たまりば

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2020年01月27日

絵に描いたような失敗。

絵に描いたような失敗。

授業中に小学生の宿題を見ていたときのことです。
その子は、長期の休み中の講習に参加しませんでした。
随分長い間授業をしないことになりますから、学力が下がるのは想定していました。
その分、沢山の宿題を出したとしても、休み明けの授業でその大量の宿題の答えあわせをするのは難しいのです。
ほとんどが正解であるならば、20ページくらいの宿題を出すことも可能ですが、半分は誤答であるなら、その宿題の答えあわせと解き直しをするのに、3~4回の授業が必要になります。
休み中の宿題の解き直しをしている間に、学校の授業はひと月も先に進んでしまいます。

それでも、特に計算力が心配な子でもありましたので、分数の加減乗除の問題がぎっしり詰まっている計算プリントを休み前に2ページ渡しました。

休み明け、その子は、その宿題の半分を解いてきませんでした。
言い訳は、
「昨日、頭が痛かったから」

・・・はあ?(''Д'')
休みはたっぷりありましたよね?
何で、長い休み中の宿題を、塾の前日に解くの?
塾の前日、たまたま頭が痛かったから、宿題はできなかった。
そういう言い訳が通用すると、何で思っているの?

しかし、そんなことも想定内のことでした。
勉強が苦手な子が長い休みの間に塾に来ないということは、そういうことです。
うちは、大手の塾のような積極的な電話勧誘や、休み前に個別面談の時間を作って講習参加への営業を行う、ということはありませんので、休み中の講習に参加しようとしない子は、そのままになってしまいます。
ただ、休み中に全く講習に参加しない例は珍しく、最低でも週1回の通塾ペースは保ってくださる方がほとんどですが。
さすがに、受験生なのに講習に参加しないという異常事態が起こった場合は理由を尋ね、解決に向けて努力しますし。


さて、宿題の残り半分は翌週までの宿題ということにして、とにかく演習を始めると、その子は、2桁のたし算・ひき算が上手く出来ないのでした。
式は正しいのですが、計算が合わないのです。
特にひき算。
繰り下がりのあるひき算ができなくなっていました。
筆算の上の数から下の数を引けない場合、下から上を引いていました。
例えば、93-47=54 としてしまうのです。

・・・これは想定外でした。
何でここまで計算力が落ちるんだろう?
計算スピードが遅くなるとか、ミスが増えるとか、その程度のことは予想していましたが、ひき算ができなくなるまで退化するとは、さすがに想像していませんでした。
「・・・計算力が落ちていますね」
そう指摘すると、その子は、答えました。
「そんなわけない。休み中はずっと〇〇タッチで勉強していた」
「・・・」

ああ、そうか・・・。
休み中、個別指導を受けない代わりに、通信端末とタッチペンで勉強する通信教育のほうに行っちゃったかー。

休み前に予習した内容に関しては、もう忘れていても仕方ないと思っていたら忘れていなかったので、それは、通信教育の効果なのかもしれません。
でも、たし算・ひき算ができないと、解き方がわかっていても、正解は出せません。

学習する際の用具というのは意外に学習に影響します。
日本の子どもが、国際的な読解能力テストで順位が低かったのも、コンピュータを使用する解答形式に慣れていないことも一因ではなかったか、と分析されています。
逆に、コンピュータを使った学習ばかりしていると、紙と鉛筆で問題を解くことに違和感があり、手が上手く動かずスムーズに計算出来ないということも起こるでしょう。
タッチペンによる学習も同様で、そればかりやっていると、紙と鉛筆を使って行う筆算の感覚がにぶる。
ふっと、やり方がわからなくなってしまう。
それは、学力的に心配な面のある子ほど影響が大きい。
そういうことがあるかもしれません。

通信端末のようなガジェットは子どもに受けがいいので、与えておけば学習意欲が高まるということはあると思います。
ただ、今のところ、日本の教育現場において、テストは紙と鉛筆で解くものです。
入試も同様です。
紙と鉛筆を持つとテンションが下がったり違和感があったりするようでは、テストの結果に影響します。

これはまた別の話になりますが、以前、ある英語塾が通信端末を導入して、生徒が家庭でも英文を読んだり聴いたりできるようにしたことがありました。
英語塾に週2回通うだけでは、効果は限定的。
毎日英語に触れるほうが学習効果が高い。
だから、それは英断だったはずなのですが、生徒たちは、その端末に他のアプリを入れられること、通信型の対戦ゲームができることを発見しました。
以後、その端末はゲーム機と化し、子どもたちは、英語の勉強をしているふりでゲームをやり放題となりました。
また、生徒同士のコミュニケーションも一気に深まり、塾の授業が終わっても塾の前にたむろし、いつまでも喋っていて帰らないという事態も発生しました。
ガジェット、おそるべし。

何でも使い方次第なので、全否定するのはおかしいのです。
ただ、端末を子どもに持たせるときは、大人が目を配る。
それは、ガラケーの時代から大人が学んでいることです。
新しいことを導入すれば、保護者は楽になるのではなく、むしろ目を配ることが増える。
そのように思ったほうがいいように思います。


話を、たし算・ひき算が上手くできなくなっていた子に戻します。
翌週、その子は、残りの宿題を解いてきました。
分数のわり算の宿題でした。
その宿題の結果は、全問不正解でした。
分数のわり算のやり方がわからなくなっていたのです。
わられる数とわる数の両方を逆数にして、計算していました。

その子は、全問不正解が納得できなかったのか、最初は私の採点ミスを疑ったようでした。
「そんなはずない。ネットで調べたのに」
と言うのです。

・・・分数のわり算のやり方を、ネットで調べた?

ネットで調べ、分数のわり算は逆数のかけ算に直せば良いことを知り、そうして、わられる数とわる数の両方を逆数にして計算したのでした。
それでは、全問不正解になります。

私は、その子に渡してある塾テキストの該当ページを開き、指さしました。
「分数のわり算のやり方は、ここに載っています。このテキストでも、学校の教科書でも、見やすく、わかりやすく載っています。なぜそのやり方で解けるのか、意味も書いてあります。やり方を忘れたのなら、なぜ、まず教科書やテキストを見ないの?」
「ああっ!」
その子は、幽霊を見たほどの衝撃を受けた顔をしていました。

いえ、ネットではダメで、教科書なら良いという話でもないのです。
肝心なのは、ネットでも何でも、本人の注意力や読解力が不足していれば、「分数のわり算は、逆数にしてかけ算する」という情報は、わられる数もわる数も逆数にするという方向へ行きやすいということなのです。
実際に学校で勉強していても、塾で演習していても、途中からそんなふうになってしまい、違う違う違う、わられる数はそのままだよと幾度も制して、意味を確認し、それでも、翌週もまた間違えているのでもう一度解説して、練習して、そんなふうにしてやっと分数のわり算が身につく子は多いのです。

情報を自ら得て活用する学力を育てる。
21世紀型の人材を育成する。
良い目標だと思います。
しかし、つまりそれは、子どもの地力では、その力が欠けている子が多いから、そういう力を育てる必要があるということです。
子どもが勉強のためにネットを利用しているときにも、大人は目を配る必要があります。
間違ったサイトを見ていないか。
正しく情報を読み取っているか。
家庭の役割は増えこそすれ、減ってはいないのです。

機械を用いて自学自習できるのは、ある程度の学力と判断力がついてからです。
それまでは、どのように機械を利用しているか、それを丁寧に見守る大人が必要です。




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