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2021年04月26日

高校数Ⅱ「図形と方程式」。軌跡と領域。領域に関する文章題。

高校数Ⅱ「図形と方程式」。軌跡と領域。領域に関する文章題。

問題 2種類の薬品P、Qがある。これら1gあたりのA成分の含有量、B成分の含有量、価格は下の通りである。今、A成分を10mg以上、B成分を15mg以上とる必要があるとき、その費用を最小にするためには、P、Qをそれぞれ何gずつとればよいか。

  A成分(mg)B成分(mg)価格(円)
P  2    1    5
Q  1    3    6


単元が示されずにこの問題を解く場合、これは方程式か不等式の問題だろうとおおよその把握ができれば、最初の一歩が踏めます。
高校生になっても、文章題を見た瞬間、気持ちが小学生に戻り、いきなり答を求めようとして、式をごちゃごちゃ立てたり、暗算したりしてしまう人がいます。
そうして、「自分は文章題が苦手」と嘆いています。

しかし、数学を学んでいる我々には、文字があります。
方程式・不等式という武器があります。
これは、決して手放してはいけない武器です。

今、求めようとしているもの何か?
P、Qをそれぞれ何gとるか、です。
では、それを文字にしましょう。

Pをxg、Qをygとるとする。(x≧0、y≧0)

この1行目を、とにかく書くことです。
それが、第一歩です。

これと似た形の文章題は、中2の連立方程式の頃から出題されているのですが、問題の意味を読み取れずに立式できない人もいます。
P、Q、A、Bといった要素が多すぎて把握できないようなのです。
把握できない最大の原因は、本人の「読み癖」にあります。
文章を、斜め読みしかできない人が一定数存在するのです。
何度読んでも拾い読み。
よく読みなさいと言われても、拾い読み。
1文字1文字精読するということができないようなのです。
「精読」とは何をどうすることなのかわからないほどに、その癖は脳の芯まで食い込んでいます。
目が滑り、途中を飛ばして読む読み方しかできないのです。
小学生の頃は、拾い読みでも何とかなりました。
そうして文章を精読する習慣がないまま、気がつくと、文章を正確に読むことができなくなっているようです。

あるいは、何行も書いてある文章を見ると、「ああ、嫌だ」と反射的に感じてしまう。
こんなのは全部読まないで、必要なところだけ拾い読みしたい、と思ってしまう。
だから、つい、斜め読みをするが、意味がよくわからない・・・。

この問題が特別難しいわけではありません。
本人が、文章を読むことができないだけなのです。
自分のそういう読み癖に気づいたら、音読してみてください。
音読のスピードで、心の中でつぶやいて読むのでも大丈夫です。
ペン先で、1文字1文字指していくのもいいでしょう。
拾い読みで読解できる内容ではないのに拾い読みして、簡単なことを難しくしているのは自分自身だと自覚すると、少しずつでも改善されます。

薬品はPとQの2種類があって、それぞれの薬品は、さまざまな成分が混ざっている混合物のようです。
他の不要な成分も含まれているけれど、薬として必要な、A成分とB成分が、それぞれ一定の割合で含まれています。
どの程度含まれているのか?
1gに、それぞれが何mg含まれているのかは、表にまとめられています。
ついでに、薬として重要な価格も表にまとめられています。
必要な成分を、できるだけ安い価格でとりたいですよね。

A成分を10mg以上とる必要がある。
薬品Pをxgとると、そこに含まれているA成分は、2x mg。
薬品Qをygとると、そこに含まれているA成分は、y mg。
合計で、A成分を(2x+y)mgとることができます。
10mg以上とる必要があるのだから、
2x+y≧10 ・・・①

B成分を15mg以上とる必要がある。
薬品Pをxgとると、そこに含まれているB成分は、x mg。
薬品Qをygとると、そこに含まれているB成分は、3y mg。
合計で、B成分をx+3y(mg)とることができます。
15mg以上とる必要があるのだから、
x+3y≧15 ・・・②

この①、②によって、領域が定まりました。
①より、y≧-2x+10
②より、y≧-1/3x+5
さらに、定義域のx≧0、y≧0もあわせると、考えられる領域は、上の図の領域Dとなります。
境界を含みます。

この領域のどこの点の座標のxとyの値でも、必要なA成分、B成分はとれます。
ここで、問題を見直します。
「その費用を最小にするためには」とあります。

では、費用に関する方程式を考えてみましょう。
薬品Pは、1g5円。
薬品Qは、1g6円。
それぞれ、xg、ygとった場合の費用は、
5x+6y(円)。
これの最小値を求めたらよいのです。

ここまで整理すると、これは、前回の問題が文章題になっているだけだったと気づきます。
5x+6y=k とおきましょう。
yについて整理すると、
6y=-5x+k
y=-5/6x+k/6

傾きが-5/6である平行な直線が無数にあるとイメージできます。
その中で、kが最小であるのは、y切片k/6が最小であるもの。
勿論、領域Dの範囲内で。
直線①、②の交点の座標(3 , 4)を通るとき、その直線の傾きは最小になることが図からわかります。
よって、求めるx、yは、x=3、y=4です。

答は、薬品P、3g。薬品Q、4g です。 


今後、まだまだ出題形式は変わっていくだろう共通テストの数学ですが、文章題が出題される可能性は高いです。
文章題に対して苦手意識のある人は、まず問題文を正確に読むという初心に返ってください。
あまりにも苦手過ぎるという人は、中学の数学問題集に戻って、文章題だけ拾って演習してみるのも良いと思います。
何を文字におくか、その初手すらわかっていなかったという場合もあるかと思います。
求めたいものを文字に置くのが基本です。

「そうではない場合もあった」という嫌な記憶にとらわれ過ぎないことです。
そうではなかった場合のことは、1つ1つ、なぜそうではなかったのか、今なら理解できると思うのです。

中学生の頃は、まだ頭の中が小学生だったため、方程式を立てなければならないのに、小学生の文章題の解き方に戻ってしまっていて、「答を求める式」と「関係を表す式」の間で混乱し、苦肉の策のような奇妙な式を立てがちだった人も多いと思います。
「問題文に書いてある通りの式を立てればいいのに、なぜ、こんなことをしているの?」
と、中学生の頃、先生や友達に言われた記憶がある人も、いると思います。
問題文に「多い」と書いてあるのに、わざわざ引き算の式を立ててしまう。
「和」と書いてあるのに、わざわざ差を求めてしまう。
それは、小学校の算数の式がそういうものだったからです。
それを引きずっていただけです。
高校生になれば、過去の自分がやっていた、そういうわずらわしい作業の無駄にそろそろ気づくと思います。
今、中学数学の簡単な文章題で、自分の式の立て方の癖に気づき、直しておくことは、意味のあることだと思います。






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    Posted by セギ at 11:21│Comments(0)算数・数学
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