たまりば

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2020年05月31日

中1「正負の数」。加減と数直線。

中1「正負の数」。加減と数直線。

中1「正負の数」は、数学の学習の中で、もっとも簡単なようでいて、教えるのは最も難しいものの1つです。
基本の基本になるほど、それを「わからない」という子に説明するのは困難を極めます。
一応わかったのだろうと安心するのは禁物です。
「正負の数」の単元の終わりに復習すると、
(+1)+(+3)=-2
といった答案を目にし、愕然とすることがあります。

何で?
それは、小学校1年生で学習した、1+3ですよ?
答は4に決まっていますよ。
なぜ、中学に入ったら-2になると思うの?
なるわけないでしょう?

といった「常識の押し付け」は、しかし、教える者と教わる者、両者にとって不幸です。

それは、「正負の数」の体系が、その子の中に形成されていないということなのです。
数学の学習が、やり方の丸暗記に終始しているのです。
そして、やり方をちょっと間違ったために、そんな答になるのです。

・・・やばい、この子は全然わかっていない。
根本的には何も理解していない。
これは、最初からやり直しだ。

教える者がそう判断しても、しかし、幾度やり直したところで同じ結果になるのかもしれません。
「そんな答になるわけないでしょう!」
と、大人が驚くのを見る度、子どもは委縮し、理解できていないことを隠そう、わかっているふりをしよう、とさらに必死にやり方だけ暗記し、表面上は正しい操作ができるようになるだけということも多いからです。


学校や塾の教え方が悪いんじゃないのか?

ある意味、そうなのかもしれません。
しかし、弁解するなら、そうとばかりも言えない面もあるのです。
やり方だけを説明しているわけではないからです。
意味を丁寧に説明しても、その部分は聞き流し、やり方だけ暗記してしまう子が多いのです。

順を追って説明しましょう。

「正負の数」は、まず、正負の数の意味から学習が始まります。
正の数と負の数が存在することは、大半の子が理解できます。
寒暖計の目盛りの-10℃など、負の数の存在は、幼い頃から目にしていますから。
そういうものが存在することは知っているのです。

しかし、次の段階で早くもつまずく子が現れます。
あることがらを、正負の数を用いて言い表す問題です。

問題 次のことがらを正の数を用いて表せ。
(1)-20㎏の増量
(2)-30万円の収入
(3)-1万人の減少
(4)-4分の遅れ

正解は、
(1)+20㎏の減量
(2)+30万円の支出
(3)+1万人の増加
(4)+4分の進み

言葉遊びのようですが、後に正負の数の減法を理解するための全てがここに詰まっています。
この言い換えが理解できないと、正負の数の減法の符号の操作は、理解できないのです。
しかし、この問題の意味どころか、その重要性すら理解できずに通りすぎていく子は多いです。

そうした子の誤答の例としては、
(1)+20
(2)+30
(3)+1万
(4)+4
と、符号を+に変えただけで、単位もついていなければその後に続く言葉も書いていない場合が、まず多いのです。
問題の意味を全く理解していません。

「いや。その後に続く言葉も含めて、このことがら全体を正の数で言い表すんですよ」
と説明しても、書き直したものは以下のような誤答という子が多いです。
(1)+20㎏の増量
(2)+30万円の収入
(3)+1万人の減少
(4)+4分の遅れ
後ろにつく言葉を言い換えていないのです。

「-20㎏の増量と、+20㎏の増量は、意味が反対だと思わない?それじゃ、同じことを言い表したことにならないよね?」
「え?同じことを表すの?」
「・・・そうですよ」

何だと思っていたの?

やり方しか暗記しない子の多くは、また、問題文をほぼ読まないという、もう1つの習慣を持っていることに思い至り、絶望の度合いを深めたりもするのですが、それを補助するのが私の役目です。
中学入学は良い機会。
悪い学習の癖を改め、やり方の暗記ではない学習、問題文を正確に読んで理解して解く学習習慣を身につけましょう。
そう思って補助します。

ところが、ここでまた「やり方だけ暗記する」という悪い習慣を発動する子が多いのです。
-20㎏の増量は、+20㎏の減量と言い換えればいいらしい。
ははあ、数字の符号を反対にして、言葉を反対にすればいいだけか。
そのように「やり方」を把握し、それでさっさと処理する子が現れます。
そのようにして正解は出せるのですが、意味はわかっていません。
こんなことを、なぜ学習したのか?
なぜこんな問題が出題されるのか?
それは、全く理解していません。

意味を理解すると、これは面白いのです。
-20㎏の増量は、20㎏の減量。
確かにそうだなあ。
じゃあ、体重が1㎏増えたときは、「-1㎏減りました」って言えばいいんだ。
1万円赤字のときは、「-1万円の黒字です」って言うんだ。
面白い。
ひねくれた言い方で、面白い。
そうした言い換えを面白く感じ、頭に沁みていくなら、それが頭の中の数理の体系に静かに組み込まれていくのです。


