たまりば

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2019年12月23日

算数から高校数学へ。データの分析。アクティブラーニング的に。

算数から高校数学へ。データの分析。アクティブラーニング的に。

「データの分析」は、小学校から高校まで一貫して学習する数学の大きな単元です。

計算ができるだけではダメ。
未来を生きる子どもたちは、数値を分析し、読み取る力が必要だ。

そうした意図のもと、小学生から「棒グラフ」「折れ線グラフ」「整理のしかた」「平均値・単位量あたり」「資料のちらばりと柱状グラフ」と学習を進めていきます。
中学では、「度数分布表と柱状グラフ」「有効数字」「標本調査」。
高校になると「四分位数と箱ひげ図」「分散と標準偏差」「相関係数」さらに「期待値」「確率偏差」と学習が進みます。

この単元のそうした趣旨も理想もわかるのですが、実際に問題を目にすると、なかなか厄介だなと感じます。
まずは、小6向けの内容で、アクティブラーニングの可能性を考えてみましょう。


問題 AとBの2つのふくろには、以下の重さの10個ずつのミカンが入っています。
Aのふくろ
80g、85g、94g、95g、96g、96g、98g、99g、103g、110g
Bのふくろ
84g、87g、87g、88g、100g、100g、101g、102g、102g、103g

2つのふくろのミカンは同じ値段です。あなたはどちらのふくろのミカンを買いますか。理由も答えなさい。


・・・鮮度や皮のつやはどうなんですか?
産地は同じなんですか?
私は、皮がむきやすそうなミカンが好きなので、実物を見て買いたいです。
いや、ミカンはあまり好きじゃないから、どちらも買わない・・・。
そもそも、こんなどうでもいいことで悩む時間が無駄だ。どうせ大差ないから、どっちだっていいよ。

このように活発な意見が出る教室は、ある意味健全な教室です。
ただ、そうした意見がいつまでも強い主張を繰り返し、その先に進まない場合は、授業は失敗です。
こうした意見が出ても、では、鮮度や産地は同じとしよう、今回は真剣に考えて、どちらかを選ぶとしようという前提を周知徹底できるのがアクティブラーニングの基本。
先生、ご苦労様です。

学習の目的から外れた意見を除外することができたとして、しかし、アクティブラーニングで苦しいのは、生徒からその先の意見が全く出ないことです。
あるいは、1つの正論が席巻し、それ以外の意見は出ないこと。

小6「資料のまとめ方」の冒頭でこのアクティブラーニングを行った場合、生徒から出てくる答は、ただ1つに集まって終わる可能性があります。
すなわち、ミカンの重さの合計で比べる。
あるいは、平均値を求める。
今回、ミカンはどちらも10個なので、合計でも平均でも同じことです。
秀才たちは異口同音にそれを主張するでしょうし、それは、1つの正しい答です。
正しい1つの意見が場を席巻し、はあそうですかと大多数は黙っている授業・・・。
アクティブラーニングの1つの末路です。


Aのふくろの合計は、956g。平均値95.6g。
Bのふくろの合計は、954g。平均値95.4g。
だから、合計や平均値が重いAのふくろのほうを買う。

しかし、それは正解の1つに過ぎないのです。
小6の学習目標は、実は平均値の活用ではありません。
平均は、小5で既に学習済みです。

では、小6の学習では何を目指すのか?
それ以外の見方で、AのふくろとBのふくろを比べることが目標です。
この単元は「資料の散らばり」に注目することが学習の目標なのです。
アクティブラーニングは、生徒たちに話し合いをさせれば良いというものではなく、学習目標に沿った深い学びが得られるように、議論を誘導する必要があります。
目標があるのです。
「だったら、それをさっさと説明してくれ。覚えるから」
という子に、それじゃ深い学びじゃないでしょう?というのが、アクティブラーニングなのです。
簡単なことじゃないです。


もう一度、AとBと2つのふくろのミカンの重さを見比べてみてください。
実際に買うとしたら?

私なら、Bを買います。
なぜか?
100g以上の大きいミカンが6個も入っていて、おいしそうだからです。

・・・え?
そんな漠然とした主観的な答が、算数・数学で通用するの?
そういうことを答えて良かったの?
そんなのは、一番最初に除外された、つやはどうなのかとか産地はどこなのかと同じ種類のことじゃないの?

