英語長文を何とか読み進めていく力。

セギ

2024年07月24日 17:40


例えば、以下のような長文を読むときに。

A consumer walks into a store. They stands in front of hundreds of boxes of laundry detergent. They chooses one brand, pays for it, and leaves. Why dose they pick that specific kind of soap? Is it truly better than the others? Probably not. These days, many products are nearly identical to one another in quality and price. If products are almost the same, what makes consumers buy one brand instead of another? Although we might not like to admit it, commercials and advertisements probably influence us much more than we think they do.

問 下線部の it が表す内容を、句読点を含めて30字以内で述べよ。


さて、繰り返し述べてきていることですが、高校生として知っておくべき基本単語が身についていないために英語長文が読めない場合は、まず単語力強化が課題です。
上の文章で言えば、consumer , product , quality , price , admit , commercials , advertisement などの単語の意味が1つもわからない場合は、この文章は読めません。
わからない単語がある中でも何とか文意を取って問題に正解していく、というのにも限界がありますので、高校生として知っておくべき基本単語は覚えましょう。

さすがに、それくらいは、わかる。
でも、他にわからない単語があるので、もやもやする。
そういう生徒と授業をしていたときのこと。

さて、まず第1文。
A consumer walks into a store.

「わからない単語は、ありますか」
「ありません」
「はい。では、日本語にしてみてください」
「消費者が、店に歩いて入っていく」
「はい。すばらしい」

第1文から、論を展開される文章も意味がとりづらいですが、このように、具体的な話から文章が始まるのも、違和感が強くて、どう読んでいいかわからない、という人がいます。
これは、とにかく慣れが必要です。
そういう書き方の文章もあるんだな、と慣れてしまうことです。

続く第2文。
They stands in front of hundreds of boxes of laundry detergent.

「この they は大丈夫ですか。1文目の主語が a consumer だったので、男か女かわからないんです。少し前は、こういうとき、he or she という代名詞を使いましたが、それも面倒なので、今は、they を使うことがあります。『単数形の they』と呼ばれるものです」
「はい」
「他に、この文で、何かわからない単語はありますか」
「detergent」
「うん。単語集にあまり載っていない単語ですね。品詞は何ですか」
「名詞?」
「はい。では、デタージェントのままで訳してください」
「消費者は、立つ。何百ものランドリー・デタージェントの箱の前に」
「はい。いいですね」
「ランドリー・デタージェントって何ですか」
「では、ランドリーって、何?」
「・・・」
「コイン・ランドリーって、知っている?」
「知りません」
「そうですか・・・」

英語の長文を読み進める際に、日本語の語彙力も重要です。
日本語の語彙が豊かな子ほど有利ではあるのです。
高校生にとっては、コインランドリーはあまり関係がないもの。
生活に密着した言葉ではありません。
自分にあまり関係がないものには関心がない。
知識も語彙も広がらない。
そういうことは、あります。
それでも、自分に全く関係のない文章を読まなければならない・・・。
国語も英語も、文章が読めない子は、そういう弱点を抱えていることがあります。

「まあ、大丈夫。そのままにして、第3文に進みましょう」

They chooses one brand, pays for it, and leaves.

「消費者は1つのブランドを選んで、支払って、去る」
「すばらしい。では、次の文を日本語にしてください」

Why dose they pick that specific kind of soap?

「specific の意味がわかりません」
「じゃあ、スペシフィックのままで」
「なぜ、消費者は、あのスペシフィックで親切な石鹸を刺したのか?」
「お?」

わからないことがたまっていくと、やがて訳が崩れていく・・・。
そして、意味が取れなくなっていく。
そのようなことはよくあります。

「じゃあ、もうスペシフィックを飛ばして、that kind of soap として訳してみよう」
「・・・あ。なぜ消費者は、あの種類の石鹸を刺したのか?」
「刺したんですかね?前の文から推測しましょう。話は急に飛んだりはしないです。2文前で、この消費者は何をしました?」
「1つのブランドを選んで、支払って、去る」
「ですよね。じゃあ、刺してないよね?」
「・・・選んだ?」
「そう。ピックアップと考えるとわかりやすいかな?」
「ああ・・・」
「1つのブランドを選んだんですね。ブランドってわかる?」
「何となく・・・」
「何のブランドを選んだんでしょうか」
「ランドリー・デタージェント」
「はい。そうそう。それは、今の文で、どう言い換えられていますか?」
「え?」

