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2021年05月11日

高校英語。話法。依頼の伝達。

高校英語。話法。依頼の伝達。

話法。
今回は、依頼の伝達です。
直接話法はこんな文です。

His secretary said to me, "Please call back."
彼の秘書は「電話をかけ直してください」と私に言った。

伝達内容に please がついているとき。
あるいは、

His secretary said to me, "Will you call back?"

のように、依頼の意味の助動詞 will を用いた疑問文になっているとき。

これを前回のように tell を使って、
His secretary told me to call back.
とすると、彼の秘書が私に命令した意味になってしまいます。
tell という動詞を使うから、命令の意味が強く出る。
これは、伝達動詞を変える必要があります。
彼の秘書は、私に命令したのではなく、頼んだのです。
使う動詞は、「頼む」という意味の ask または beg です。

His secretary asked me to call back.
彼の秘書は、私に電話をかけ直してくれるように頼んだ。

これも、中学で学習した英語ですね。

主語+tell+人+to 不定詞。
主語は、人に、~するように言う。

主語+ask+人+to 不定詞。
主語は、人に、~するよう頼む。

主語+want+人+to 不定詞。
主語は、人に、~してもらいたい。


上の不定詞を用いた3通りの文の中では、特に ask を用いた文の定着が悪いのです。
「『頼む』は、英語で何というの?」
と問いかけて、ask という返答が返ってくる子は、かなり英語力のある子です。
ask という動詞を知らないわけではない。
でも、それは、「質問する」という意味だけで記憶しているのです。
英単語の意味を1つしか覚えないのも、英語が苦手な子に多い傾向です。

よく言われることですが、英単語は、日本語との1対1対応ではなく、根幹のイメージで把握したほうが理解を深めることができます。
「尋ねる」も「頼む」も、相手に何かを求めている点では同じです。
問いかけに対する答を相手に求めているのが「尋ねる」。
何か動作をしてくれることを相手に求めているのなら「頼む」。
何か物ごとを相手に求めているのなら、ask for 「要求する」。
根本は同じです。

しかし、そういう「イメージ」の話を聞いても、ちっとも1つのイメージに統一されない、その感覚がよくわからない、という子がいるのも事実です。
感覚的なことは、他人に押し付けても、上手くいかないことがあります。
イメージの押し付けは、上手くハマれば儲けもの、です。
ask の意味の「尋ねる」と「頼む」を統一イメージで把握できるのならそれもよし。
ダメなら、2つの意味として覚えたらいいと思います。

英文の意味を何となく理解するだけなら、1つのぼんやりとしたイメージで単語の意味を把握しているだけでも、英文の意味はほぼ読み取れます。
しかし、日本語を英語にする場合は、「頼む」という日本語と ask が同時に頭に浮かぶようでなければ、英文を作ることができません。
ぼんやりとした語感を把握しているだけでは、自分で使うことはできないのです。
ネイティブではないので、ask という単語を ask のまま把握して使用するというのは、いつか到達したい高いレベルの理想です。
何百回と使って初めてそのような回路が脳内に生まれるものなので、日本に住む日本育ちの日本人は、「頼む」→ask という変換を瞬時に行うことで対応するほうが普通でしょう。

英作文の問題は、日本文が最初にあり、「次の日本語を英語に直しなさい」という形式のもの。
日本語ありき、なのです。
日本語を英語に直すのです。

ところが、その「日本語ありき」の英語学習ではダメなのでは、という風潮もあり、英作文問題もちょっと形式が変わってきています。
例えば、このような問題です。

問題 次の場合、あなたは英語でどのように言いますか。
(1) 図書館で何をしているのかを相手にたずねるとき。

これを、
When you ask
と書いて、その先、どうしたらいいのかわからず困っていた子がいました。

「・・・なぜ when で始めたの?」
「とき、と書いてあるから」
「・・・」

「とき」を見たら when だという判断をする子にとっては、この形式の英作文問題はハードルが高いのです。
「あなたは図書館で何をしているのですか」
という日本語を単純に英語に直すよりも、問題文を分析する能力が問われます。
そして、それは、「日本語ありき」の英語学習の回避というよりも、より日本語の読解力を問われるようになっただけのように思うのです。


こうしたことを回避するには、日本語によって説明された内容を英文にするのではなく、もっと大きなテーマを与えた課題英作文のほうが良い。
そのように考えてのことでしょう、入試は、今は、課題英作文が主流です。
テーマと、文の数あるいは単語数を指定されて、自分で英文を書きます。
こうなると、日本語力というよりも、論理的に文章を書いていく力そのものが問われるようになり、さらにハードルが上がります。

例えば、「弁当と給食と、あなたはどちらか良いと思うか」というテーマで3つの文を書きなさいという課題を生徒に解いてもらったときのこと。

I like boxed lunch better than school lunch.
This is because I can bring my favorite foods.

