たまりば

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2022年03月22日

英語の誤答のリアリティ。

英語の誤答のリアリティ。

春なので、インターネットのニュースサイトなどでも、教育関係の記事が掲載されていることが多くなってきました。
しかし、大手の民間教育機関が出している記事の中には、何かちょっと嘘くさいものもあります。
この記事を書いている人は、実際は子どもに授業をしている立場の人ではないのではないか?
そう感じるような、作りごとめいた印象があるのです。
例えば、先日見た、こんな記事。

「彼は、幸せに見える」を英訳すると、
He seems happily.
と誤答してしまう子が多い、というのです。
happy を「幸せな」、happily を「幸せに」と日本語訳で覚えている子は、「彼は幸せに見える」は、「幸せに」だから、happilyを使うのだと思ってしまうからだ。
という記事内容でした。

・・・そんなお行儀の良い誤答、私は見たことがないですけど・・・。

現実にそんな誤答をする子がいたとしたら、かなり特殊な例でしょう。

その記事の趣旨は、英単語を日本語訳で覚えるからそういうことになるので、形容詞、副詞、という単語の働きで覚えるべきなのだというものでした。
それには、大賛成です。
でも、それを伝える具体例としては、説得力がない。
英語が苦手な子は、普通、そんなミスはしないのです。

英語が苦手な子は、happy を「幸せな」、happily を「幸せに」と、正確に語尾まで覚えることはほぼありません。
happy は、「幸せ」と覚えます。
「幸せ」は名詞ですから happiness ですよ、なんて言っても、聞く耳を持ちません。
「幸せ」=happy と覚えるので、使える単語はそれしかないですから、逆に、「彼は幸せに見える」は、
He seems happy.
と正答します。
しかし、「彼は幸せそうに昼食を食べた」も、
He had lunch happy.
と誤答します。
英語が苦手な子は、happily という単語は、見れば意味はわかるかもしれませんが、自分では使えないことが多いのです。

単語を覚えるときは、その単語の品詞を理解しておかないと、正しい使い方ができない。
それは、本当にそうです。
しかし、日本語の語尾に意識が向いている子は、ある程度、品詞の知識のある子です。
happy を「幸せな」、happily を「幸せに」と覚える力のある子は、同時に、その語尾がつくのだから、happy は形容詞、happily は副詞と理解していることが多く、その目印として語尾を覚えます。
だから、その覚え方で、大丈夫ですよ。

真面目に努力をしている子に、
「そんなやり方は古い。そんなやり方はダメだ」
という情報を与えて、揺さぶりをかける。
そういうやり口があります。
動じないようにしましょう。


英語が苦手な生徒の誤答というのは、そんなふうにつじつまのあうものではありません。
もっと、こちらの意表をつくものであることが多いです。
例えば、何年か前の、高校生の定期テストでの、英訳問題。
「昨日起きた事故はひどかった」を英語に直せという問題に対する誤答。

It is suffered from accident yesterday.

・・・何だ、これ?

唐突に suffer from という熟語が使われているのは、これがそのときのテスト範囲の熟語だったからでした。
でも、正しい意味を覚えていないので、関係ない問題で使ってしまったようです。
suffer from を「ひどい」と覚えていたのかもしれません。

なぜ、そんな誤解をしたのか?
問いかけても、誤答に関しては沈黙し、その話が終わるのをひたすら待つのが、勉強が苦手な子がとりがちな行動です。
自分の間違いを直視できないのかもしれませんし、自分でも何でそうなったのかわからないのかもしれません。
だから、なぜそうした誤解が生じたかについて解決がなく、その後も、suffer from を「ひどい」と覚えたままになってしまいがちです。
間違えた際に、正しい知識に入れ替えるという作業が頭の中で行われず、「間違えた」という嫌な記憶を消去する力が働きます。
間違いの多い子ほど、自分がどの問題をどのように間違えたかを覚えていません。
だから、何度でも、同じ誤答を同じように繰り返します。
訂正しても、訂正しても、なかなか治りません。

なぜ、suffer from を「ひどい」と覚えてしまったのでしょう?
suffer from は、「~に苦しむ」「~をわずらう」という意味です。
その子のテスト範囲の熟語例文を見て、私は「ああ・・・」と声をあげました。

I suffer from hay fever.
私は花粉症です。

「私は花粉症」→「私は花粉症がひどい」→suffer from は「ひどい」、という連想が頭の中で行われたのでしょうか。
その語句が動詞なのか形容詞なのかには、全く興味がない。
英語が苦手な子は、品詞を無視する。
本当に、それはその通りなのです。
品詞を意識しなければ、その英単語を置く適切な位置がわからないのに。

学校の英語の先生は、こういう英作文の答案には、時制ミスや冠詞・前置詞の有無などについて、赤ペンで書きこんでくれるのが普通です。
過去の文なのに is を使っているとか、accident という可算名詞の単数形をむきだしで使っている件など、赤ペンで指摘されてもおかしくない。
しかし、この答案に関しては、もう何の書き込みもなく、ただバツがつけられていました。
学校の先生も、この答案に対しては「何だこれ?」以外の感想のもちようがなかったのか・・・。

なぜこの文を、It is から書き始めたのかも、よくわからない・・・。
現実の誤答は、このくらい型破りなものです。
「英語蛮族」と命名したいほどの破壊力です。
こういうのを見慣れているので、He seems happily. のような、律儀でお上品なミスに、私はリアリティを感じません。
たとえこんなミスをする子が現実にいたとしても、そんなのは一度の解説で治せますよ。

英語蛮族。
それでも、空欄にしなかったのは、前向きなのです。
英訳問題でも、テーマ英作文問題でも、一番困るのは、白紙の子です。
何か書いてきてねと言っても、毎回白紙。
正答を教わって赤ペンで書きこめば、勉強した気持ちになって、満足。
これでは、進歩しようがありません。

だから、どんなミスをしていても、何か書こうとしている限り、何とかなります。
諦めない限り、きっと何とかなります。
品詞を意識すること。
文法をしっかり学ぶこと。
それを言い続けて、少しずつ少しずつ改善を促した結果、その子は、英検2級に合格し、志望していた大学にも合格しました。
諦めない限り、何とかなるのです。

ちなみに、「昨日起きた事故はひどかった」の英訳の解答例は、

The accident which happened yesterday was terrible.

です。




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    Posted by セギ at 12:14│Comments(0)英語
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