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2021年04月12日

中高生の基礎英語 in English は味わい深いです。

中高生の基礎英語 in English は味わい深いです。

新年度が始まり、NHKラジオ講座も新学期となりました。
中学生向けとしては、「中学生の基礎英語1」「中学生の基礎英語2」は従来通りの構成の番組ですが、興味深いのは「中高生の基礎英語 in English」。

この番組、お勧めです。
対象は中3から高1。
学年相当の英語力のある子なら、テキスト無しで聴くことができる番組です。
学校が定期テストの範囲にこの番組を加える場合はテキストを購入したら良いですが、そうでないならば、テキストはむしろ邪魔かもしれません。
聴くことに集中するには、文字情報はないほうが良いのです。
テキストがあると、どうせそれを読めばいいと思うから、真剣に聴かない。
それでいて、テキストを真剣に読むわけでもない。
どっちつかずの無駄な15分を過ごしながら「ラジオ講座なんて意味がない」と思ってしまう・・・。
そうならないためには、テキスト無しでチャレンジしたほうがよいでしょう。
この番組、すべて英語で進行します。
日本語が途中で出てくることがないのです。
そうした番組の特性からも、聴くことに集中したほうがよいと感じます。

新学習指導要領に沿って、英語授業をすべて英語で行う試みが学校でも進行中です。
すべて英語で英語を教えると、どういうことになるのか?
その可能性と問題点のすべてが、この番組に詰まっていると感じます。

番組には、英語が堪能な日本人講師とネイティブ講師、そして日本人の生徒が出演しています。
生徒役は、2021年度・2022年度は、鈴木福くん。
適役でした。
英語が上手すぎるということがない。
年齢から考えて、下手過ぎるというわけでもない。
子役としてのキャリアは長いですから、自分の番になれば何かしゃべるという仕事は、しっかりこなせます。
でも、少し間違うのです。
それを講師たちが、褒めそやし、励ますのが、番組の骨子です。
"Very good." "Good job."と、"Almost correct." の連呼で番組が進行していきます。
なお、鈴木福くんは大学生になってしまい、2023年度は、中村陸くんが生徒役をやっています。
番組の性格は変わっていません。
2024年度は、数年前に『パプリカ』を歌っていた女の子が生徒役です。

番組は、1週間5回分が1単位となっています。
模範の会話文は同じまま、その内容に関して角度を変えた質問を講師が発し、生徒はそれに答えるという構成になっています。
会話中の重要文を生かした練習をしたり。
会話の内容について考えたり。
同じ内容を、視点を変えながら細かく把握し、それについての自分の考えも英語で述べる。
この反復学習は、効果的です。
これだけ繰り返せば、最初は聴きとれなかったことも聴きとれるようになっていきます。
それを実感することが可能というだけでも、学習効果絶大です。

しかし、課題もあります。
番組の課題というよりも、英語で英語を教えることの根本的課題です。
生徒が少しでもブロークンな英語で答えてしまうと、講師は、"Almost correct!" とは言いながら、必ず訂正します。
つまり、文法的な間違いを見逃すわけではないのです。
しかし、それは、生徒が、ある程度の文法は理解していることが前提となります。
訂正されても、何を訂正されているのか、なぜ訂正されるのかを理解できない子は、文法を理解できないまま、授業が進行していくのです。

英文に出てくる未習の単語の意味については、より平易な英語での言い換えがなされます。
しかし、文法解説は、基本なされません。
英文法を英語で解説するのはハードルが上がり過ぎるので、行うことができないのでしょう。
「英語ではまず主語を置き、次は動詞を置くのだ」
といったシンプルな事実すら、それを英語で説明されたら、理解できる子は限られます。
数えられる名詞は、単数ならば冠詞をつけ、複数ならば複数形にするのだといった説明を英語でなされて、理解できる子がどれほどいるか。
動詞と形容詞は働きが違うということは、英語で説明されて理解できるものなのか。
三人称単数現在の場合は動詞にsをつけるといったことは、中学生に理解できる平易な英語で解説可能なことなのか?
日本語で説明されても理解しない子もいる現状で。

英語の構造やルールが理解できず、日本語と同じ順番で英語を組み立ててしまう子は、その場では訂正された通りに言い直しても、なぜ自分の英語が間違いなのか理解できないままかもしれません。
これは、格差がまた開きそうです・・・。

英語は、英語で学ぶ時間も日本語で学ぶ時間も両方必要なのではないか?
英語のみで行われる英語の授業は、そのライブ感、高揚感だけをとっても、学習効果は高いです。
しかし、細かいところを丁寧に正確に教えることは不可能に近い。
1つの番組を聴くだけで、英語で英語を教えることの課題がわかってくる気がします。


では、ラジオ講座での文法学習は、どうしましょうか。
これは、「ラジオ英会話」がお勧めです。
平日の夜の9時半から、この2番組は連続して聴くことができます。
これも、中3から高1にお勧めの番組です。
英文法を柔らかくかみ砕いて解説しています。
講師の先生は、本人が独自に再構成した英語ルールであるかのように説明していますが、学校で学ぶ英文法とそんなに大きなズレはありません。
頭の良い子は、英文法をこのように柔らかく生き生きと理解しているものです。
普通に正しい英文法を、柔らかく説明する。
だから、学校の英語学習の邪魔になりません。

