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2021年02月02日

高校数Ⅱ「図形と方程式」。軌跡と方程式。距離の比が一定な点の軌跡。

高校数Ⅱ「図形と方程式」。軌跡と方程式。距離の比が一定な点の軌跡。

今回から、数Ⅱ「図形と方程式」は第2章、軌跡と領域に進みます。
まず、軌跡とは何か?
「与えられた条件を満たす点が動いてできる図形を、その条件を満たす点の軌跡という」

この定義がすんなり理解できる人も多いのですが、何を言っているのか全くわからない・・・という人もいます。

え?点が動くってどういうこと?

言い方を少し変えると、与えられた条件を満たす点は、1点に定まるとは限らない、ということです。
与えられた条件を満たす点は、いくつもあるかもしれません。
1つ1つの点が集まって集まって、直線になったり曲線になったりすることも多いでしょう。
そうした点の集合。
そうした点が集合して、直線や曲線となって見えているもの。
それが、点の軌跡です。

しかし、中1の頃から繰り返し繰り返し、点の集合は直線になったり曲線になったりするのだと解説しても、なかなか理解できない人も多いです。

それは、動画で伝えると、ピンとくるのかもしれません。
粗い点がポツンポツンと並んでいるのが、だんだん密な点の集合になり、やがて直線や曲線になっていく様子は動画なら伝えやすいかと思うのです。
しかし、その程度のことなら、わざわざ他人の作った動画を見なくても、自分の頭の中でイメージすることができると思います。
簡単なイメージです。
まず、そのイメージを頭に思い描くことが軌跡の学習の第一歩です。


点が集まって、直線や曲線になる。
そうしたイメージを持てるかどうかは、中1の作図の学習でも大きなカギとなります。

例えば、こんな問題。
何でもない鋭角三角形ABCが描いてあると思ってください。

問題 △ABCで、頂点Aと頂点Bから等しい距離にあり、さらに、辺ACと辺BCからも等しい距離にある点Pを作図により求めなさい。

点Aと点Bから等しい距離にあるのだから、その条件を満たす点の集合は、線分ABの垂直二等分線。
辺ACと辺BCから等しい距離にあるのだから、その条件を満たす点の集合は、∠Cの二等分線。
だから、その2直線の交点が点Pです。
あとは、作図の基本の通りに、線分ABの垂直二等分線と∠Cの二等分線を描いて、点Pを記すだけ。
とても簡単。

そう思うのですが、これが解けない中1は案外多いです。
基本の作図はできるのです。
線分ABが与えられていて、垂直二等分線を引きなさい、と言われたら引けます。
△ABCが与えられていて、∠Cの二等分線を引きなさい、と言われたら引けます。

しかし、応用が利きません。

点Aと点Bから等しい距離にある点の集合が、線分ABの垂直二等分線であることが、イメージできない。
辺ACと辺BCから等しい距離にある点の集合が、∠Cの二等分線であることが、イメージできない。

ホワイトボードに点を沢山描いて、それがやがて線になっていく様子を示しながら解説する度に、ああそうか、わかったという顔をするのに、類題はまた解けない・・・。

「来週、学校で作図の小テストがある」
というので、もう仕方なく、
「2点から等しい」と言われたら、垂直二等分線。
「2辺から等しい」と言われたら、角の二等分線。
とにかく、それを暗記しなさーい。
覚えなさーい。
今回の小テストは、それで乗り切りなさーい。
私がそう言うと、むしろ嬉しそうにいそいそとそれをノートに取ったりします。

・・・いや、そんなことでは、数学は得意にならない・・・。

しかし、いつまでもそうなのかというと、そんなこともないのです。
学校で作図を学習するのは、中1で学習する一度きりです。
中2になると、作図を学習したこと自体忘れてしまったりします。
ところが、中3になって受験勉強を始めると、都立高校の入試問題には作図問題が必ず1問ある、という現実に直面します。
上の問題と同じ程度、あるいはそれ以上の応用的な作図が出題されます。
配点は6点。
他の問題よりも高いです。

