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2022年04月18日

数学A「場合の数と確率」期待値。有利・不利の判断。

数学A「場合の数と確率」期待値。有利・不利の判断。

今年度から、数学Aで再び学ぶことになった「期待値」。
今回は、ゲームなどの有利・不利と期待値の問題です。

問題 Aのゲームは、5枚の100円硬貨を同時に投げて、表の出た硬貨をもらうことができる。
Bのゲームは、1つのサイコロを投げて、3以上の目が出るとその目の枚数だけ100円硬貨をもらうことができ、2以下の目が出るとその目の枚数だけの100円硬貨を支払わなければならない。
A、B、どちらのゲームに参加するほうが有利か。

ところで、数学から離れた生活実感としては、このゲームはAに参加したいという人が多いのではないかと思います。
Aのゲームは、参加しても、とりあえずマイナスはない。
Bのゲームは、下手をすると、200円払わされる。
こんなゲームには参加したくない。

こういうのは本人の性格に由来する判断でしょう。

だから、「最高賞金」にこだわる人もいると思います。

Aのゲームは、最高賞金は500円。
Bのゲームは、最高賞金は600円。
Bのゲームのほうが、夢がある。
当たれば大きい。

宝くじを購入する心理に近いですね。

外れる確率だけにこだわる人もいるかもしれません。
Aのゲームは、5枚とも裏が出て賞金0円になる確率は、(1/2)5=1/32
Bのゲームは、外れてお金を支払わされる確率は、2/6=1/3
はずれる確率が高いから、Bは嫌だ、Aにしよう。

それぞれ、感情的な根拠はあるのですが、では、数学的にはどうでしょうか。
どちらのゲームが、平均でいくらの賞金を期待できるのか?
まさに、期待値です。


Aは、まず、何枚表が出るかの確率を求めましょう。
表が1枚出る確率は?
1/5ですか?
違います。
そういう誤解をしないように、気をつけたいですね。

これは、反復試行の確率です。
1枚の硬貨を投げたときに、表が出る確率は1/2。
裏が出る確率も1/2。
ところで、5枚の硬貨を同時に投げることは、1枚の硬貨を連続して5回投げることと、数学的には同じです。
1回目が表で、残る4回が裏の確率は、1/2・(1/2)^4
しかし、求めたい確率は、この場合だけではありません。
その1回の表は、何回目に出てきてもいいわけです。
2回目に表が出て、他の4回は裏の確率は、1/2・(1/2)^4
これは、先ほどの場合とは重なりませんから、単純に確率を足していっていいことになります。
さらに他の場合も考えられますね。
3回目に表が出る場合、4回目に表が出る場合、5回目に表が出る場合。
結局、表が1回、裏が4回である場合の数は、「表」1個「裏」4個の並べ方と同じです。
すなわち、「同じものを含む順列」となりますから、表がどこで1回出るかの場合の数は、5C1となります。
5個のうちの1個を「表」のために選ぶという考え方です。
そうなると、5枚のうち1枚が表である確率は、
5C1(1/2)・(1/2)4

上の式の意味がわからない場合は「反復試行の確率」のページを見てください。

では、表が2枚出る確率は?
上と同様に、5回のうち何回目で表が出るか、その場合の数を考えます。
5個のうちから2個を選ぶ組み合わせと同じですから、5C2となります。
すなわち、5枚のうち2枚が表である確率は、
5C2(1/2)2・(1/2)3

このあたりで、規則性に気づくと思います。
5回のうち、表がk回出るとすると、その確率は、
5Ck(1/2)5
です。

では、仕組みがわかったので、もう一気に期待値を求める式を立てましょう。
100×5C1(1/2)5+200×5C2(1/2)5+300×5C3(1/2)5+400×5C4(1/2)5+500×5C5(1/2)5
計算しやすいように共通因数でくくりましょう。
=100・(1/2)5・(5C1+2・5C2+3・5C3+4・5C4+5・5C5)
=100・1/32・(5+2・10+3・10+4・5+5・1)
=100・1/32・(5+20+30+20+5)
=100・1/32・80
=250

Aの期待値は250円とわかりました。


では、Bの期待値は?
サイコロの目は、どの目の出る確率も1/6ですから、
-100×1/6+-200×1/6+300×1/6+400×1/6+500×1/6+600×1/6
=100・1/6(-1-2+3+4+5+6)
=100・1/6・15
=250

Bの期待値も250円とわかりました。

したがって、A・Bどちらのゲームに参加しても同じ。

が答となります。

期待値と実感とは随分異なるものだなあという感想もあるかもしれません。

それでは、そういう「期待値と実感は随分異なるものだなあ」という感覚は数学的には愚かなことで役に立たないことなのか?

そうとは限らないのかもしれません。
サイコロの目を1回投げたときに、6の目が出る確率は、常に1/6なのか?
6回投げれば、必ず1回は6の目が出るのか?
現実はそうとは限りません。
6回投げて6回とも6の目が出ることも、現実には有り得ます。
そうした現実を、私たちはどう見ていくべきなのか?
ここから、確率分布という考え方に進んでいくのが、旧課程の数Bでした。

新課程数Aでは、確率分布は学習しませんが、そこのところだけ独立させて、「仮説検定の考え方」というものを数Ⅰ「データの分析」の中で学びます。
高校1年生が新過程で学ぶ数学で、新たに追加された事項の2つ目が、この「仮説検定」です。
そのお話は、いずれ、また。




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    Posted by セギ at 12:35│Comments(0)算数・数学
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