たまりば

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2022年08月13日

教材にまつわる小さなストレス。

教材にまつわる小さなストレス。

中学受験をする小学生に対しては、保護者がぴったりついて学習をサポートしている場合が以前よりもずっと増えてきたように感じます。
子どもが勉強しているのを監督するというレベルではなく、保護者の方が学習内容や教材の準備に深く関わっているのです。
志望校の過去問をコピーして1問ずつに切り分け、一度解いて間違えた問題をノートの1ページの上部に1問ずつ貼ってある「解き直しノート」を生徒が持っていたりします。
スキャンして、パソコンで再編集してスペースを広く取ってプリントアウトしている人もいました。
そうした「解き直しノート」は、お母様の労作なのです。
フルタイムで働いているお母様でも、そんなに手間のかかることをしていました。
それなのに、子どもは、そのお母様の労作の「解き直しノート」に雑な答案を書きちらし、同じことを同じように間違えている・・・。
その様子を見ているだけで、私は徒労感に軽い吐き気を覚えました。
自分の徒労にはわりと鈍感な体質ですが、他人の徒労は、見ているだけできつい・・・。
しかし、子育てということは、そういうことの繰り返しなのかもしれません。

いや、徒労と決めつけてはいけません。
間違えた問題の解き直しは、小学生にとっては、想像以上に負担のかかる作業です。
一度解いた問題をもう一度解くことの意味が、子どもにはわからないのかもしれません。
当然、やる気が起きません。
そもそも、「問題集を見て、解答はノートに書く」という作業が難しい子が今は多いです。
書き込み式のほうが、目が1か所に集中し、学習が進むのです。
だから、子どもの学習ストレスを少しでも軽減すべく、保護者の方たちは頑張ってコピーを取りまくり、切って切って貼りまくっています。


私自身の話でいえば、生徒の学校の問題集からの質問を受けるときには、その問題をスマホで撮影し、その画像を見て問題を解き、解説します。
リモート授業のときには、生徒にその問題を撮影して送ってもらいます。
その画像を私がどう使っているか、あまり理解できていない生徒の場合は、端が切れていたり、ブレていたりなど、画像の質がかなり悪いこともあります。
厚い問題集を撮影するときには、片手で押さえていないとページが閉じてしまうので、片手で押さえ、片手で撮影。
そうなると画像はピンボケ。
生徒ばかりを責められません。
悪い画像を拡大してそれを見ながら私は問題を解きます。
ところが、先日、塾との連携を進めている私立の学校から、生徒の夏休みの宿題を全部コピーしたものをいただきました。
それを解いていて、あまりにもストレスフリーであることに驚きました。
コピーを直接見て、直接書き込めるというのは、こんなに楽なものだったか・・・。

とはいえ、コロナ禍までは、私は生徒と向き合い、生徒の問題集を逆さからのぞき込んで問題を解いていました。
数学の関数の問題も、高校入試レベルなら英語の長文問題も。
逆さに文字を読むことができ、生徒に向けて、逆さに文字を書くこともできる。
個別指導講師の特殊技能を発揮していました。
あれに比べたら、画像とはいえまともな向きで問題を読める今のほうがどれほど楽かしれません。


子どもの場合も、本来は、間違えた問題は自分で問題集に印をつけて、ノートに解き直したらいいのです。
しかし、そうしたことができない子どもは多いです。
勉強にまつわるストレスを少しでも減らすべく、教材準備などの事務作業は保護者の方が一手に引き受け、勉強しやすい環境を作る。
中学受験までは、そのように全面協力するのも仕方のないことなのだと思います。

問題は、中学に入学後です。
広いスペースをとった「書き込み形式」のプリントやテキストでないと問題を上手く解けない子どもは、中学生になっても多いです。
しかし、多くの場合、学校の問題集は、それほどのスペースがありません。

自校に入学した生徒がどんな受験勉強をしてきたかを把握している私立の先生たちは、そこのところを細かく丁寧に指導しています。
例えば、数学では、問題集の問題文を、ノートに青ペンで全文書き写してから、解く。
そのようなノートを作っていない場合は、再提出。
それは、問題を読まずに解く癖のある子に少しでも問題文を読む時間を作らせる狙いもあるのでしょう。

