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2019年07月03日

高校英語。不定詞その3。完了形の不定詞とseemなど。

高校英語。不定詞その3。完了形の不定詞とseemなど。

さて、今回は、こんな問題から。

問題 以下の2文がほぼ同じ意味となるよう、空所を埋めよ。
It seems that he was ill.
He seems (  )(  )(  ) ill.

こういう問題を目にしたとき、問題文には不定詞が全く出てこないこともあって、不定詞の文法問題であることすら気づかないということがあります。
テスト範囲が限定されていない模試や入試では、不定詞という発想すら湧いてこないので解けない人がいます。

学校の文法テキストの問題だけ繰り返し解いていても、何が典型題なのか気づかないということがあると思います。
他の文法問題集もあわせて解くことで、
「あれ、この問題、学校のテキストでも見た」
「同じような問題を以前も解いた」
という感覚が養われていきます。
単語も何もかも同じ問題である場合、たまたまどこかの大学の過去問が別の問題集でも採用されているだけということもありますが、単語は違うものが使われ、文意は異なるのに、構造が同じ問題が他の問題集にも載っていることは多いです。
結局、それが英文法の典型題です。
典型題を把握すると、文法問題は何が出題されるのか大体わかるようになりますので、安心して解いていくことができるようになります。
そのためにも、感覚で解くのをやめて、文法的にこれはどういう問題なのかを分析して解いていくことが大切です。

さて、それでは上の問題は、文法的にはどういう問題なのでしょう。
そもそも、空所がないほうの文は、どういう文なのでしょうか。

これは、「It seems that ~.の文」として理解するのが一番簡単です。
この it は、特に何かを意味するものではありません。
seem の他、appear , look , happen などの動詞の主語として用いられます。
It seems that ~.で「~のようだ。~らしい」という意味になります。

It seems that he was ill.
彼は病気だったようだ。
過去に病気だったように現在見えるということです。
病み上がりのように見えるのでしょう。
顔色がまだ悪いとか、入院していたという話を聞いたとか、何かそういう情報があるのだと思います。
とはいえ、現在病気であるように見えるということではなく、過去に病気だったように現在見えるのです。

これを、he を主語に変えたのが、空所のあるほうの文です。
まず、最も単純に書き換えてみると。
He seems that he was ill.
意味内容が伝わらないことはないと思いますが、he が2回も使われていて、何だか不自然ですね。
he は一度でいいでしょう。

He seems that was ill.
これでいいでしょうか?
いいえ、このように that 節の主語を省略することは、英語では認められていません。
これは間違いです。
that が接続詞なのか従属節の主語なのか見分けがつかないですし。
えー、じゃあどうしよう?

ここで登場するのが、to 不定詞です。
to 不定詞は、that 節の代わりをすることができるのです。
文の主語が不定詞の意味上の主語と一致する場合、主語を明示しなくても済むのも、この場合大変都合の良いことです。

それでは、答えは、
He seems (to)(be)(  ) ill.

・・・あれ?
(  )が1つ余る・・・。
何が違うのだろう?

ここで時制について考えましょう。
It seems that he was ill.
という空所のないほうの文は、文全体の動詞 seems は現在形ですが、that 節の動詞 was は過去形です。
時制がズレているのです。
「時制の一致」という言葉を聞いたことがあると思いますが、それは主節が過去形のときに that 節もその時制にあわせていくことを指します。
一方、主節の時制が現在で that 節の時制が過去なのはよくあることで、何も問題ありません。
「~のように見える」のは現在だけれど、彼が病気だったのは過去のことです。
だから、日本語では「彼は病気だったようだ」となります。

しかし、上の答案では、
He seems to be ill.
不定詞の時制は、このままでは文全体の動詞の時制と一致してしまいます。
彼は、現在病気であるように、現在見えるという意味になります。
「彼は病気のようだ」と訳すことになってしまいます。

不定詞の時制は、このままでは文全体の動詞の時制と一致してしまう・・・。
では、時制をズラす方法はないのでしょうか?

