たまりば

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2019年10月31日

近所の都立高校。

近所の都立高校。

昔、集団指導塾に勤め、中2のクラス担任をしていたある夏のこと。
保護者面談を行っていたときのことです。
集団指導塾といっても1クラス10人ほどで、その子の授業態度や宿題をやってきているかなどを正確に伝えることは問題ありませんでした。
月例テストの成績の推移を示すことで、学力の伸びなども伝えることができました。
しかし、保護者の中には、
「〇〇高校に入れそうですか?」
と、直球の問いを投げかけてくる方もいらっしゃいました。
無理もありません。
知りたいですよね、そういうこと。
その子の成績は、3が大半でたまに4。
授業中の私語が多く、宿題もやってきません。
それなのに、志望校は、都立自校作成校でした。
うーん・・・。

月例テストは、目安として志望校の合格判定も出ました。
中3の模試とは違いますので、そんなに正確な数値が出るわけではないですが、目安にはなります。
本人の記入した志望校の合格判定は、無論、泣き顔の顔文字。
とはいえ、どの高校を志望するのが妥当かを例示してくれるのが参考になりました。
その子の場合、月例テストがお薦めする妥当な志望校として、その子の家の近くの都立高校の名前が上がっていました。
これから頑張れば、そこを受験できるだろうと予想できました。
しかし、その学校の名前を出すと、お母様は顔をゆがめました。
「あんな高校」

第一子のお子さんの高校受験の場合、進路指導でこういうことが起こりがちです。
さすがに、中3の秋になってそうしたことをおっしゃる方は少ないのですが、まだ中2ですと、入試情報をほとんど得ていない中でイメージが先行し、志望校が高くなる傾向があります。
近所の都立高校の実力を理解しづらいのも一因かもしれません。

「あんな高校というのは、近所ですと、やはり、〇〇高校の生徒さんの登下校で迷惑を感じることがあるのでしょうか?」
と質問してみると、そのお母様は具体的に不快な点を列挙されました。
制服を着くずしたり、オーバーサイズのセーターやカーディガンをだらだら着ていたりするので、服装の印象がだらしない。
道いっぱいに広がって大声で話しながら登校していく。
自転車の子が徒歩の子と並んでだらだら下校するので、交通の邪魔。
お菓子を食べながら歩き、道にゴミを散らかしていく子もいる。

うーん・・・。
大したことではないという見方もできるし、それが毎日のことであれば不愉快極まりないと見ることもできる・・・。
そのイメージですと「あんな高校」と思ってしまうのも仕方ないのです。
しかし、その「あんな高校」は、内申が3の中にたまに4があるという状態ですと、これから努力して何とか合格できる高校なのでした。
中3までにもう少し4を増やして、その上で、入試できちんと得点できるように受験勉強を頑張れば合格できる。
目標としてほしい、良い高校でした。


非常にざっくりした話で、例外はいくらでもあり、正確にはきちんと数字を計算すべきことですが、一般に、内申に「2」があると、都立高校に入るのは難しいと言われています。
言い換えれば、内申がオール3で、ようやく都立高校の学力的に一番下の高校に入れそうだということ。
一方で、内申オール3は学力的には「普通」なのではないかと感じている保護者の方も多いです。
普通なんだから、都立高校の「真ん中」くらいのランクのところに入れるのではないか?
3の中に4もあるなら、中の上くらいの高校に入れるのではないか?
そして、これから頑張れば、自校作成校に入れるのではないか?

このような、中学校の内申と都立高校のランクとの感覚のズレは、中3の秋まで是正されないことがあります。
それは生徒本人もそうで、中2から中3の夏休みくらいまでは、1000点満点で本人の実力よりも200点も上の高校を見学してしまいます。
昔は、入試情報を一般には得にくく、それで誤解している場合も多かったと思います。
しかし、今は、そうした情報は得ようと思えばすぐに手に入れることができます。
模試を開催する会社が、都立高校の60%合格基準点を1000点満点で明示し、全ての都立高校を得点の高い順に並べています。
それは、学校の先生や塾だけの資料ではなく、誰でも見ることができます。
1000点満点の得点の出し方も調べればすぐにわかります。

具体的に計算してみましょう。
まずは内申点。
5教科はそのまま、実技4教科は2倍にして得点を出します。
オール5の場合、5×5+5×2×4=65
オール3の場合、3×5+3×2×4=39
これを300点満点に換算します。
65点満点を300点満点に変えるのですから、300/65倍すれば良いです。
39×300/65=180
一方、入試は5教科500点満点。
これを700点満点に換算します。
すなわち、500×700/500=500×1.4
例えば、入試で平均60点取れたら、
60×5×1.4=420
先程の内申との和が、その子の得点です。
180+420=600

