たまりば

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2019年04月24日

座標平面上の三角形の面積。アクティブラーニング的に。

座標平面上の三角形の面積。アクティブラーニング的に。


来年度から、小学校で新学習指導要領による授業が始まります。
いよいよ「主体的・対話的な深い学び」の開始です。
来年になって急に始めようとしてもできることではありませんから、小・中・高ともに、そろそろ助走が始まったと感じるこの頃です。

以前、Twitterで
「三角形の面積の求め方を子ども自身に発見させることにそんなに必死になる必要があるんだろうか」
というつぶやきを読んだことがあります。
私もそれには共感します。
アクティブ・ラーニングは、公式や定理の発見まで子どもに任せると、大変な労力と時間がかかります。
しかも、大元を発見させるためには学習上のガイダンスも曖昧になりがちで、何のために何をやっている授業なのか全く理解できない子を大量に生みます。
授業は、その子たちを置き去りにしてしまいます。

一方、中学受験をする子たちは、学校で授業を受ける頃には既に三角形の面積の公式は学習済みであり、知っていることも知らないふりでアクティブ・ラーニングに参加しなければなりません。
「そんなの知っている」
の一言で授業を粉砕できるのですが、賢い子は、それをやると先生が困ることも知っています。
先生の顔色を見ながら、先生がどう授業を進めたがっているかを考えて、それに沿う意見を言い、先生をサポートする。
頭の良い子は、そうすることも可能です。
うーん・・・。
そういうのを忖度と言いませんかね。
アクティブ・ラーニングは、今世紀を生きる子どもたちが、社会人になったときに必要となるスキルを磨く学習の形である。
それが忖度を学ぶ授業になってしまうのは、痛烈な皮肉です。
少なくとも、そこには、本人たちの学ぶ喜びは存在しないように思います。

そうしたことも考えあわせますと、公式や定理は、証明まで含めて、先生が解説するのが無難でしょう。
それをどのように組み合わせて問題を解いていくかをアクティブ・ラーニングでやるのなら、その授業形態には可能性を感じます。
それもまた、中学受験生は圧倒的に有利ではありますが、少なくとも、予備知識がなく、三角形の面積の求め方を初めて学習する子たちも、今はどういう単元で、何を学んでいるかは自覚できます。
それならば、授業で何を話しあっているのかよくわからないとしても、家庭学習は可能です。
塾がサポートすることも可能です。


そんなことを考えたのは、うちの塾に通う高校2年生の生徒の学校で、どうやらアクティブ・ラーニングが始まったからでした。
急に全面的にアクティブ・ラーニングを導入するのは無理ですから、徐々に慣らし、先生も研鑽を積む必要があるのでしょう。
数Ⅱ「図形と方程式」の学習で、2点間の距離、直線の式、点と直線との距離などの求め方を学習した後、授業はグループ学習に入り、いくつか課題が出されたとのことです。

上の図の問題がその1つです。

問題 3点、0(0,3)、A(6,3)、B(2,6)を頂点とする三角形の面積を求めよ。

しかし、
「・・・学校の授業が全くわかりません」
と、その子は言いました。
ノートを見ると、問題が1問ずつノートの最上段に貼ってあり、それをグループで解かねばならないようなのですが、答案が完成していないページが多いです。
問題以外は白紙のページもあります。
うわ、これはまずい・・・。

「この問題は、三角形を長方形で囲んで、要らない部分を引けば、いいんですよね」
上記の問題を指さし、その子は言いました。
「・・・」
うーん・・・。

それでも、求めることは勿論できます。
できますが、今、何を学習していますか?
2点間の距離、直線の式、点と直線との距離の求め方を学んだ直後です。
その先にポンと出された、この問題。
これを出題する先生の意図は何でしょうか?
いや、そういうのが忖度ですかね・・・。

何の話?
と思われる方もいらっしゃると思いますので、ここで、この問題の解き方を整理しましょう。
この問題は、私が思いつく限りでは、3通りの解き方があります。

まずは、その子も思いついた、中学1年で学習する解き方。
3点、0(0,3)、A(6,3)、B(2,6)を頂点とする三角形を、x軸、y軸と平行な線分による長方形で囲みます。
上の図で、赤線で描いた長方形がそれです。
その長方形の面積から、不要な三角形3つの面積を取り除けは、求めたい△OABの面積を求めることができます。
長方形は縦6、横6。
それぞれの三角形の底辺や高さも座標から読み取れますから、
6・6-1/2・2・6-1/2・6・3-1/2・4・3
=36-6-9-6
=15
よって、△OAB=15 です。


