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2019年07月17日

小学算数。EXテストの衝撃。

小学算数。EXテストの衝撃。

先日、小学生が教室にEXテスト(エクストラ・テスト)を持ってきてくれました。
「こんなテストを、前にも受けたことある?」
と質問しましたところ、去年も何回かこのテストを学校で受けたとのことでした。

しかし、こうした口頭の情報は、不確かになりがちです。
私の質問の意図を子どもは正確に把握できない可能性があるからです。
普通のカラーテストと混同しているかな?
それとも、本当に去年も何回かEXテストは受けたのかな?
謎のままです。
他の学校の小学生に尋ねると、受験生もそうでない子も、
「知らない」「受けてない」
という返答ばかりでした。

それは中3でもまだそうで、例えば、
「都立高校入試の模試に似ている学力テストを学校で受けましたか?」
と質問しても、その子は、それがどのテストを指す何であるかを正確に把握できないことが多いです。
質問の意図がわからないし、都立高校入試の模試というのをまだ受けたことがないので、それに似ているものと言われてもわからない。
結局、国が実施する学力調査と誤解してしまう子もいましたし、何を訊かれているのかわからないからか、
「ない」
と適当に答える子もこれまで何人も見てきました。
あった、と答えて、では点数は?とさらに問われるのが嫌なので、テストの存在をなるべく隠そうとする気持ちもあるのかもしれません。
点数を見せたくないという防衛心が働くのか、こちらが訊かない限りどんなテストのことも言わないのです。
実物を示して、
「これをもう受けた?」
と訊かない限り、明確な答えは得られない。
しかし、私の手元に実物があるわけではないので、質問もあやふやにならざるを得ず、返答はさらにあやふやになるということが繰り返されます。
とはいえ、中3が学校で受ける模試に似たテストのことは、私が知らなくてもどうということはないので、近年は質問もしないのですが。
秋以降、校外で受ける本当の模試の結果を見せてもらえれば問題はありません。


話を戻しますと、EXテストの見た目は、いつものカラーテストとよく似ていました。
両面カラー印刷で、カラフルです。
紙の大きさもいつもと同じです。
違うのは、テストの質。
思考力・判断力・表現力を見るEXテスト。
難度が高いです。

何だろうこのテストは?
ネットで検索すると、学校教材のサイトに簡単にいきつくことができました。
小学校1年生から6年生までのテストがあること、国語と算数があることまでは把握できました。
理科や社会があるのかどうかはわかりません。
いつ頃から作られているテストであるのかもわかりませんが、今年初めて作られたテストではないようです。

個人のブログや悩み相談サイトを見ると。
小1の子がEXテストで0点を取ってきたとか、同じ子が、小2では15点だったとか。
中学受験生なんだけれどEXテストでもあまり良い点が取れないとか。
そうした情報が得られました。
当然ですが、テストそのものがネットにアップされているようなことはありません。
それは絶対やったらダメなことですね。

今回、たった1枚、実際に目にした小6算数のEXテスト。
それだけで把握できることには限りがありますが、並んでいる問題は、中学受験の受験算数の易しい典型題でした。

受験算数としては基本問題ですが、その基本問題を解けない中学受験生が多いのが現実です。
そうした子も、受験勉強を始める前は、学校の普通のカラーテストは満点連発だったのかもしれません。
「算数は簡単だ」という間違った感覚を抱いていた可能性もあります。
いや、むしろ、保護者の方が、満点連続のカラーテストを見て、この子は算数は得意だと誤解していた可能性のほうが高いかもしれません。
「間違った感覚」というのは、カラーテストは、基本中の基本が身についているかどうかを検査するものだからです。
計算の手順が身についているかどうか。
公式をそのままあてはめる問題を解けるかどうか。
非常に簡単であるため、内容を理解していなくても作業手順を覚え込むことだけで、満点が取れます。
思考力はほとんど必要ありません。
満点連続のカラーテストを見た保護者の方は、まさか自分の子どもの思考力が弱いとは想像もしないと思います。
だって、現実にテストは満点なんですから。