その事実を知ると、作図ができるようになる子は多いのです。
入試問題の後半のほうの、平面図形や空間図形は、問1を解くだけで精一杯。
式による証明も、頑張ってはみるが、難しい。
関数も、応用問題は解けない。
そういう現実が見えてきます。
では、どこで得点するのか?
作図くらいはできないと、高校に入れない。
それを悟ると、作図ができるようになっていくようです。

本気になれば脳は動き出し、イメージできるようになります。
がんばりましょう。


さて、高校数Ⅱ。
軌跡とは何かが理解できたところで、実際の問題を見てみましょう。


問題 2点A(-1,-1)、B(5,2)からの距離が等しい点Pの軌跡を求めよ。

2点からの距離が等しい・・・。
点Pは、線分ABの垂直二等分線上のどの点でもいいですね。
線分ABの垂直二等分線上を動くことが可能なのです。
その直線の式を求めることを、「点Pの軌跡を求める」といいます。
点Pの座標を (x , y) とおいて、その x と y との関係を表す式を求めればよいのです。

2点からの距離が等しいのですから、AP=BPです。
2点間の距離の公式にあてはめると、
AP=√(x+1)2+(y+1)2
BP=√(x-5)2+(y-2)2
よって、
√(x+1)2+(y+1)2=√(x-5)2+(y-2)2
両辺を2乗して、
(x+1)2+(y+1)2=(x-5)2+(y-2)2
展開して整理すると、
x2+2x+1+y2+2y+1=x2-10x+25+y2-4y+4
12x+6y-2=0
6x+3y-1=0

よって、点Pの軌跡は、直線 6x+3y-1=0


問題 2点A(-4,0)、B(2,0)からの距離の比が2:1である点の軌跡を求めよ。

2点からの距離が等しい、すなわち距離の比が1:1のときは、上の問題のように直線でした。
距離の比が、2:1のときは、どうなるのでしょう?

考え方は同じです。
問題文に点Pという記述がなくても、自分で点Pを定義すればよいのです。
条件を満たす点をP(x , y) とすると、
AP:BP=2:1
よって、AP=2BP
すなわち、AP2=4BP2
2点間の距離の公式を用いて、
(x+4)2+y2=4{(x-2)2+y2}
展開して整理すると、
x2+8x+16+y2=4(x2-4x+4)+4y2
x2+8x+16+y2=4x2-16x+16+4y2
-3x2+24x-3y2=0
x2-8x+y2=0
見たところ円のようなので、整理しましょう。
(x-4)2+y2=16
よって、
求める軌跡は、中心が(4,0)、半径が4の円。


一般に、2定点A、Bからの距離の比がm:n(m>0,n>0,m‡n)である点の軌跡は、線分ABをm:nに内分する点と外分する点を直径の両端とする円となります。
これをアポロニウスの円と呼びます。
自分では上手くイメージできない場合も、計算の結果からそうなることが理解できます。




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    Posted by セギ at 12:28│Comments(2)算数・数学
    この記事へのコメント
    > 「与えられた条件を満たす点が動いてできる図形を、その条件を満たす点の軌跡という」

    記事の主張とはすこしずれてしまいますが、実際のところ点は動いているのでしょうか?「軌跡」という言葉には確かに点が動いた跡というニュアンスがありますが、本来の定義は「与えられた条件を満たす点全体の集合(曲線)」であり、動く要素は存在しません。曲線のパラメータをtと書くのでそれが如何にも時間変数に見えて、「動いている」イメージになるのですが、パラメータの文字はなんでも良いわけです。
    私自身も特に深く考えずに「点が動く」と表現してしまいますが、ここで混乱する学生が多いのなら考え直す必要があるかもしれません。
    Posted by saitou at 2021年02月04日 19:49
    コメントありがとうございます。
    私も、「点が動く」よりも「点の集合」という把握のほうがわかりやすいように思います。
    Posted by セギセギ at 2021年02月04日 23:27
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      コメント(2)