないか?
それよりも、3次式と3次式に分解したほうが後がやりやすいのでは?
慣れてくれば、そのように先の見当をつけて解いていくこともできると思います。
続いては、「3次式の展開公式の利用」に関する問題。
こんな問題です。
問題 x+1/x=3のとき、x3+1/x3の値を求めよ。
対称式の値に関する問題です。
中3から既に発展的内容として学習していますし、数Ⅰでも、新しい単元になる度、その都度それに関する対称式の問題を学習してきましたから、そろそろ慣れてきている人も多いと思います。
しかし、対称式の問題に対処する度に、同じことが同じように解けない人もいます。
理解できなかったことがそのまま残ってしまっていたり。
わかったつもりだったのが、結局わかっていなかったりするのだと思います。
基本対称式に関する問題は、x+yの値と、xyの値、すなわち和と積と2本の式があるはずなのに、この問題は和の式しかない。
これじゃ、解けない。
あるいは、積が与えられていなかったから、基本対称式の問題だと気づかなかった。
そういう人が多いです。
確かに、この問題では、x+1/x=3 という和しか与えられていません。
でも、積は計算できるのです。
積は、x・1/x=1 です。
これの理解が重要です。
何年か前、数学が苦手な高校生とこんなふうな会話を交わしたことがあります。
「積は、x・1/x=1と計算できるんですよ」
「何でですか」
「約分すると、そうなりますよね」
「どうしてですか」
「分母のxと分子のxを約分すると、1になるでしょう?」
「でも、xって、何の数かわからないじゃないですか」
「・・・・え?」
「何の数かわからないのに、約分していいんですか」
「・・・・約分していいですよ。分母のxが例えば8なら、分子のxも同じ8なのだから、約分できるじゃないですか」
「xが8って、何でわかるんですか」
「今、『例えば』と言いましたよ。8でも7でも、分母のxと分子のxは同じ数ですから、約分できますよ」
「分母のxが8で、分子のxが7だったら、どうするんですか」
「そういうことはないから、大丈夫ですよ」
「何で大丈夫だってわかるんですか」
・・・・うーん、これは大変だ。
数学が苦手な子の頭の中で、「変数x」は、こんなにも不安定なものなのだと実感しました。
数Ⅰの復習云々ではなく、小学校の「関係をあらわす式」のあたりから、もうxとyに不信感があり、理解したふりで理解できずに高校生になってしまったのだろうと思うのです。
方程式のときはxの値が定まったり。
関数になるとxの値は定まらなかったり。
数学がわからない子は、このあたりが特に混沌としているのだと思います。
「方程式と関数って、何が違うんですか?」
と問われることもあります。
グラフを利用できる点でかなりの部分は重なるが、そもそも定義が異なるものなので違いを考える必要はないと思うが、と説明すると、しかし、彼らは余計に混乱します。
数学がわからない人は、その学習段階では触れないほうが良い疑問に抵触しやすい人なのかもしれません。
その一方、中学2年の「1次関数」の学習で、連立方程式をグラフで解く方法はどこの中学でも必ず学習するのです。
また、x=3 や y=-2 といった式もグラフに表せることを学びます。
方程式と関数はかなりの部分で重なるものであることがそのときに示され、積年の疑問が晴れて頭がスッキリするはずなのですが、その学習にそれほどの感動を示す子を見たことはありません。
方程式と関数は、何が違うのか?
彼らの考えている疑問の正体は、そういうことではないのかもしれません。
方程式と関数は、同じもののようなのに、使い方が違うのはなぜなのか?
わからないことの正体は、それなのかもしれません。
彼らの混沌とした疑問は、言葉の数が少ないこともあって、本当に分析が難しいのです。
数学が苦手ということは、どういうことなのか。
その解明は、なお道半ばです。
ともかく、上の問題をもう一度見直しましょう。
問題 x+1/x=3のとき、x3+1/x3の値を求めよ。
対称式の計算のとき、因数分解の公式の他に、便利な公式があります。
a3+b3=(a+b)3-3ab(a+b)
というものです。
これなら、a+b とab さえわかれば代入して求められます。
この式も、右辺を展開すれば左辺になることで証明できます。
対称式の値を求めるために作られた公式です。
使ってみましょう。
x3+1/x3
=(x+1/x)3-3x・1/x(x+1/x)
=33-3・1・3
=27-9
=18
これが答えです。
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