内申と入試が4 : 6の高校もありますが、大多数の高校は上の計算で得点を出すことができます。

600点で入れる高校はどこであるか、一覧表を見てがっかりされる方は、都立高校の見方にズレがある方です。
実際には、学校の成績が「3」で、入試当日に60点を取るというのは、相当な受験指導がされて、その結果が出ている場合です。

都立入試は、難しいのです。

国語は、大問1、2の漢字の読み書き、大問3の小説の読み取りまでは自力で何とかなります。
しかし、大問4の論説文は、文字を目で追うことはできても、意味を理解することができない子もいます。
大問5の古典の鑑賞文となると、内容に興味が持てないことも手伝って、読み通せない子が続出します。
古典の原文だけでなく、その口語訳も載っているので、落ち着いて読めば大丈夫なのですが、「古文はわからない」と言い出し、大問ごと捨てる子もいます。

社会は、資料や表・グラフを読み取れない子は悪戦苦闘します。
自校作成校を受験する子ですら、得点は70点台ということがあります。
社会が得意な子にとっては得点源なのですが、そうではない子にとっては、地理分野の問題と「現代の日本と世界」に関する問題で得点を固めるのが難しい科目です。

数学は、大問1の小問集だけは何とかなるはずです。
しかし、せめてそこだけはとりこぼしのないようにと努めても、そこで計算ミスをし、ポロポロととりこぼす子はあとをたちません。
あとは、残る大問のそれぞれ問1しか解けない子が多いですし、その問1を解けることに気づかせることも大きな課題となりがちです。

理科は、大問1と2の短問集は知識が定着していないためのとりこぼしが多くなります。
その上、大問3から6は、実験や観察の記述が膨大であるため読み通せない子が続出します。
入試で理科が最低点となるのは常態です。

英語は、初見の長文を読めない子が多いのです。
1~2行で本文を読むのを諦めてしまいます。
大問1のリスニングと大問2の短文を読む問題以外は、苦戦が必至です。

内申が「3」の子が独りで受験勉強をしていると、この学力で入試当日を迎えることになってしまいかねないのです。
50点を取るのも難しい場合もあります。

入試得点は、平均が50点ならば、
50×5×1.4=350
内申との和は、
180+350=530
都立高校一覧表と見比べてみると、この数字で合格できる都立高校が極めて少ないことがわかると思います。

内申が「3」でも、入試本番で頑張れば・・・と、つい思ってしまうのですが、入試本番で高い得点が取れるなら、それ以前に内申はもっと高いはずなのです。
内申には様々な観点が加味されているといっても、ざっくりいって、定期テストで80点台を取っていれば大抵は「4」になりますし、90点台を取っていれば大抵は「5」になります。
定期テストで70点台の、「4」に近い「3」の子なら入試問題への対応力もそれなりにありますが、定期テストで50点台をいったりきたりの「2」に近い「3」となりますと、入試問題への対応力はかなり弱まります。

さらに、入試直前になると、志望校を下げる子が現れます。
特に、自校作成校を志望していた子の多くが、普通の都立に志望を変えます。
「上から受験生が降ってくる」という状況が起こります。
どんどん押し出されて、一応合格しそうだった高校も、決して安心できない状況になっていきます。
都立高校は、中位から下位になるほど合否の見極めが難しいのは、こうした事情もあるからです。

そうした中で、入試得点を何とか固めていくこと。
上のように、子どもに任せていたら全く歯が立たない問題を解けるようにしていくこと。
塾の腕の見せどころであり、上のような学力の子が、ひと通りまともに入試問題を解いていけるようになった結果が、入試平均60点。
そうであることは、塾講師と生徒本人はわかっています。
受験をともに乗り越えれば、保護者の方も理解してくださることです。

自校作成校に合格させることだけが難しいわけではありません。
素質があり、自発的にどんどん勉強する子なら、むしろ指導は簡単なのです。

入試問題の難しさに跳ね返され、眺めた瞬間に「無理」と諦めて解こうとせず、独りで勉強させると考える前に解答を見てしまう・・・。
そういう子が、どうにか都立入試問題を6割解けるようになる。
そこに詰まっている受験技術と指導技術。
こちらのほうが仕事としては大変です。

入試問題を解けない子は、学力の問題以前に、「応用問題は自分は解けない」という思い込みが強いのです。
そして、解き方を知りません。
問題への切り込み方がわかっていない。
問題の亀裂にぐいぐい食い込んでいく方法を知らない。
問題を眺めて、ぱっとわかれば「解ける問題」。
ぱっと見てわからなければ「解けない問題」。
入試問題は、ぱっと見てわかる問題ではありません。
だから、入試問題は、永久に解けない問題。
それで終わってしまいかねないのです。