多くの子が、学力的に余裕を持って受けることができるのがカラーテストです。
それが悪いということではありません。
小学生のうちから、その子の学力的限界をそんなに突きつけなくてもいいでしょう。
そんなことをしたら、学ぶこと自体が嫌になってしまいかねません。
本人は「わーい、満点だー」と喜んでいればいい。
満点のテストを見た大人も、「わあ。また満点だ。頑張ってるねえ」と褒めたらいい。
しかし、だから、この子は数学的才能があるとか、中学に入っても数学は大丈夫とか、中学受験をしても大丈夫とか、そんなことの判断材料にはならないことを、大人は知っておいて良いと思います。

学校の算数の問題はよくできるので、中学受験をしても大丈夫なのではないか?
そうした誤解から起こる悲劇は、枚挙にいとまがありません。
中学受験の受験算数は、思考力がないと対応できません。
それ以前は、パッと見てパッと解き方がわかる問題しか解いたことがないのです。
筋道立ててじっくり考えるということをしたことがないので、どうしたらいいのかわからない。
パッと見てわからない問題は、その子には解けない問題です。
結果的に、受験算数は基本問題を解くのも悪戦苦闘となります。
それまでもじっくりとものを考えてきた子以外はそうなりがちです。

とはいえ、今は教育技術が進歩していますから、わからないことをわかるように教えることが可能です。
筋道立てて考えることも、一歩ずつ教えることができます。
わからないこともねばって、1つずつ解けるようになっていく。
じっくり考えていく。
そういう子は、受験勉強の後半でジリジリと学力を上げていきます。

ところが、「パッと見てパッと解き方がわかる頭のいい自分」というセルフイメージへの固執の強い子もいます。
じっくりねばって考えるとはどういうことなのわからないだけでなく、そんなことはやりたくないと思っている子もいます。
自分が上手くできないことは嫌い。
苦労して考えてやっと答えがわかるなんてダサい。
パッと見てもわからない問題を解かされると、劣等感を覚える・・・。
自分の限界を思い知らされるようで、つらい・・・。
勉強しているように見えても、テキストに載っている問題の解き方を丸暗記しているだけで深い理解はなく、受験算数の問題の周囲を無意味にぐるぐる回っているような状態で、問題の核心に向かってアクセスできないまま入試を迎える。
そういう子も多いです。
つまりは能力よりも精神力の問題になりがちですが、まだ小学生ですから、そんなに強い精神力を求めるほうがどうかしています。
入試のような人生の一大事に直面する時期ではまだなかった。
時期を選ぶべきだった。
成長過程において、中学受験が向いている子もいれば、そうではない子もいる。
誰もが中学受験をすることが有利なわけではない。
そういうことだと思うのです。

思考力が弱いというのは、生涯そうであるというような決定事項ではありません。
思考力も鍛えれば強くなります。
パッと見てパッと問題の構造をつかむ瞬発力のようなもののある子は、つまり、頭の回転は速いのです。
ただ、深く思考したことがない。
ものごとを筋道たててじっくり考えるということをしたことがない。
それを要求されて応える精神力もない。
やってもできなかったという形になるのが嫌なので、勉強しない方向に自分を誘導しがちです。
逃げ道を探すことに頭を使ってしまう・・・。
才能の無駄遣いをしてしまう子も多いです。

数学で大きな結果を出している塾や学校は、「じっくり考えることのできる者が最上位」というヒエラルキーが確立されています。
じっくり考えることでしか解けない問題を考える。
それを解いた人が称賛される。
そうした空気の作り方に成功しています。
大人がそれを強制してもなかなか従わない子も、自分と同年齢の子たちがじっくり考え、そのヒエラルキーに従っている環境にいると、それに従い始めます。
考える者が最も優れた者であり、称賛される。
パッと思いついただけのことを言っても正答できないので、誰もが考え始めます。

EXテスト。
今の小学校では、思考力をちょっと試し、それを成績つけの参考にすることはあっても、それ以上の活用は難しいと思います。
問題解説をしたところで、理解でき、類題が解けるようになる子は半分にも満たないでしょう。
来年度からの、新しい学習指導要領の下では、どうなるのか?
これは、そのためのテストなのか?

蓋を開けてみなければわからないことが、まだ多いです。




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