倍数とあまりに関する受験算数の問題を、高校数学で解く。

セギ

2024年04月23日 12:18


9個前のブログ「考えて問題を解く習慣のない子」で扱ったのは、受験算数の「倍数・約数の問題」の中でも、難しい問題でした。
こんな問題です。

問題 5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数で、1000にもっとも近い数を求めなさい。

まずは、受験算数的な解き方の復習から。
これは、「あまり」が一致していたり、裏側から考えて「不足」が一致していたりするなら、その分をまずは除外して考えて、最後に調整すればいいので、比較的簡単な問題です。
ところが、この問題は、「あまり」も「不足」も一致していない。
だから、かなり手作業が必要になります。
1000に近い数をいきなり求めるのは無理なので、まずは、一番小さい数で、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数を探すことが必要になります。
5の倍数で試しても、7の倍数で試しても、いずれ同じ結果が出ますが、7の倍数のほうが速く大きくなっていくので、7の倍数を基準に考えてみます。
7で割ると4あまる数を、小さい順に考えていき、それが5で割ると3あまるのならば、探していた数だということになります。

7で割ると4あまる数。

4 , 11 , 18 , ・・・

見つかった!18がそうです。
では18の次に、5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数は?
あまりが変わってはいけないので、18に加える分は、5で割っても、7で割っても、割り切れる数、すなわち、5と7の最小公倍数35。
これを加えていく分には、「5で割ると3あまり、7で割ると4あまる」という条件はクリアしています。

18 , 53 , 88 , ・・・

これらの数の性質は?
これらは、35で割ると18あまる数です。
つまり、「5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数」は、「35で割ると18あまる数」だったのです。

では、そういう数で、1000にもっとも近い数は?
1000÷35=28あまり20
ですから、
35で割ると18あまる数で、1000にもっとも近い数は、
1000-2=998
求める答は、998 となります。


さて、このように人力で頑張っていけば答にたどりつける問題ではあるのですが、これを計算で解いていく方法はないのでしょうか。
あります。
しかし、中学数学ではまだ無理です。
高校数学で解くことになります。

数A「数学と人間の活動」という、新課程ではかなり弱体化した単元の中の「不定方程式」を利用する解き方です。
旧課程では「整数の性質」という単元でした。
大学入試共通テスト数Aの選択問題の1つで、「図形」が苦手な人は選択せざるを得ない問題でした。
しかし、新課程になって、「数学と人間の活動」は、共通テストの範囲から消えました。
とはいえ、まだ、案外丁寧にこの単元を学習している高校が多いように感じます。
少なくとも、私が個別指導している生徒で、学校でこの単元がないがしろにされている例は見ないです。
旧課程の教科書をプリントしたものを使ってでも、しっかり「整数の性質」を学習している高校ばかりです。


不定方程式とは?
5x-7y=1
のように、文字は2種類使っているのに、式は1本しかないので、定まった1つの解は求められない方程式です。
文字が3種類で、式は2本、ということもありますし、文字が3種類で、式は1本、ということもあります。
ともかく、定まった1つの解は求められないので、不定方程式、と呼ばれます。

定まった1つの解が求められないのならば、では、解は求められないのでは?
いえ。
定まった解は求められないですが、解について、共通する性質はあり、それを求めることで、解とします。
不定方程式の求め方については、当ブログの不定方程式のページに詳細が記されていますので、興味のある方は検索していただけますと幸いです。

今回は、不定方程式の求め方の基本は理解しているとして、さて、上の問題をどう解くのか?
もう一度、問題文を見てみましょう。

問題 5で割ると3あまり、7で割ると4あまる数で、1000にもっとも近い数を求めなさい。

「5で割ると3あまる数」も、「7で割ると4あまる数」も、文字を使って表すことができます。
x , y を整数とすると、
「5で割ると3あまる数」は、5x+3
「7で割ると4あまる数」は、7y+4
と表されます。
ここで、同じ文字を使って、
5x+3、7x+4 としてしまうのは、誤りです。
「5で割ると3あまる数」と「7で割ると4あまる数」とは、今回等しいですので、同じ文字で表すと、xの値が1つに定まってしまいます。実際は、そんなことはないので、それぞれ、別の文字を用いて表します。

さて、ここで最終的に求める数を n としましょう。
すなわち、
n=5x+3
また、
n=7y+4
です。
すなわち、
5x+3=7y+4
が成り立ちます。
おお。
不定方程式ですね。

基本的な解き方で、解きましょう。
まず、移項して、整理します。
5x-7y=1

x、y の具体的な値を1つ、ここで暗算で探します。
xが1のとき、xが2のとき・・・と考えていけば、見つかります。
x=3、y=2 のとき、上の式は成り立ちます。
そこで、上の式から、今求めた値を上の式に代入した式を引きます。

   5x- 7y=1
-)5・3-7・2=1

辺々引きますと、
5(x-3)-7(y-2)=0
という式を得ることができます。
これを移項すると、
5(x-3)=7(y-2)

5と7は互いに素です。
そして、x、yは整数ですから、x-3、y-2も整数です。
ということは、(x-3)が7の倍数でなければ、この式は成立しません。
よって、
x-3=7k (kは整数)
と表すことができます。
これを移項すると、
x=7k+3
です。
x は、定まった1つの値にはならないけれど、7で割ると3あまる数という性質を持つことが求められました。
これが、不定方程式の基本的な解き方です。
ここから y の値も求めることができますが、今回は使いませんので、省略しましょう。

この x の値を、上の n=5x+3 に代入します。
すなわち、
n=5(7k+3)+3
 =35k+15+3
 =35k+18

おお・・・。
小学生の解き方と同じ結果が出てきました。
求める数は、35で割ると18あまる数です。
では、その中で、1000にもっとも近い数は?

高校数学では、基本的に ÷ の記号は使いませんので、かけ算で表します。
1000=35・28+20
これより、
k=28のとき、
n=35・28+18
 =998

はい。
同じ答が出てきました。


関連記事