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2022年06月10日

古文の冒頭、言えるかな?

古文の冒頭、言えるかな?

さて、中間テストの結果もすべて出ました。
学年トップを維持する堅調の子、初めて80点台を取った子、テストを通して課題が明らかになった子と、さまざまなです。
そうした中で、ある学校の国語の問題に興味をひかれました。
有名な古典の冒頭を書く問題が出題されたのです。
例えば、「竹取物語」と指定されている欄に、「竹取物語」の冒頭を書くのです。

「・・・これをテストに出しますという予告はあったんですか」
「ないです」

うーん。
予告はあったのに、そのとき他のことを考えていて授業を聞いていなかったという可能性もゼロではないですが、予告なしに出題された可能性が高いです。
予告さえあれば、覚えたでしょうに。

この問題の正答率はどの程度だったのでしょう?
予告されなかった場合、何も見ないで古典の冒頭を書くことはできるものなのか?
それは、日本人としての教養なのかもしれませんが、ものごとを覚えて脳にとどめておくことは無駄と感じている子や、また、ものごとを記憶することがひどく苦手な子が多くなった昨今、この問題は厳しいなあと感じました。


私は、暗唱できるかな?
やってみることにします。
これを読んだ方も、興味があれば、ぜひやってみてください。
まず、何も見ないで書いた私の答を記し、その後、原文を調べて正答を書き写します。

出題は、
「竹取物語」「枕草子」「平家物語」「徒然草」「奥の細道」「方丈記」「源氏物語」です。
自分でもやってみたい方は、まずこの段階で、自分の答を紙に書いてから、以下の文を読んでください。


まずは、「竹取物語」。
私の答。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山に入りて竹を取り、よろづのことにつかひけり。名をばさぬきのみやつことなむいひける。

おお。
我ながら、そこそこ覚えている気がする。

正解は、
「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむ言ひける」

うーん。
ちょっと違いますね。
記憶の曖昧さに、我ながら驚きました。
これくらいは完璧にこなせると思っていたのに。


次は、「枕草子」。
枕草子の冒頭って、「春はあけぼの」のことかな?
では、それでいってみよー。

私の答。
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく。山際少しあかりて、紫立ちたる雲のたなびくさま、あやしうこそものぐるほしけれ。

正解は、
「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎは少し明りて、紫だちたる雲のほそくなたびきたる」

うわあ、後半が全然違う!
何だろう、私が最後に書いた「あやしうこそものぐるほしけれ」は?
何かと混線したか?


次は、「平家物語」。
私の答。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる者は久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひには滅びぬ。ひとへに風の前の塵に同じ。遠く異朝をとぶらへば・・・。

駄目だ、ここからは固有名詞の連打で、覚えていません・・・。

正解は、
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人もひさしからず。ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。遠く異朝をとぶらへば、秦の趙高、・・・」

うーん、やはりミスがありますね。


次は、「徒然草」。
私の答。
「つれづれなるままに日ぐらし、硯に向かひて、心に思ふことかきつくれば、あやしふこそものぐるおしけれ」
あ、これだ!「あやしふこそものぐるおしけれ」は、徒然草だ!

正解は、
「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」

おお・・・。
これはかなり違いました。
そうか。
心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書かないといけないのか。
ただ心に思うことを書くだけでは駄目なのですね。


次は「奥の細道」。
私の答。
「月日は百代の過客にして、ゆきかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて旅をする者は、日々旅にして旅をすみかとす。古人も多く旅に死せるあり」

正解は、
「月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり。船の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅をすみかとす。古人も多く旅に死せるあり」
うーん、また部分的に違いました。


次は、「方丈記」。
私の答。
「ゆく川の流れはたえずして、しかももとの水にあらず」

これしか思い出せません。
記憶量が少ない。

正解は、
「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし」

ああ、そうだ。
そう言われれば、そうでした。


次は、「源氏物語」。
私の答。
「いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなききわにはあらねど、すぐれてときめきたるありけり」

正解。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり」

ああ・・・・。
これも間違えた・・・。
そうでした。
源氏物語は、敬語がとにかく多用されているのでした。
源氏の君の母である桐壷の更衣は、元の身分はそんな高くなくても、しっかりと尊敬語をつけないといけなかったのです。
そりゃあそうだ。


ここまでやってみて、悲しくなってきました。
そこそこ正解できると思っていたのに、こんなに違うとは・・・。
何だか悔しくて、顔も見たことのない国語の先生に、
「じゃあさ、じゃあ、ベクトルの内積の公式、何も見ないで言えますか?」
などと、言いたくなってしまったり。
いやいや、それはあまりにも大人げない。

1つ言い訳をさせてもらうならば、覚え間違いは多いものの、歴史的仮名遣いのミスと文法ミスはなかったことに、少しだけ満足しています。
歴史的仮名遣い・文語文法・古文単語の知識。
それがあれば、初見の原文を読み通して意味を取ることはできます。


古文の冒頭の暗唱。
完璧に暗唱できたら、そのほうがいいのは勿論です。
でも、それがどの時期に書かれ、どういう内容で、どのように価値がある作品であるかを知っていることのほうが大切なのではないかという気もします。
そして、口語訳でもいいから本文をすべて読んでみることのほうが、冒頭だけ暗唱しているよりも意味のあることだと思うのです。
でも、冒頭を正確に暗唱できなかった私には、それを言う資格はないかなあ・・・。

同時に、数学の公式や英単語を覚えられない生徒たちに、
「覚えなさいっ。これは覚えなさいよっ」
とイライラしてはいけないなと思いました。
興味のないことに対しては、私自身もこんなに曖昧です。

たまにへこむのも、意味のあることですね。




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    Posted by セギ at 12:14│Comments(1)講師日記
    この記事へのコメント
    やっぱり難しいですね
    Posted by ちかぴー at 2023年06月02日 09:38
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      コメント(1)