たまりば

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2022年07月12日

三者面談と誤解と夏期講習。

三者面談と誤解と夏期講習。

大手の個別指導塾に勤めていた頃の話です。
夏期講習で、小6の女の子を新しく担当することになりました。
私立の小学校に通っている子で、中学は内部進学が決定していました。
その子に、中1レベルの数学を教える仕事でした。

小6女子に、中1数学を教える?
なんで?

何だかよくわからないまま、教務から指定されたテキストで、「正負の数」を教えました。
ブラスとマイナスの符号がつくだけで、計算自体は、ひとケタ、あるいはふたケタの整数の計算が主ですから、小6で勉強していることよりむしろ易しいくらいの単元で、本人は楽しんで勉強していました。
でも、なぜこの子が、小6の夏休みに中1の数学を勉強しなければならないのか、私には理由がわかりませんでした。
特に算数が得意な子ではない。
特に算数が好きな子でもない。
中1数学の予習は、2月か3月、小学校の卒業が近づいてからやればいいことです。
それより前にやっても、継続しなければ忘れてしまいます。

夏期講習というのは、生徒も講師も普段より人数が多く、ゴタゴタしています。
一方、教務は正社員ですので、交替で夏休みをとりますから、なかなか落ち着いて教務と話をすることができない期間です。
それでもようやく、彼女の担当教務と話をする機会があり、なぜ、小6の夏休みに中1の数学の予習をするのかを訊いてみました。
「それは、お母さんからの要望だよ。学校の先生が、夏前の個人面談で、夏休みは、中学入学の準備のための勉強をしましょう、と言ったんだって」

中学入学の準備のための勉強・・・?

受験をしない小6の子が、夏休みに行う、中学入学の準備のための勉強というのは、中1の「正負の数」の予習ではないのではないか?
もっと根本的に、中学に入って困らないように、分数の四則計算を自在にこなせるようにしておくこととか、方程式の文章題でよく使う、割合や速さの単元を復習しておくこととか、中学の図形分野の知識がすんなり頭に入るように、面積・体積の公式をしっかり身につけておくくこととか、そういうことではないのかなあ。
学校の先生は、そのつもりで言ったと思うけどなあ。

それを私が説明しますと、教務は、そんなことはわかっていてしらばっくれたのか、それとも、そのとき初めて気がついて、あっ、と思ったからなのか、急に不機嫌になり、もう返事をしてくれなくなりました。

指導内容の変更の指示も出ないので、その先も、私は、その小6の女の子に、中1数学の「正負の数」を教え続けました。
保護者からの依頼内容が中1の予習だったのなら仕方ないのかもしれません。
保護者が、学校の先生の言葉をそのように受け取り、そのように依頼してきたとき、それは違うんじゃないですかとは、塾として、なかなか言いにくいことですし。
だけど、やっぱり、何かおかしい。
本人も保護者も納得しているのだから、どこからも文句は出ませんでしたが。
仕事とは、そういう面もあるものですが。

これは、学校の先生の言い方が悪いとばかりも言えないことです。
学校の先生だって、そんなに意味のあることばかりしゃべり続けることはできませんから、ときどき、ものすごく適当なアドバイスをして、言った本人も覚えていなかったりするのですが、保護者によっては、それを、大切に受け止めてしまいます。

昨今、学校の先生の言うことはオブラートでくるまれ、ますます遠回しになっていますし。

また別の年の夏。
中3の受験生を担当することになりましたが、授業内容は学校の夏休みの宿題に限定、と教務からの指示がありました。
9月初めの夏休み課題テストの範囲なので、とにかく宿題を徹底的に教えてほしいというのです。
しかし、中3受験生ですから、夏休み課題テストよりももっと重要なテストが秋にいくつも控えています。
2学期の中間テストと期末テストで何とか得点アップできるよう、2学期の予習をすることも重要ですし、9月から本格的に始まる校外模試の対策として、より実践的な演習もしなければならない時期です。
学校の宿題だけの限られた勉強をしている場合ではありません。

これも、本人から話をきくと、三者面談での学校の担任の先生の言葉を誤解しているのではないか、と思われるふしがありました。
その子は、1学期の成績から考えれば、志望校が高すぎるのでした。
しかし、学校の担任の先生は、「そこは無理だから、諦めろ」とは言えなかったのだと思います。
1学期の内申で換算すると、5科の入試で平均90点以上取れれば合格するね、という言い方をしたようです。
内申の素点を1学期より10上げた場合は、入試で平均80点以上取ると合格するね、とも言ったそうです。
その子の学力では、入試当日で平均90点を取ることも、内申を10上げることも、正直言って現実的ではありませんでした。

担任の先生は、要するに、言外に「無理だ」と言ったのです。
データで、それを示した。
また聞きですが、私には、そう聞こえました。
けれど、本人と保護者は、そうは思わなかったのです。
「合格するには、どうしたらいいでしょう」と先生に尋ねたといいます。
担任の先生は、困ったと思います。
2学期は、学習内容も難しくなるから、定期テストで得点を上げるのは難しいですね。
そう答えたそうです。

これは、もう相当はっきりと無理だと言っている、と私には聞こえました。
ところが、それでも、本人と保護者の耳には届きませんでした。
「では、どうしたら、いいのでしょう?」
担任の先生は、本当に困ったと思います。
とりあえず、夏休みの宿題を頑張って、課題テストで良い点を取ることを目標としてみましょう。
そう言ったそうです。

それを受けての、個別指導塾通い。
内容は、学校の宿題限定。
とにかく、これだけを徹底的にやってほしい。

これも、教務に相談したのですが、解決はつきませんでした。
講師である私は、保護者と直接連絡を取ることはできません。
生徒本人は、その夏初めて会ったばかりで、私の言うことを理解してくれる様子はあまり感じられませんでした。
学校の宿題を見てほしいから個別指導を申し込んだのに、
「そんなのじゃ受験勉強にならないよ」
とゴリゴリ押してくる講師なんて、怖いですよね。
その講師の言うことに耳を傾けるよりも、
「講師を変えてください」
と言いたくなりますよね。
それが予想できたので、私も強い主張はできませんでした。
学校の夏休みの宿題は、一応、受験勉強らしい内容でしたから、全く無駄ということはなかったのですが、他の受験生は、学校の宿題だけでなく、2学期の予習も、入試問題の対策もやっていました。
秋には、さらに学力差が開く可能性のほうが高かったのです。

誰が悪いのか。
何が悪いのか。
今も後悔が残ります。

今は個人塾ですので、私の考えていることを直接保護者の方に伝えることができます。
夏期講習で、何をするべきか。
何をすれば、効果が上がるのか。
一人一人にその計画を練っています。





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    Posted by セギ at 14:36│Comments(0)講師日記
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