あるいは、学校に教材を卸す教材会社も、書き込み式でないと上手く解けない生徒が多いことを把握しているので、問題集に完全準拠の完成ノートを用意しています。
問題集の問題文が印刷され、解答スペースが空けてあるノートです。
それはまた、先生が生徒の宿題をチェックしやすいノートでもあります。

先生の手作り感あふれる冊子テキストを生徒に配っている中学もあります。
印刷したものをホチキスで中綴じしてある冊子です。
スペースが広くとってある書き込み式で、易しい基本問題を繰り返し繰り返し練習できるようになっています。
1つの単元で10冊ほどの冊子テキストが渡される学校もあります。
これほどの反復をすれば、基本は身につきますね。

しかし、学校によっては、うちの生徒はそこまで過保護な扱いをしなければならない学力ではないと判断しているのかもしれません。
スペースのあまりないプリントをポンと渡し、しかもそれに書き込んで提出、という学校もあります。
これは本来、ノートに解くタイプの問題集なのではないか?
そう思われるプリントに、生徒が雑な字で強引に書き込んでいます。
「これ、本当に書き込むことになっているの?ノートに解いて提出という指示はなかったの?」
「書き込めと言われました」
そんな場合もあります。

計算問題のスペースも全体に狭いけれど、さらにその下の文章題は、解答スペースが縦3㎝程度。
粒の小さい字を整然と書いていく訓練を積んでいるのでない限り、このスペースで方程式の文章題の答案として必要なことを全部盛り込むことは、不可能に思えます。
何をxとしたのかという文字の定義がされていない。
いきなり暗算した結果を使った意味不明な方程式を立てて計算し、出た解が「適」かどうかの判断も勿論しないで解答欄に答を書いている。
そういうダメな答案を書くように、学校側がむしろ誘導しているようにすら感じます。

でも、スペースがないからといって、必要なことを省略するようではダメなのです。
その判断ができるかどうか、それを含めての夏の修行。
そういう意味の宿題なのかなあと夏休み宿題プリントを眺めながら考えてみたりします。

書き込み式教材の欠点は、解き直しがしにくいことです。
小学生の保護者の方たちはそれを見越して、テキスト本体には何も書き込ませず、すべてコピーして与えています。
繰り返し、解き直しができるように。

塾としては、コピー代が経営を圧迫してしまうので、さすがにそれはできません。
でも、解き直しは必要。
そうなると、結論としては、ノートに解いてもらうことになります。
高校入試のための受験勉強をしている生徒たちにとっては、問題をノートに解く練習は、高校入学後に本人が自分で勉強していくためのトレーニングでもあります。
しかし、不安もあります。
「間違えた問題は、後で解き直しましょう。
受験勉強で何をしたらいいかわからないときは、テキストの解説部分を繰り返し読んで内容を理解し覚えるか、問題を解き直すかをしましょう。
それが受験勉強です」
そう助言していますが、答を書いたノートを生徒が捨ててしまう可能性は否定できません。
「解き直したけど、答がわからない」
と、すっとこどっこいなことを言い出すかもしれません。
ノートが、この問題集の解答集。
だから、ノートには、解いた問題のテキスト番号とページを必ず入れておきましょう。
繰り返しそう話しているのですが、何しろ生徒というのは忘れっぽいところがあるので、そんな話は話として、実際には、使い終わったノートは、ああ終わったと、即廃棄してしまうかもしれません。
だから、ノート管理は無理だろうと思われる生徒には、テキストに答を書き込ませることもあります。
高校受験生は、もともと、類題が繰り返し繰り返し出てくる問題集を解いているので、何とかなるのでもあります。
新しい問題を解いているけれど、実質は解き直し。
そのようにして学習を積み重ねています。

昔とは違い、今の子どもたちは、幼い子が多いです。
勿論、昔通りの子もいますが、精神年齢は、「実年齢-5歳」と見積もっておいたほうがいい場合もあります。

中学受験をする12歳は、精神年齢は7歳。
高校受験をする15歳は、精神年齢は10歳。
大学受験をする18歳は、精神年齢は13歳。

その精神年齢にしては、よく頑張っている。
つらい勉強を投げ出さずに取り組んでいる。
それだけで、大丈夫だよ、と思います。
昨日よりは今日のほうが、今日よりは明日のほうが、学力はついている。
それだけで、大丈夫です。




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    Posted by セギ at 14:04│Comments(0)講師日記
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