そこで登場するのが、完了形の不定詞です。
形は、「to have +過去分詞」。
助動詞のところでも出てきましたが、「have+過去分詞」という現在完了の形を使うことで時制を1つ古くするのは、英語の基本ルールです。
またこのルールだと気づくことで、英語全体の構造も見えてきます。

したがって正解は、
He seems (to)(have)(been) ill.
となります。

「to have +過去分詞」の完了形の不定詞は、単に「不定詞の過去形」というわけではありません。
絶対的に過去のことを表すわけではないのです。
これは相対的なことで、文全体の動詞の時制よりも1つ古い時制になるのです。
主節が現在形なら、「to have +過去分詞」は過去を表します。
主節が過去形なら、「to have +過去分詞」は、過去よりもさらに過去の大過去を表します。

整理しますと、主節と that の両方が現在ならば、
It seems that he is ill.
=He seems to be ill.
彼は病気のようだ。
現在病気であるように現在見えるのです。

主節が現在で、that 節が過去ならば、
It seems that he was ill.
=He seems to have been ill.
彼は病気だったようだ。
過去に病気だったように現在見えるのです。

主節が過去で that 節も過去なのは、時制の一致で、時間的なズレはありません。
It seemed that he was ill.
=He seemed to be ill.
彼は病気のようだった。
過去のそのときに彼は病気であるように、そのときに見えたのです。
そのときに具合が悪そうに見えたのでしょう。
あるいは、そういう話をそのときに聞いたのかもしれません。

主節が過去で、that 節が過去完了の場合は、時がズレています。
It seemed that he had been ill.
=He seemed to have been ill.
彼は病気だったようだった。
「~のように見えた」のは過去で、彼が病気だったのは、さらにその前の大過去となります。
見えたときの段階では彼は病み上がりで、もう回復していたのでしょう。
大過去に病気だったように、過去のそのとき見えたのです。

こういうことを「英語はスッキリしているなあ」ととらえる人は文法好きな人。
「ごちゃごちゃしていてよくわからない」と思う人は、あまり文法が好きではない人。
大雑把にはそのように言えるかもしれません。
文法好きにとっては、どこがごちゃごちゃしているんだろう、こんなに機械的ならむしろありがたい、と感じるところです。
それぞれの訳を見たらわかりますが、日本語だって同じ程度には機械的で、同じ程度にはごちゃごちゃしています。

「訳し分けがわからない」
という人もいますが、それは、むしろ日本語能力の問題が大きいと思います。
「彼は病気だったようだった」
と聞いて、そのように見えたのは過去で、病気だったのはそれより古い過去と把握できるかどうか。
日本語のネイティブでもそれを瞬間で判断するのは難しいということはあると思います。
ただ、訳しなさい、という問題は減少傾向にあり、今後はさらに減っていくと予想されますので、そんなに心配する必要はありません。
英語として時がズレているか一致しているかを正確に把握することに集中しましょう。
むしろ日本語よりも英語のほうが時制の把握は楽かもしれません。


以前も書いたことがありますが、中学生で英語の過去形や未来の文が全くわからないという子を教えたことがありました。
練習しても、確かに、使い分けの基準が全くわかっていない様子が見られました。
「ほら、この文は、yesterday と書いてあるから過去形でしょう?」
と説明しても、
「yesterday と書いてあったら過去形なの?」
と訊き返してくるのでした。
うん?
これは変だな、と感じました。
「日本語でも、『行く』が『行った』になるじゃない?過去形という言い方はしないけれど、過去の助動詞を使うと、文は過去の意味になるよね」
「え?何それ?」
「・・・」

そこで、日本語の過去・現在・未来の文を並べて板書しました。

現在の文ならば、
「私は毎週金曜日に塾に行く」
過去の文ならば、
「私は昨日塾に行った」
未来の文ならば、
「私は明日塾に行くだろう」

日本語も文末が変っているでしょう?
日本語にも過去形や現在形、未来形があるんですよ。
そのように説明すると、その子は、驚愕していました。

日本語に過去・現在・未来の区別があることに気づいていなかったのです。
英語だけが、過去だ未来だとこだわるから変だ、英語は変だ、よくわからない、とずっと思っていたようなのです。

日本語の文法なんて勉強する意味あるの?
話せるから別に平気じゃん。

そのように言う人がいますが、日本語に時制があることすら勉強しないと気づかない場合もあります。
日本語があまりにも自明のものとなっていて、日本語にルールがあることすら気づいていない。
特に、日本語の助動詞・助詞の学習は、今の子どもには必須のことと感じます。

日本語にも時制があることに気づいてから、その子は英語への抵抗が少しずつなくなっていき、普通に英語の出来る子へと成長していきました。




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