たまりば

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2022年08月10日

本当の自分はもっと学力が高い。


間違えた問題には印をつけて解き直す。
長く通塾している生徒たちは、それが定着しています。
しかし、まだ通塾期間が短い間は、指示しても、なかなかそれを実行できないこともありました。
間違えた問題でも、印をつけるときと、つけないときがあるのでした。
なかなか思うように結果の出ない子ほどそのような傾向があるように感じました。

見ていると、何か本人なりの判断をしている様子でした。
「今のはケアレスミスで、本当は自分はこの問題は解けるから、印はつけない」
「こんなくだらない問題は、本当は解けるから、印はつけない」
ということなのかもしれません。
そうして印をつけるのは、本人が気に入ったのらしい、難しい問題だけ。
これは重要問題だ、と本人が感じた問題だけに印をつけているようでした。

これは、その子の現実の学力と、本人が思っている学力とが乖離している子にときどき見られる傾向でした。
学力テストの偏差値や学校の定期テストの得点で、自分が伸び悩んでいるのは多少理解しているはずなのですが、何かどこかで自分の能力を過信しているようなのでした。
公立の子よりも、中高一貫校に通う子に多く見られる傾向です。
公立の子は、良くも悪くも学習のやり方を知らず、その分「まっさら」ですから、
「間違えた問題には印をつけて、後で解き直しなさい」
といったアドバイスが、そのまましみ込んでいきます。
一方、中高一貫校の子は、それなりに「自分の学習のやり方」というものがあります。
それが上手くいっているのなら、私がとやかく言う必要はないのですが、学習に行き詰まりを迎えていても、自分のやり方を変えられないのです。

「なぜ間違えた問題の全てに印をつけないの?」
と尋ねても良かったのですが、こちらとしては単なる疑問でそう言っていても、
「叱られた!」
と、ビクッとなってしまう子もいますので、最初は様子を見ていました。
ただし、そういう子の間違えた問題は、私が番号をすべてメモしていました。
そして、時間をおいた授業時にもう一度解いてもらいました。
たいていの場合、もう一度解いても、同じところを同じように間違えます。
「くだらないケアレスミス」をした問題も。
本人が印をつけた「重要問題」も。
重要問題に印をつけただけで満足し、家で解き直すことをしないので、当然そうなります。

簡単な問題は、簡単だと思って気を抜くから、ケアレスミスを繰り返す。
あるいは、それはケアレアミスではなく、繰り返し同じミスをしてしまうその子の「穴」「欠落」がその問題に含まれている。
そして、本人が重視する「重要問題」は、難しいから、解けない。
そうした現実が見えていない間は、同じ問題を間違えます。

まだ十代ですから。
まだ子どもですから。
自分のことは、見えないです。
データが何を示していても、それはそれとして、
「本当は、自分の能力はもっと高い」
と思っていたいのは、それは当然のことです。
テキストを汚してまで印をつけるのは、ケアレスミスしたどうでもいい問題ではなく、自分が「これは大切だ」と思った重要問題だけ。
その気持ちはわからないでもありませんでした。

本当は、その子の能力はもっと高い。
確かに、それはそうなのでした。
でも、その能力を形にすることができていませんでした。
簡単な問題には気を抜き、難しい問題は無理だと諦める。
問題を解いているときにそんなふうに感情が揺れていては、正答は増えません。

秀才は、自分が間違えた問題に優劣はつけません。
間違えた問題は、間違えた問題。
実際に、間違えたんだから、仕方ない。
それがすべて。
そんなことにプライドが傷ついたりはしないのです。
間違えたら、それを正答できるようにすればいいだけです。
それが「学習」ということだから。
自分は「学習」をしているので、今の段階で、全問正解にこだわる必要はない。
全問正解を目指し、そこにプライドをかけるのは、自分の学力を試す場でのこと。
普段の家庭学習や、塾での学習は、その場ではない。
そういう割り切り方ができているものです。
だから、私に対し、底抜けに「アホな」質問も平気でします。
わからないときは、「わからない」と普通に言います。

自分が間違えた問題に印すらつけられない。
むしろ、それは自信のなさの表れなのかもしれません。
あまりにも傷つきやすい。
自分の学力に対して、内心で不安が強いのだろうと私は感じていました。

現実を認め、現実を変えて、テストの得点を、テストの偏差値を、上げていくこと。
中高一貫校の場合、本人の成長よりも学校の学習進度のほうが速く、学習内容が急カーブで難度を上げていくため、ある程度の努力をしてもむしろ得点は下がっていく時期もあります。
そのまま退会した子もいましたが、そうしたなかで、余計なプライドや不安がそぎ落とされ、静かに学習に立ち向かえるようになった子もいました。

本当の自分はもっと能力が高い。

・・・それは、どんなふうに?
「本当の自分」と「現実の自分」とのギャップは、では、どこから生まれるのでしょうか?

「本当の自分」を本当にするために、では、何が必要なのでしょう。
「現実の自分」から目を背けていて、それは可能なことでしょうか。

人よりミスが多いことを認められない自分。
一度解いた問題は、二度目はもう正解できると、信じている自分。
努力しなくても結果を出せるのがかっこいいと思ってしまう自分。
そもそも自分はそんなに低いレベルではないと、何の根拠もないのに思っている自分。

人はどうしても自分は特別だと思いたいので、そうした幻想は消えるものではありません。
心の中は、どうにもなりません。

それでも、まずは、間違えた問題に印をつけましょう。
そして、解き直してください。
そこに小さな現実があります。
一度目に間違えた問題を、本当に二度目は全て正解できるでしょうか。
小さな現実の積み重ねから、「現実の自分」が見えてきます。
「現実の自分」を把握することから、「本当の自分」への道が始まると私は思います。




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