英語は、同じ単語を極力使わないようにする言語です。
同じ表現ばかり使う人は、文章を書くのが下手な人。
教養のない人。
そう思われるので、日本人の感覚からすれば異様なほどに言い換えます。
それを前提に英文を読んでいくことが必要です。
その前提を理解しないまま英文を読む人は、読んでいてすぐに迷子になってしまいますし、四択問題などで、本文と同じ表現のひっかけの選択肢に簡単にだまされます。
英文は、同じことを別の言葉でどんどん言い換えていくのです。
選択肢も、基本的には言い換えてあるものが正解です。
本文と同じ表現が使われている選択肢は、フェイクの可能性が高い。
そういう観点で問題を解いていくだけで、正答率が上がります。

「この消費者は、選んだんですよね。何を選んだの?」
「ランドリー・デタージェント」
「うん。それは、今の文で、何と言い換えられていますか?」
「えー・・・。わからない・・・」
「ほお・・・。では、今の文をもう1回訳して」
「なぜ消費者は、その種類の石鹸を選んだのか」
「うん。つまり何を選んだの?」
「・・・石鹸?」
「そうですよ。ランドリー・デタージェントは、石鹸。正しくは、洗濯洗剤のことです」
「ああっ・・・」
「このように、言い換えてあることが多いので、英文を読むときは、諦めないことです。先を読んでいくと、同じことが別の言葉で表現されているから、諦めない。そこを読み取りましょう」
「はあ・・・」

続く文。

Is it truly better than the others?
「それは他よりも、本当に良いのですか」

Probably not.
「多分、違う」

These days, many products are nearly identical to one another in quality and price.

「わからない単語はありますか?」
「identical」
「うん。でも、似たような単語は知っているはずですが。見覚えはありませんか」
「えー・・・」
「identify は?」
「えーと、えーと・・・」
「identification は?」
「えー・・・」
「国語の授業で読んだ文章に、アイデンティティという単語は出てきませんでしたか?評論でよく使われる単語なので、知っておかないとまずいはずですが」
「よくわかりません・・・」
「では、identical の品詞は?」
「多分、形容詞?」
「はい。それでは、アイデンティカルのままで、文全体の意味を取ると?」
「この頃、多くの製品は、近くアイデンティカルだ。お互いに。質と価格で」
「うん。まあいいですよ。では、次の文の意味は?」

If products are almost the same, what makes consumers buy one brand instead of another?

「もし製品がほとんど同じならば、何が消費者に買わせるのか。1つのブランドを。他の代わりに」
「すばらしい。よく勉強しています。そして、これも、前の文を言い換えていますね。nearly identical の言い換えは、この文のどこかな?」
「あ。 almost the same」
「そうです。こういう言い換えに乗っていけば、少しくらいわからなくても、読み進めていけるんです」
「はあ・・・」
「でも覚えていたほうがより楽に英文を読んでいけます。identify は、『同じものと考える , 同一視する』という意味の動詞。identification は、同一であることの証明、すなわち『身分証明書』という意味の名詞。IDというのはその頭文字です。identity は、自己同一性。すなわち、自分らしさ。自分であることの根拠。よりどころ」
「はあ・・・」
「覚えましょう。他の英文でもよく出てきます。こういう単語は、覚えておけば得をします。多くの文章で出てくるこういう単語は、覚えましょう。単語集に載っている単語は、そういう単語です」
「はい」
「では、次の文の意味は?」

Although we might not like to admit it, commercials and advertisements probably influence us much more than we think they do.