しかし、現在学習しているのは、数Ⅱ「図形と方程式」です。
直線の式や、2点間の距離や、点と直線の距離の求め方を学んだばかりです。
それを活用する解き方を考えてみましょう。

ここで公式の確認を。

点(x1,y1)を通り傾きaの直線の方程式は、
y-y1=a(x-x1)

また、2点(x1,y1),(x2,y2)間の距離は、
√(x1-x2)2+(y1-y2)2

さらに、点(x1,y1)と直線ax+by+c=0 との距離は、
d=|ax1+by1+c|/√a2+b2

これらの習いたての知識を使って、この問題を解くのなら。

線分OAを底辺とし、点Bと直線OAとの距離を高さと見て、△OABの面積を求める解き方が導き出されます。
これが、今回のアクティブ・ラーニングの結論と、一応の予想が立ちます。

公式を用いて、
OA=√36+9=3√5
また、直線OAの式は、x-2y=0
B(2,6)と直線x-2y=0との距離は、
|2-12|/ √1+4
=10/ √5
よって△OAB=1/2・3√5・10/ √5=15

同じ答えが導き出されました。

数Ⅱの授業としてはおそらくここまでだと思いますが、数Bで「ベクトル」を学ぶと、さらに発展的な公式を学習することになります。
もしかしたら先生は、生徒の結論をまとめた後で、さらにこういう解き方があるのだと説明するのかもしれません。
それもまた、アクティブ・ラーニング的です。

それは、ベクトルの内積を利用して三角形の面積を求める公式です。
ベクトルの→を文字の上に表記することはこのブログではできないので、以下はベクトルとして読んでください。
ベクトルの成分がOA=(a1,a2)、OB=(b1,b2)のとき、
△OAB=1/2|a1・b2-a2・b1|

この公式を利用すると、
△OAB
=1/2|6・6-3・2|
=1/2|30|
=15
こんなに簡単な式で、同じ答えが出ます。
3番目のこの解き方が異様に簡単であることは、衝撃的なことだと思います。
アクティブ・ラーニングの最後に登場するこの公式にわくわくする、数学好きな子もいるでしょう。
最も難しい理論にもとづく解き方が、最もシンプルであること。
数学は、かくも美しい。


授業の演出としてはなかなかのものだと、私は勝手に想像しているのですが、実際の効果はまた別です。
現に、目の前にいる生徒は、今のところこの形の授業についていけていないようです。
アクティブ・ラーニングは、全ての生徒にとって有効なものではないのだと、やはり感じます。
特に数Ⅱ「図形と方程式」は、中学時代に学習したやり方で地道に解けることを、高校数学の公式を使って解く場合が多いので、その階段を登れない子が多く出る単元です。
公式を学習した直後だけは、その公式を使えるのです。
しかし、時間をおいて問題演習をすると、高校の公式を覚えていないため、中学の解き方で解いてしまう子が多いのです。
アクティブ・ラーニングで本人たちに考えさせたら、なおさらそうなってしまうでしょう。
ここで、グループに1人くらいはいるのかもしれない高校数学についていけている子が、その単元にふさわしい解き方で解いて、それをグループ全員に教えたとして、それは、全体の授業で先生から教わるのと違うものなのでしょうか?
それはかろうじて対話的かもしれないけれど、本当に主体的なのでしょうか?
深い学びにつながるのでしょうか。
基本的なことも理解できずに終わる子をフォローする手立てはあるのでしょうか。
基礎学力が下がってしまわないでしょうか。

昔、ゆとり教育が強く批判されたのは、日本の子どもたちの学力の国際的な順位が下がったからでした。
そうした順位は、平均点で評価されます。
平均点は、国内で相対的に学力の低い子たちにも基礎学力がある場合に、高い数値を維持できます。
ひと握りの優秀な生徒たちがより楽しく深く学ぶだけのシステムでは、国際的な順位はまた下がるかもしれません。
そうしてまた、基礎学力だ計算力だ、と騒がれる時代が反動としてやって来るのでしょうか。
「100ます計算」や、生徒たちにとにかく基本問題を反復させ訓練する秋田県の校長の取り組みがもてはやされる、あの時代が再び訪れるのでしょうか。
同じことの繰り返しは避けたいのですが。

アクティブ・ラーニングを一方的に否定するつもりはありません。
面白い授業になる可能性を秘めています。
ただ、全ての子の学力を底上げできるかどうか・・・。

ともあれ、学校がそういう授業ならば、塾はどうするべきか?
その子が自ら発見するのであれ何であれ、理解すべき内容を理解をしてほしい。
そして、解答解説を見ないで、自力で問題を解けるようになってほしい。
まずは、学校のノートの空白を埋めなければ。
塾の仕事はさらに増えて、忙しい新学期となっています。





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