中学生でこれくらい書ければ、上出来です。
しかし、その子は、その2文で終わってしまい、3文目が書けずに困っていました。
都立型英作文で3文目が書けない子は多いです。

「うーん。あと1文。もう1つ理由を書くか、この理由1つで押すか。もう1つ何か理由はある?」
そう助言しましたが、その子は、首を横に振りました。
「うん。では、この理由に関しての具体例を書きましょう。好きな食べ物は何なの?それを具体的に書きましょう」

その子は、うなずき、時間をかけて書きあげた3文目は。

I like to eat boxed lunch under cherry trees.

・・・はい?

「私は、給食よりも、弁当が好きです。
好きな食べ物を持ってくることができるからです。
私は、桜の木の下で弁当を食べるのが好きです」

・・・え?

なぜ、桜の木の下で弁当を食べることに話が飛んだのだろう。
「好きな食べ物」の話だったのに、なぜ「どこで食べるか」に話が変わったのだろう。
そのほうが格好いいと思ったのでしょうか。
「ゆで玉子とハンバーグが好きです」と書くのは幼稚なので、「桜の木の下で食べる」のほうが、それより大人っぽいという判断だったのでしょうか。

いやいやいや。
それでは話が変わってしまうのです。
そこは、どんなに子どもっぽくても、「私はハンバーグが好きです」とか、「お弁当にハンバーグが入っていると、とてもうれしいです」と書くべきところなんです。
それが、論理的な構成です。

「桜の木の下で食べるのが好き」と変えると、弁当と給食とどちらか良いと思うかという話とは論点がズレるのです。
だって、給食を桜の木の下で食べることも可能じゃないですか。

給食だと持ち運びがしにくい?
・・・それならば、それは弁当のほうが良いと思う別の理由でしょう。
だとしたら、弁当のほうが好きな理由は、「持ち運びに便利だから」で、そこから「自分は桜の木の下で弁当を食べるのが好きだ」につなければよいのです。
それが、論理です。

英語を教えるのではなく、論理を教えなくてはならない。
それは、日本語でも論理的に物事を語れない子に、英語で論理的に物事を語れと要求することであり、ハードルの高さは棒高跳びレベルとなります。
論理よりも情緒や感覚を優先する子は多く、上の英作文の何がどう悪いのか、説明を聞いても理解できない、ということもあります。
何だか一見いい作文のような気がするのでしょう。
採点する先生が、スルッと読み流してくれたら、あるいは良い点が取れるかもしれません。
しかし、英語の先生の多くは、見逃してくれないでしょう。
3文目の違和感に採点の手が止まり、なぜこの3文目に違和感があるかを考えると思うのです。


と、なぜかどんどん話がズレていくので、今回はこの辺で。
このブログのほうが、むしろ論理的構成になっていないじゃないかという話ですね。

ともあれ、ask には「頼む」という意味がある。
このブログで、そのことだけでも覚えていただければ幸いです。




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    Posted by セギ at 14:24│Comments(2)英語
    この記事へのコメント
    > 「桜の木の下で食べるのが好き」と変えると、弁当と給食とどちらか良いと思うかという話とは論点がズレる

    これがわかるのはかなりレベルが高い学生ではないでしょうか?というより、日本人の平均レベルをかなり超えていると思います。このところの国会での首相答弁をみれば良くわかります。あれをおかしいと思わない国民が相当に多いわけですから。実際のところ、高校入試の採点でこの解答はかなり減点されるのでしょうか?

    > 日本語でも論理的に物事を語れない子に、英語で論理的に物事を語れと要求することであり、ハードルの高さは棒高跳びレベル

    正に大学教育の現場でこの問題が生じています。「英語で教える(語学以外の)専門科目を増やせ」という圧力があるのですが、それなりの上位校でも「理解できない内容を理解できない言語で教えろ」というのに等しい現実離れした要求です。どうやら文科省にそういった教育をすると届けて補助金をもらってしまった結果で、形式的に(書類上)そのような講義を行ったことにして、条件をクリアしたことになっているようです。
    Posted by saitou at 2021年05月12日 17:42
    コメントありがとうございます。
    3文目まで、あの通りに自力で書いてあれば、12点中で9点か10点は取れると思います。
    都立入試としては、そのくらい取れたら大丈夫ですが、高校生になってからも、そんな感覚で200語の英作文を書こうとすると、支離滅裂なものになるでしょう。
    早いうちに教えたいのですが、難しいです。
    Posted by セギセギ at 2021年05月12日 21:15
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