たまりば

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2018年09月13日

聴き取る力・読み取る力。


今朝、ラジオを聴いていたら、季節に関するひと口情報的なコーナーでこんな会話がなされました。
1人はアナウンサーで、用意された原稿を読んでいます。
アナウンサー「漢字で秋の桜と書いて、コスモス。そう読まれる方が多いかもしれません。本来はそのまま『あきざくら』と読み、これがコスモスの和名とされています。この漢字2文字でもコスモスという読み方が広まったのは、1977年の山口百恵さんのヒット曲『秋桜』がきっかけだと言われているんですね」
パーソナリティー「これね、いつも諸説ありをぶつぶついうのが好きなんですけど、そうじゃない説を今思っていて」
アナ「さだまさしさんが作詞作曲されたこの『秋桜』・・・」
パーソ「コスモスは昔からあるよ。私たちが小学生のときから、コスモスはコスモス。そう言ってたよ。さだまさしさんが逆にコスモスを秋桜と書くのを最初にやったみたいな説ありましたよね。それで聞いているから。これとはちょっと食い違う」

放送を聴いたときも、録音をこうして文字に起こして何回も読み直しても、このパーソナリティーが何にケチをつけて「逆に」と言っているのか、よくわからないのです。
この情報を整理すると、コスモスの和名は「あきざくら」。
「秋桜」と書いてコスモスと読ませた最初の人は、さだまさし。
アナウンサーが読んでいる原稿も、パーソナリティーが「諸説ありだ」と言っていることも、同じ内容に思えるのです。

このパーソナリティーは、何を言いたかったのでしょう?
何かを誤解したのでしょうか?
このパーソナリティーが?
それとも私が?

ラジオを長年、というより話芸を長年やっている人が、何かを聴き取り間違えたのではないか?
「コスモス」という花の名前を広めたのがさだまさしだという説をアナウンサーが読んだと誤解したのでしょうか?
その前までは人々はあの花を「あきざくら」と呼んでいたと聴き取り間違えて、いや、そんなことはない、と感じたのでしょうか。
あるいは、「コスモス」という西洋の名称にさだまさしが「秋桜」という漢字を選んで充てたのであって、「あきざくら」という和名など存在しない、と言っているのか?

そう悩みながらアナウンサーの原稿を読み直すと、そういう様ざまな解釈を招く隙がこの原稿にはあるのだと気づきます。

誤解の分岐点は、
「漢字で秋の桜と書いて、コスモス。そう読まれる方が多いかもしれません」
「この漢字2文字でも『コスモス』という読み方が広まったのは」
というところだと思います。
ここに違和感を抱く人が多い。
「コスモスと読まれる方が多いかもしれません」という言い方は、それは間違っていますよ、というニュアンスがあり、反論されやすい物言いなのでしょう。
「コスモスと呼ばれる方が多いかもしれません」
「『コスモス』という呼び名が広まったのは」
と聞き間違える可能性も高く、そうなると意味が全く変わってしまうのです。
自分が以前から思っていたことを否定されたように感じると、いや、それは諸説ありだ、自分の知っていることはこうだ、と主張したい気持ちにもなります。
アナウンサーは、パーソナリティーよりもずっと若いので、いや、それは同じことなんじゃないですかと反論はしませんでした。
1977年なんて生まれてもいないでしょうから、それ以前にあの花を「コスモス」と呼んだかどうか、「あきざくら」という和名が存在したかどうかなんて本人は知らないのですし。
ああ、そうかもしれませんね、と受け流して先に進んでいきました。
聞いている私は、取り残されて、朝からモヤモヤしてしまいました。

ラジオだから?
音声だから、情報が正確に伝わらないのだろうか?
文字情報のほうが、確実なのか?

しかし、そうとばかりも言えません。
先日、北海道で大きな地震があり、それに伴って大規模な停電が起こりました。
電力的には今も綱渡りの状態が続き、北海道では計画停電を実施する可能性もあるそうです。
そうなると、「原子力発電所を動かしていればこんなことにならなかったのだ」という意見を口にする人もいます。
北海道の泊原発は安全基準を満たしていないから、そもそも稼働できないそうですが、それはともかく。
気になるのは、「泊原発」を「柏原発」とネットで書いている人がいること。
「泊」と「柏」は文字としては似ています。
肉筆の場合は、たまたま書き間違える可能性はあります。
しかし、ネットで「柏原発」と打ち込むには、「かしわげんぱつ」と入力しないと無理です。
つまり、最初から読み間違えていないと、この書き間違いは起こらない。
そういう人たちにとって、北海道の原発は、その存在すら実は予備知識になく、むしろ原発といえば、新潟県の柏崎の原発のほうがまだしも名前の見覚えがあったのかもしれません。
その連想もあって「かしわ原発」になってしまっているのでしょうか。

そうした読み間違いや勘違いがなぜ訂正もされずその人の中でそのままになってしまうのか?
ネットで「柏原発」と書いている人は、テレビやラジオでニュースを確認したことが一度もないからでしょうか?
ネットでしか情報を得ていないのではないか?
音声を伴う情報に触れないので、読み間違いが永遠に訂正されないのです。
このように、文字情報だけの場合も、ある種の危うさがあります。

昔、ネットにアクセスできない人を「情報弱者」と呼びました。
今は、ネットでしか情報を得ない、新しい種類の情報弱者が生まれているのかもしれません。

社会問題としてこれを論じているのではなく、私が気になるのは、やはり身近な話です。
生徒は私の音声による解説をどこまで正確に聴き取ることができているのだろうか?
私はどこまで正確に情報を伝達できているだろうか?

また、生徒は、テキストに書いてある文字情報をどこまで正しく読めているのだろうか?

相変わらず、
「問題を読みましょう」
「問題文に全部書いてあるよ」
「設問を読みとばしたでしょう?大事な条件がここに書いてあるよ」
と生徒に繰り返す日々ですが、問題文を読み取れないだけでなく、私のそうした音声による助言も情報として正確に聴き取れない子がもしいるとしたら、一体どうしたらよいのだろう?

音声による情報も、文字による情報も、思っているよりも脆弱で、相手が誤解する可能性を常にはらんでいます。
自分が何か誤解していないか。
相手が何か誤解していないか。
常にその可能性を探りながら、さらに細心の注意をもって情報の伝達をしていかなければ。
改めてそう感じた秋の初めの朝でした。

北海道だけでなく、大雨や台風の被災地もまだ苦しい毎日と思います。
被害の様子を知る度、2011年を思い出します。
心よりお見舞い申し上げます。



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