本文解説は最小限。
テキストのリピート練習など、従来通りの英語学習の時間はなく、英文を自分で作って言ってみる時間が多く取られています。
その日学習した内容に関連して、要求された英語をその場で発する練習です。
能動的に学習できます。

さて、ここまでは、標準的な英語力の中3・高1にお勧めの番組でした。
良い番組なのは認めるけれど、このレベルでは物足りない・・・。
そうした人には、「ニュースで学ぶ『現代英語』」がお勧めです。

これは英語ニュースを教材に、現代英語を学ぶ講座です。
この番組、月曜日・火曜日の「反訳トレーニング」が絶品なのです。
学んだ英文を使って、日本語訳から逆に英語を復元するのが反訳トレーニングです。

なお、番組では、口頭で言ってみる反訳トレーニングで終わっていますが、その後、自分で「書く」も加えることをお勧めします。
テキストはありませんが、NHKのサイトに英文も訳も乗っています。
その日本語訳を見て、英文を書いてみるのです。
ペーパーテスト対策として、これは外せないことです。
番組を聴く+反訳トレーニングで、合計40分から50分。

私は、昔、中1の「基礎英語」からそれをやっていました。
番組を聴いた後、日本語訳を見ながら、その英文が言えるように練習する。
その後、日本語訳を見ながら、その英文を書き、本文を見て自己採点。
ごく易しいものから少しずつレベルが上がったので、そんなに苦しくありませんでした。
英語の語順は、日本語とは根本的に違うこと。
動詞の時制や前置詞や冠詞に細心の注意を払わなければならないこと。
そうしたことをその練習で学び続けました。

しかし、途中からこれを始めると、最初はかなり苦痛を伴うかもしれません。
上手く覚えられない、苦しい、と諦めてしまうことも多いと思いますが、苦しいから効果があります。
筋トレと同じです。
楽な運動をいくらやっても、筋肉はつきません。

それと同時に、完璧を目指さないことも重要です。
日本語訳を見て英文を書いてみたけれど、間違いだらけで嫌になり、もうやめた、とならないことです。
最初は間違いだらけでも、続けていけば、間違いは減っていきます。
完璧じゃないと嫌だからと自分へのテストや力試しをしないでいると、学校のテストや模試や入試で嫌な目にあうのです。
そのほうが本当に嫌です。

しかし、お経を唱えるように意味もわからず丸暗記するような暗唱では、効果は半減します。
うちの塾生にもいました。
例えば、「今、何時ですか?」という英語は、おそらく小学生の頃に丸暗記したのでしょう、
What time is it now?
と、すらすら口をついて出てきました。
しかし、「ロンドンではそのとき何時だったのですか?」という英文を作ることができませんでした。
「何時ですか?は、どういうんだっけ?」
と問いかけても、出てきません。
「What time でしょう?」
と言うと、
「あ。What time is it now?」
と答えます。
「うん。でも、is it now ではないよね?これは過去の話だね?」
と問いかけると、また無言・・・。
「is を過去形にしましょう。is の過去形は?」
「・・・did?」
「・・・」
お経のように丸暗記した英文が頭の中にあるだけで、英文法を理解していないので、応用が利きませんでした。

英文を暗唱する場合は、文法や、英語特有の語順や時制、前置詞や冠詞に注意を払いながらしっかり暗唱し、その後、日本語から英文を復元する学習が効果的です。
そういう頭の働かせ方をして英文を見るのだ、という姿勢もあわせて学ぶ反訳トレーニングをしてください。


さらに、もう1つ良いのが、「ラジオビジネス英語」。
内容は、本当にビジネス英語です。
日本人が海外のビジネスで活躍する話です。
高校生には違和感があるかもしれませんが、高校生のうちに英検準1級を取っておきたいのなら、特にリスニングは、オフィスでの英語にも慣れておいたほうがいいでしょう。

また、この番組は、金曜日のゲストへのインタビューが秀逸です。
教科書の範読のような、プロの話し手のクリアな英語は聴きとれるのだが、生の英語が聴きとれない・・・。
志望校の入試はリスニングの配点が高く、しかも、インタビューや大学の講義などの生の英語が問題に使われる。
その対策ができない。
英語で映画やドラマを見ようとしてみるのだが、全く聴きとれなくて、効果を感じない。
そういう人にお勧めです。
癖の強い話者の生の英語を聴くことができます。
番組内で同じインタビューが2回繰り返されますので、初めはただ聴くだけ、次はテキストを見て聴くといった形で活用できます。

杉田敏先生の「実践ビジネス英語」が終わってしまったのは残念です。
ビジネス英語と言いながら、ビジネスの話は少なく、その時代ごとの社会問題について、しっかりした英文を学ぶことができました。
大学入試の英文が小説・随筆から現代の評論に大きく舵を切った頃、さらに、英検や大学入試でも200語程度の英作文が出題されるようになった頃に、私もどれだけ助けられたか。

とはいえ、「杉田敏の現代ビジネス英語」という季刊テキストが発売されています。
音声はテキストを購入すれば無料ダウンロードできます。
3か月に1度の刊行で、1冊で4つのビニェット。
放送があった頃は月に2つのビニェットだったので、少し減りましたが、あるだけでもありがたい。
英検や入試対策で、まとまった英文を書く必要
があるが、英語で書く以前に、自分の考えというものがない、何を書いていいかわからないという人は、この本文を真似るだけで内容のある英文を書くことができるようになります。




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