違うのです。
データの見方として、それは「あり」なのです。

「平均値」は、データを分析するための1つの重要な観点です。
しかし、平均値がそのデータの全てを説明するわけではありません。


2つのふくろのみかんの重さを再度見てみましょう。

Aのふくろ
80g、85g、94g、95g、96g、96g、98g、99g、103g、110g
Bのふくろ
84g、87g、87g、88g、100g、100g、101g、102g、102g、103g

平均値では、Aのふくろのほうが確かに重いです。
しかし、10個を重い順、あるいは軽い順に並べた真ん中の値、すなわち「中央値(メディアン)」で見た場合。
Aは96g。
Bは100g。
Bのふくろのほうが、中央値は大きいのです。

なぜ、平均値と中央値にそのような差が生じるのか?
それは、資料の散らばり具合によるものです。
Aは、まず、最小値も最大値も大きい。
最大値と最小値の差を「範囲(レンジ)」と言いますが、110-80=30(g) が、Aの範囲。
103-84=19(g) が、Bの範囲です。

ここで、散らばり具合をわかりやすくするために、度数分布表を作ってみます。

Aのふくろは、
階級(g)         度数
80以上85未満    1
85   90       1
90   95       2
95  100       4
100 105       1
105 110       1

Bのふくろは、
階級(g)         度数
80以上85未満    1
85   90       3
90   95       0
95  100       0
100 105       6
105 110       0

ここから柱状グラフを描けば、さらに一目瞭然でしょう。
Aは広い範囲で、きれいな山を描いて資料が分散されています。
一方Bは、範囲が狭い上に、その中でも大きいものと小さいものに大きく割れているのが見てとれます。


ここで、中学で学習する内容をちょっと補足します。
資料の性質を示す値を「代表値」と呼びます。
「平均値」も「中央値」も代表値です。
さらに「最頻値(モード)」と呼ばれるものがあります。
その資料の中で、最も多く出てくる値です。
度数分布表にした場合には、その階級の真ん中の値「階級値」で考えます。
Aのふくろの最頻値は、97.5g。
Bのふくろの最頻値は、102.5g。
Bのほうが大きいです。

小学校の算数や中学の数学はここまでですが、高校数学になると、ここからさらに四分位数を求め、箱ひげ図を描きます。
四分位数というのは、データを小さい順に並べたときに、4等分する位置にあるデータをQ1(第1四分位数)、Q2(第2四分位数=中央値)、Q3(第3四分位数)としていくものです。
柱状グラフでも散らばり具合は一目瞭然ですが、柱状グラフは場所を取ります。
もっと多数のデータを比較する場合には、スペースの問題で、柱状グラフを描けないこともあります。
そのために、四分位数と箱ひげ図があります。
それを見るだけで、データのおおよその傾向を読み取ることができるのです。

Aのふくろは、
Q1=94g、Q2=96g、Q3=99g
Bのふくろは、
Q1=87g、Q2=100g、Q3=102g

ここで気づくのです。
最小値と最大値の差、すなわち範囲だけを見たときは、Aのほうが範囲が広いデータです。
しかし、Q3-Q1の値、すなわち「四分位範囲」を見てみると、
Aのふくろは、99-94=5。
Bのふくろは、102-87=15。
Bのふくろのほうが、別の意味で散らばっているデータだということが読み取れます。
さらにAの平均値95.6gと、Bの平均値95.4gを考慮に入れた場合、Aのふくろは平均値と中央値に大きな差はなく、バランスのとれた散らばりである一方、Bのふくろは、平均と中央値との差が大きく、バランスを欠いた散らばりであることが見てとれます。

それらの値を箱と線分で表したのが、箱ひげ図です。
箱ひげ図の形状から、柱状グラフの形状を推理することができます。
狭いスペースで多くのデータの散らばりを比較できます。
箱ひげ図についての詳細は、過去ページをご参照ください。
https://seghi.tamaliver.jp/e449491.html


繰り返しになりますが、データの特徴を説明する数値を「代表値」といいます。
ただ、「代表値」という用語は中学の数学で学ぶもので、小学生にその用語で説明することはありません。
こんな用語を教えると、それを暗記することが大事なんだと勘違いして学習がブレる子が現れますから、用語は教えないほうが良さそうです。