さて、とりあえず、このことは置いておいて。
「正負の数の加法」すなわち、たし算の学習に進みましょう。

正負の数のたし算の考え方の基本は、数直線上の移動です。
正の数は、原点よりも右に移動した点。
負の数は、原点よりも左に移動した点。

(1) (+3)+(+5)
これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、さらに右へ5移動することを意味します。
右へ3移動し、さらに5移動。
だから、答は、+8。

(2) (+3)+(-5)
これは、数直線上の原点から、まず右へ3移動した+3の位置から、左に5移動することを意味します。
右に3移動した後、左に5移動。
結局、原点から左に2だけ移動したことになります。
だから、答は、-2。

(3) (-3)+(+5)
これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、右に5移動することを意味します。
左に3移動した後、右に5。
だから、答は、+2。

(4) (-3)+(-5)
これは、数直線上の原点から、まず左に3移動した-3の位置から、さらに左に5移動することを意味します。
左に3移動後、さらに左に5。
だから、答えは、-8。


これを理解できない子は、ほとんどいません。
教科書や問題集に書かれた数直線上にペン先を立てて、一所懸命右へ左へと移動させて、答を導いていきます。

そして、これが加法の本質であり、私は今もそれを頭の中でやっています。
頭の中の数直線で数を移動させています。
いちいち数直線を描いたり、数直線の目盛りを数えたりはしないだけで、頭の中に数直線のイメージは常にあります。
やり方だけ暗記する子は、おそらく、頭の中に数直線のイメージがないのだと思うのです。

なぜ、頭の中に数直線のイメージがないのか?
次の学習段階で、この計算方法のルールをまとめてしまうことも一因かと思います。
(+3)+(+5)=+8
(+3)+(-5)=-2
(-3)+(+5)=+2
(-3)+(-5)=-8

これからわかるルールは?
同符号のたし算の答は、その符号で、絶対値の和。
異符号のたし算の答は、絶対値の大きいほうの符号で、絶対値の差。

このルールの整理は、頭の中の数直線上の移動を円滑にするための補助に過ぎないのですが、これが学習のメインになってしまう子が大半です。
このルールを丸暗記し、そのルール通りの操作で以後は計算します。
そのため、
(+3)+(+5)=-2
といった、ありえないミスをする子が出てきます。
ルールを丸暗記して操作しているだけで実感はないので、そんな答の異常性には気づかないのです。
やり方だけ暗記している子にとっては、正の数どうしのたし算すら、実感を伴うものではありません。


さて、次に正負の数の減法に入ります。
(1) (+3)-(+5)
さきほど出てきた「言葉遊び」がここで生きてきます。
「+5をひく」ことは、「-5をたす」ことと同じです。
よって、
(+3)-(+5)
=(+3)+(-5)
=-2

(2) (-3)-(-5)
「-5をひく」ことは、「+5をたす」ことと同じです。
よって、
(-3)-(-5)
=(-3)+(+5)
=+2

正負の数の減法は、すべて加法に置きかえて計算できます。
この世にひき算は存在しない。
全て、たし算なのだ。
そのように意識を切り替えるのです。

理解していれば、何も問題はないのです。
しかし、丸暗記で済ませている子にとっては、そろそろ重荷が増してきています。
上のような符号の操作も、丸暗記で済ますしかないのです。
-+は、+-に書き換える。
--は、++に書き換える。
というように。

だから、ミスが絶えません。
(+3)-(+5)
=(+3)-(-5)
=(+3)+(+5)
=+8
という謎の二度手間の誤答をこれまで幾度も見てきました。
(-3)-(-5)
=(-3)+(-5)
=-8
というミスも極めて多いです。
全て丸暗記による操作ミスです。
意味がわかっていたら、こんな誤答はしないのです。


練習を重ねて、丸暗記で操作できるようになっても、「正負の数」の学習は、さらにここから難度を上げていきます。
( )を外す操作がここに加わるのです。
+3は3のことなので、いちいち+は書かない。
-は省略できないので、-を書く。
+(-3)などは、-3 と表記する。
このようなルールで( )を外すようになると、それまで必死に丸暗記したことがまた崩れ始め、混乱を起こす子は多いです。

(+3)-(+5)
=3-5
=-2
これで正しいのですが、

(+3)-(+5)
=3+5
=8
と誤答する子に、「なぜ?」と問いかけても、意味を考えて解いていませんから、理由はないのです。
操作をちょっと間違えただけなのです。

慣れてしまえば、( )なんかないほうが見やすくて楽だ。
しかし、それはこの計算に習熟している大人の感覚。
中学1年生にとって、このあたりの計算は、全力の800m走並みの負荷がかかる難度であり、「たかが正負の数」ではないのです。


練習を重ねて、どうにか加減だけはできるようになっても、次は乗除の計算です。
符号のルールをまた丸暗記しなければなりません。
さらに加減乗除混合の四則計算に入ります。
もう、符号はぐちゃぐちゃです。


数学は、丸暗記で済ますには限界があります。
意味を理解しなければ、先はありません。
「正負の数」という単元で、何よりも学んでほしいのは、このことです。
意味を理解して学んでください。
頭の中に常に数直線をイメージし、実感で計算してください。





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