「私たちはそれを認めることが好きではないかもしれないのではあるが、コマーシャルと広告は、多分影響する。私たちに。私たちが思っているよりも」
「すばらしいです。では問題を解きましょう。下線部の it の内容は?」
「1つのブランド?」
「・・・え?」

ここまで読み取っているのに、問題が解けない・・・。
代名詞の指示内容を把握できない。
おそらく、国語も苦手なのだろうと思うのです。

読書習慣がないからだろうなあと根本の原因は容易に思いつくのですが、もう高校生になっていて、今更読書をするわけがない。
文字を読むのは勉強をするときか、スマホを見るときだけ。
指示語の指示内容を読み取らねばならない文章がスマホに出てくるわけがないので、国語が苦手な子は、勉強しない限りは国語が苦手なままです。
そして、とても安易な勉強をしてしまうことがあります。

上の子の間違いは、「指示語の指示内容は、直前に書いてある」という思い込みから発生していました。
it に当たる単数名詞を前の文で探したら、one brand が見つかった。
そういうことだったのでした。
そうやって、機械的に解いていくことでもある程度は正解するのですが、そういう読み取りをしているということは、もしかしたら、文章の意味は全く理解できていないのではないか?
そのような気配も感じて不安になるのです。

Although we might not like to admit it, commercials and advertisements probably influence us much more than we think they do.
「私たちはそれを認めることが好きではないかもしれないのではあるが、コマーシャルと広告は、多分影響する。私たちに。私たちが思っているよりも」

「さきほどの訳、すばらしかったですよ。その意味をよく考えてください。『それ』の中身は何でしょうか」
「・・・」
「国語の文章もそうなんですが、『それ』の中身は、前の文に書かれているとは限らないのです。『それ』の後ろに中身が書かれていることも、たまにあるんですよ」
「ええっ」
「機械的に解くのではなく、意味を理解すれば、わかるんです」
「えー・・・」
「私たちは文章を読んでいるのですから、文章の意味を理解しましょう」
「解き方とか、ないんですか」
「うーん・・・。この文の although 節は従属節ですから、主節の後ろに書くこともできます。だから、本来後ろにあった it が前に来たのだという解釈はできますが、そんな解釈は、むしろ面倒くさいと思います。『それ』の中身を『1つのブランド』だとして、それで文の意味が通るかどうかを確認すると何か変だなと感じることのほうが簡単だと思いますよ」
「えー・・・」
「指示語の指示内容を答えるときは、元の文に入れてみて、本当に意味が通るかどうかを確認しましょう。結局、小学校の頃からそのように教わっていませんか」
「・・・」

あてはめてみましょう。

「私たちは1つのブランドを認めることが好きではないかもしれないのではあるが、コマーシャルと広告は、多分影響する。私たちに。私たちが思っているよりも」

これは、文脈上、おかしい。
だって、実際は、1つのブランドを認めて選んで、買って帰ったのですから。

「私たちはそれを認めることが好きではないかもしれないのではあるが、コマーシャルと広告は、多分影響する。私たちに。私たちが思っているよりも」

それ、の中身は何でしょうか。
この文の後半の内容ですよね。
これを、30字以内でまとめましょう。

字数制限がある場合は、面倒でも下書きをしたほうが完成度の高い答案を書くことができます。

コマーシャルと広告は
私たちが思っているよ
りも私たちに影響する
ということ。

下書きは、36文字になりました。
さて、何を削るか?
この場合、コマーシャルと広告は、ほぼ同じ内容なので、どうしても2つ書かなければならないものではありません。

「広告は私たちが思っているよりも私たちに影響するということ。(29字)」

これはこれで正解です。
ただし、記述答案の正解は1つではありません。

この下書きでは、私たち、という表現がかぶっています。
ここを削れないかなあ、と考えた場合。

「コマーシャルと広告が思っているよりも私たちに影響すること。(29字)」

この答案は無生物主語なので、いっそ、主語を転換した場合は。

「私たちは思っているよりもコマーシャルと広告に影響されること。(30字)」

などとスラスラと書いてきましたが、こういう推敲が苦手な人は多いです。
記述答案を作ってきた経験がほとんどないのだろうと想像されます。
このように、英語の授業なのに、結局、記述答案作成の授業になってしまうことも多いです。
でも、それも必要なことなのです。




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