平均値の他に、中央値(メジアン)、最頻値(モード)。
そうした代表値からデータをどう読み取るか。
小6「資料のまとめ方」という単元の学習目標は、そうした用語は教えないけれど、データの散らばりとその整理の仕方、そしてそこから読み取れる特徴を考えることなのです。

小6では、まずは数直線の上に、全てのデータを点として打ち込み、ちらばり具合を見ます。
次に度数分布表を作ります。
上にも描いた、〇〇g以上〇〇g未満が何個というものをまとめた階級別の表のことです。
なお、小6では、「度数分布表」という用語は教えません。
「階級」「階級値」といった用語も教えません。
資料を整理した「表」と呼ぶだけです。
相手は小学生。
95g以上100g未満という階級に、100gは入るのか入らないのかの判断も誤るレベルです。
わかっているつもりでも、ついうっかり。
用語を覚えている余裕はないのです。
難しい用語を教えると、それを覚えることに必死になって、学習のピントがずれてしまいますから。
用語を教えず、度数分布表を作ることだけに専念してもらっても、ミスは起こります。
表の個数の合計と本当の合計とが一致しないことがしばしば起こるのが小学生です。

どのデータを入れ忘れたの?
ちゃんと指差しながら順番に「正」の字を書いていった?
え?階級ごとに個数をそれぞれ数えた?
それは不正確になりがちだよー。
え?それくらい、できる?
そんな意地を張って、データの整理が不正確になるようなこと、大人はしないですよ。
子どもっぽいなあ・・・。
まあ、本当に子どもだからしょうがないけど。
・・・という学習レベルなのです。
個々のデータの取り扱いの基本も、ここで学びます。

さらに、小6では、柱状グラフを作ります。
「柱状グラフ(ヒストグラム)」という用語だけは、教えます。

さらに、中央値や最頻値も、概念として学びます。
ただし、そうした用語は使いません。
柱状グラフから、
「もっとも個数が多いのは、何g以上何g未満の範囲ですか?」
「重さの小さいみかんから順番に並べたときに、ちょうど真ん中の重さのみかんは何g以上何g未満の範囲に入りますか」
といった問題を解くだけです。

・・・問われたことには答えられるけれど、一体何を学んでいるのか、目的がよくわからない・・・。
あまりにも遠回りにものごとを問いかけるので、データの読み解き方を学んでいると気づかない場合もあるかもしれません。
だから、学習の総まとめとして、冒頭の問題をアクティブラーニングするのは「あり」ではないかと思います。

AのふくろとBのふくろと、どちらのふくろを買うか?
大きいミカンが沢山入っているBのふくろが良いという「最頻値」を重視した意見。
でも、最大のミカンはAのふくろに入っているから、Aのふくろのほうがいいんじゃないかという「最大値」を重視した意見。
真ん中の値はBのほうが大きいからBにするという「中央値」を重視した意見。
Bのふくろのほうが、一番大きいミカンと一番小さいミカンとの差が小さいから、家族で平等に食べらるんじゃないかという「範囲」を重視した意見。
やっぱり平均が大きいほうがお得だからAにするという意見。

根拠さえ明確で論理的であるなら、どの答も正解なのです。
多様な解答、学んだことを活かした解答が多くの生徒から出たなら、学習は成功。
これが、アクティブラーニング。


こういう授業を想像し、面白そうだなあ、自分もこういう授業なら楽しく参加できたのに、と思う方もいらっしゃると思います。
確かに、楽しい面もあります。
字面だけの暗記事項ではなく、生きた知識が身につき、深い理解が得られます。
でも、この授業に毎回積極的に参加していくのは、大変です。
生徒にも先生にも強いストレスがかかる授業です。

特に、冒頭のような予習的なアクティブラーニングを行う場合。
これから学ぶことを生徒から引き出そうとするアクティブラーニングは、先生にとっても生徒にとっても難行苦行です。

小5で「平均」について学習したのです。
だから、そのことを思い出して、平均によって2つのデータを比較する。
それが、ただ1つの正解。
そう思っていると、それではない他の考え方はないかと要求される。
一瞬、頭が真っ白になる子もいるでしょう。
それまでの学習をきちんと身につけていればいるほど、それを否定されるのは、つらいでしょう。

先生は言います。
小5で学習した「平均」にこだわらず、もっと自由に考えてみなさい。

・・・はあ?
習ったことに基づいて、正しい意見を言って、何が悪いの?
自由って何?

