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2021年03月15日

高校数Ⅱ「図形と方程式」。軌跡と領域。反転。

高校数Ⅱ「図形と方程式」。軌跡と領域。反転。

軌跡と領域、今回はこんな問題です。

問題 座標平面上に原点Oと異なる点Pがある。直線OP上に点Qがあり、QはOに関してPと同じ側にあり、OP・OQ=4である。点Pが直線x=1上を動くとき、点Qの軌跡を求めよ。


さて、どう解きましょう?
まずは、鉄則。
求める点Qの座標を(x , y)とおく。
そして、もう1つの動点Pの座標は、(a , b)とおく。
これで、最初の一歩は踏めました。

最終的にx と y の関係を表す式を求めます。
そこに至るまで、いくつか他の文字を使っても大丈夫です。
最終的に他の文字は消せればよいのです。

意外にここが弱点になってしまう人がいます。
他の文字を使うことができないのです。
P(a , b) を定義できない。
今回は、さらに別の文字も使用しなければなりません。
しかし、その勇気が持てないのです。
そんなことをしていいの?と思ってしまうようです。

何をしてよくて、何をしたらダメなのか、わからない。

自分の中に基準がないので、問題文に書いていない文字を使うことに勇気が必要となります。
これは逆説的ですが、中学時代に方程式の文章題を解くときに、何も定義せずにいきなり x を使っていた人と重なる部分があります。
方程式のときは、何も定義せずに、いきなり文字を使う。
その一方、このような応用問題になると、文字を自分で勝手に使っていいのかどうか、判断がつかない。
それは、同じことの表と裏であるような気がします。

その文字が何を表すものなのかをしっかり定義すれば、文字はいくらでも使っていいのです。
ただし、最終解答には、自分が勝手に定義した文字は残さない。
ルールは、それだけです。

点Q(x , y)、点P(a , b)で、点Oは原点です。
ここで、点O、P、Qは、一直線上にあります。
さらに、点Qは、Oに関して点Pと同じ側にあります。
よって、
a=tx、b=ty と表すことができます。(tは正の実数)

このことが理解できないと、先に進めません。
そして、数学が苦手な人は、このことがすんなり理解できない場合が多いです。

これは、中3の数学です。
単元は「相似」。

実際に、座標平面上に、O、P、Qを描いて考えてみてください。
位置関係は、O、P、Qの順のときもあれば、O、Q、Pの順のときもあります。
自分としてわかりやすいほうでいったん描いて大丈夫です。
これらは、一直線上の3点です。
そして、PとQから、x軸に垂線を下ろしてください。
垂線の脚をそれぞれ、P'、Q'としましょう。
直角三角形OPP'と、OQQ'は、相似であることがわかると思います。
よって、
OP:OQ=OP':OQ'
となります。
今、OPの長さを、OQのt倍としましょう。
そのとき、OP'の長さも、OQ'の長さのt倍となります。
x座標でその関係を表すならば、a=txです。

同様に、PとQから、y軸上に垂線を下ろしても、同じことが言えます。
よって、b=tyです。


上のように、座標平面上の線分の比を、x座標、y座標それぞれの比で把握することが可能です。
根本の考え方は、中三で学習した、相似な三角形、あるいは、平行線と線分の比です。
しかし、その解説で理解してくれれば、優秀なほうです。
中3の学習内容に戻って解説して、それでも、理解できない場合もあります。
平行線と線分の比や相似というものについて、何か根本的な違和感、全く理解できないという感覚が根底にあるようです。

中3の数学が理解できているというのは、そこまでの数学的な土台があるということです。
理解できないまま、高校入試を乗り切った。
あるいは、中高一貫校なので、そもそも理解できないまま通り過ぎてきた。
そうした課題、数学的な脆弱さが、すべて、数Ⅱや数Bで噴出してきます。
高校2年になって、急に数学がわからなくなるわけではありません。
中3の数学も、本当はわかっていなかった。
さらにそれ以前、場合によっては、小学校の算数がよくわかっていなかった場合もあります。
どこまでも、さかのぼって学習し直す必要があります。
小学校から高校まで、算数・数学の全カリキュラムを把握している講師による個別指導が効果的なのは、こういうところです。

ともあれ、
a=tx、b=ty。
ここで、点Pは、原点とは異なるので、tは0ではありません。
xもyも、0ではありません。
これは、あとで、定義域の確認で重要です。

細かいことですが、
a=tx、b=ty はよくわからないが、
x=ta、y=tb ならわかる、という人もいます。
気持ちはわかりますが、これは、定義次第でどちらでも成立します。
ただ、x=ta、y=tb とすると、この後の計算が分数になってしまいます。
tは、別に整数とは限りません。
1より小さい分数でもよいので、
a=tx、b=ty
をお勧めします。
a、bをこの先消去するつもりでいるので、代入しやすい形であるほうが有利です。

さて、あとは、文字を使ったどんな式を立てることができるでしょうか。

問題より、OP・OQ=4。
これを使いましょう。
OP=√(x2+y2)
OQ=√(a2+b2)
ここに、a=tx、b=tyを代入すると、
OQ=√(tx)2+(ty)2
よって、
OP・OQ=√(x2+y2)・√(tx)2+(ty)2=4
t>0だから、
t(x2+y2)=4
よって、t=4/(x2+y2)

これを、a=tx に代入すると、
a=4/(x2+y2)・x=4x/(x2+y2)

ここで、点Pは、直線x=1上を動くから、a=1。
よって、
4x/(x2+y2)=1
これを計算して、
4x=x2+y2
x2+y2-4x=0
整理すると、
(x-2)2+y2=4

したがって、求める軌跡は、
中心(2 , 0)、半径2の円。ただし、原点は除く。

となります。


さて、問題はこれで正解ですが、これが一体どういうことかというと?

定点Oがある。
Oと異なる点Pをとり、半直線OP上に、点P'を、OP・OP'=r2によって定める。
このとき、点Pに点P'を対応させることを、反転といい、点Oを反転の中心という。
また、点Pが図形F上にあるとき、点P'が描く図形F'を、Fの反形という。
このとき、定点Oを通らない直線の反形は、Oを通る半径 r の円となる。

今回の直線はx=1でした。
定点Oは通りません。
その直線上のすべての点を、OP・OP'=4となるように写していくと、その点の集合の描く図形は、点Oを通る半径2の円になる。

反転は、他にもあります。
逆に、定点Oを通る円の反形は、Oを通らない直線になるのです。

OP・OP'=r2 という操作を通すと、直線は円に形を変え、円は直線に形を変える。
そのように照射される。
興味深いです。

なお、点Oを通らない円の反形は、点Oを通らない円となります。




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