国語の評論も英語の長文も、ちょっと読みづらいとすぐに諦める。
自分には無理だと思ってしまう。
読み方がわかっていない以前に、勉強に対する耐性がない。
秀才は、あれは異人種。
自分はそういうのではないから。
と自己評価の低い子は多いです。
小学校の頃は、誰でも解ける基本問題以外は解く必要がありませんでした。
中学になってそれが通用しなくなっても、その現実と向き合えない。
勉強に対して心傷ついたまま、まともに向き合えない。
難しい問題と正対できない子は多いです。
自分の潜在能力をギリギリまで発揮しようとしない。
すぐに逃げてしまう・・・。
「2」に近い「3」の子の受験勉強は、そうした「逃げ」との闘いから始まります。

自校作成校に〇〇人合格とうたいながら、その他の都立高校には大量の不合格ということもあるのが塾です。
実際、私が昔勤めていたその集団指導塾も、上のクラスの半分以上の生徒が自校作成校を志望し、私の在籍した5年間では、もともと無謀な受験だった1人を除いて全員合格しましたが、下のクラスの都立の合格率は50%に満たない年もありました。

1つには、進路指導上の困難があったこと。
過去問の得点を生徒に自己申告してもらうシステムを取っていたのです。
模試の判定も参考にしていましたが、模試の問題は本物の入試問題と比較するとやはりちょっとあっさりしています。
「都立そっくり」といっても、国語や英語ほどの再現度にはなっていない科目もあります。
難度は一致しているのですが、読み取らなければならない文字数がやたら多いのが都立入試です。
くどくどと長い説明と設問を読み通す力が必要です。
だから、模試も大切ですが、最終的には過去問で何点取れるかが合否の判断で重要となります。
しかし、その塾の下のクラスでは、解答解説を見ながら解いた過去問の得点を申告してくる子が多く、進路指導の誤差が大きかったのです。
中3のそのクラスは塾長が担任をするのが毎年の慣例で、塾長は、生徒のことを無条件に信じる人でした。
私なりに進言しましたが、私の言うことよりも生徒の申告を信じてしまう人でした。
生徒たちが解答を持っていない古い過去問を授業中に解いてその結果を塾長に渡したり、生徒本人に嘘の申告がどのような結果を招くか説明したりしましたが、解答解説を見て解いていながらも自力で解いているような錯覚に陥っている子も多く、なかなか改善しませんでした。
水増しの過去問得点を申告した子たちは残念な結果に終わっていきました。
志望校をあと1つ下げるべきだった子が多かったのです。

勿論、それだけではなく、下のクラスの子は演習量を確保しづらいという課題もありました。
宿題を出しても「難しかった」と言って解いてこない子が多いのです。
易しいドリル形式の問題しか自力で解いてきません。
しかし、入試問題はそんなレベルではありません。
常に傍らにいて、
「この問題は解けるよ」
「この問題は、この前も解いたばかりだよ」
と声をかけて励ますと解けるのですが、独りでは、すぐに諦めてしまうのです。
自力で課題をぐんぐんこなす子たちとは学力差がさらに開いていってしまいます。

過去問を買って、自分で解こうとしても、数問眺め、歯が立たないと諦めて、答えを見てしまう。
解き方と答えをノートに書き写すことで勉強した気になってしまう。
そして、難しい問題は解けないからと、易しい1問1答形式の薄い問題集などを自分で買って、それで受験勉強をした気になってしまう。
自力で入試問題を解いた経験が一度もないまま、入試を迎える。
そして、残念な結果に終わってしまうのですが、なぜ合格できなかったのか、保護者の方は真の理由を知りません。
生徒本人が上のような分析を自力ではできないですから、知りようもないことです。
内申は他の子と同じで、何とか合格できるのではないかという高校を受けても結局合格しなかった子の中には、受験勉強らしい受験勉強をできずに終わってしまう子も多かったのです。

私の塾は、今年で8年目になりますが、都立高校に不合格だったのは、開校した最初の1人だけです。
あとは、全員合格しています。
5教科全てのその子の実力を把握し、私が直接保護者に連絡できるシステムがあること。
常に傍らにいて、その子が解ける問題は絶対に解かせることが可能であること。
受験事情を知らない人にとっては「何でもない都立高校」に合格させることが、私の大切な仕事です。


都立高校に合格した子たちは、勉強のやり方を知っている子たちです。
だらだらした服装でだらだら歩いている子も、勉強は標準以上にできるんです。
そうした見た目と勉強ができるかどうかは、観点が異なります。
道路にゴミを捨てていくのは・・・、それは絶対やめてほしい。


近所の高校に対する不快な感情というのは、しかし、消え難いものなのかもしれません。
お母様が「あんな高校」と言ったその生徒は、中3になって4をいくつか増やし、受験勉強を頑張って、都立高校に合格しました。
ただし、1000点満点の数字がほぼ同じ、隣りの旧学区の高校に。
その高校は、その地域の近所の人には「あんな高校」と言われていたかもしれません。
近所の高校と何が違うというのだろう?
そうも思いましたが、本人も保護者も納得しているのなら、それで良いのでしょう。
自分が納得できる高校生活をおくれることが何よりも大切なこと。
そう思います。



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