真面目に努力しているが頭の硬い子にとって、こんなストレスフルな問いかけはないでしょう。
頭の硬い子は絶句してしまうかもしれません。
その一方で、これから学習することになる「範囲」「中央値」「最頻値」という観点の意見を言えた子は称賛されるでしょう。
これから学習する内容を使って意見を言える子は賞賛される・・・。
自力でそれを発想したのなら凄いですが、本当に自力で発想したとは限りません。
予習している子もいると思います。
予習したことを、まるで自分の意見みたいに発表すると、うーんアクティブですね、と褒められる・・・。
予習していながらしていないふりで、先生の意図に沿った意見を言った子が褒められる茶番劇・・・。
そういうものになる可能性もあるのが、アクティブラーニングです。

ただ、度数分布表やヒストグラムについて予習していても、あるいは皆が学習した上で総まとめとして上のアクティブラーニングを行うとしても、先生の望むような多様な意見を出せる子は少ないかもしれません。
学習した通りの練習問題には答えられても、こうしたアクティブラーニングにその知識を活用するのは、本人の能力が高くないとなかなか難しいのです。
ヒストグラムに関する練習問題で、繰り返し「真ん中の値はどれですか?」「最も多い値はどれですか?」と尋ねられていても、それが重要なことだと気づかない。
データを読み取るときに、それを活用するのだと気づかない。
子どもの頭は、ものごとを統合するのがまだ難しく、「それはそれ、これはこれ」になりがちです。
勉強したことと、それを実際に活用することとが、なかなか結びつかないのです。
勉強したことは勉強したこととして、問われたことには「勘」で答える。
小学生には、そういう子が案外多いように感じます。

カラーテストも「勘」で解き、それでそこそこの点数を取ってしまいます。
それは、記号問題だから勘が通用し、記述式なら勘は通用しないというレベルのことではありません。
小学生の場合、文章題の立式も勘で行い、それでそこそこ正解してしまう「成功体験」を低学年で積んでしまう子が多いのです。
そのまま、高学年になり、勘では通用しない単元になっても、勘で解くことをやめられません。
文章題は正解できなくなっても、「この単元はたまたま苦手なだけ」ということにしてしまいがちです。
「単位量当たり」「速さ」「割合」といった単元がたまたま苦手なだけということに本人はしていますし、保護者もそのように位置づけてしまうかもしれません。
しかし、それは、もしかしたら、そもそも物を考える習慣がない、考えて問題を解く習慣がないということを示している可能性があります。

だからこそ、アクティブラーニングの必要性が叫ばれているのですが、これもまた難しい問題をはらんでいます。
文章題すら「勘」で解く子たちは、アクティブラーニングも「勘」でこなそうとするでしょう。
考えろと言われても、それが何をどうすることなのかわからない子が、教室に多い。
そうした中で行うアクティブラーニング。
深い学びを得られるのは、考えることを知っている子たちだけ。
考えるということを知らない子たちは、置いてきぼりです。
結果、何を学んでいるのかすら把握できない子も増えていきます。

国立大学の附属中学などでは、もう何十年も前から、こうしたアクティブラーニングの授業を行っています。
そこで勉強についていけなくなった子が、
「授業で何をやっているのかわからない。勉強のできる人何人かと先生が話し合っているだけ」
と評するのは、そうした理由によるところが大きいと思います。

繰り返しますが、アクティブラーニングは、上手くいけば、その効果は絶大なのです。
ものを考えるということがどんなに楽しいことか。
教科書に載っている無味乾燥に見えることが、どれほど生きた知識であるか。
学校では教えてもらえないことの価値を声高に叫ぶ意味はわかります。
でも、その前に、学校で教えてもらえることの価値をまず知ってほしい。

「中央値」「最頻値」「最大値」「範囲」といった、学習内容としては無味乾燥なものが、実はみかんのふくろ1つ買うのでも使えるものだということ。
算数・数学は実生活と関係のあるものなのだということ。
私たちは、どのようにデータを見たらよいか、その観点を学んでいるのだということ。
そういうことへの理解を深めるためのアクティブラーニング。
学んだことが、実感と結びつく。
そうした高い理想を、できるだけ多数の生徒が享受できることを願ってやみません。

アクティブラーニングの授業が、来年度の小学校の新しい学習指導要領から、ついに本格始動します。




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