たまりば

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2018年09月03日

勉強に向いている性格。



先日、ネット記事を眺めておりましたら、「性格の悪い子は成績も悪い」というタイトルの記事を見つけました。
こういう記事は閲覧数を稼ぐためにキャッチーで過激なタイトルをつけるもので、記事の内容はそんなにひどいものではないのだろうと一応読んだら、内容もそのままだったので驚きました。

大手の塾の経営者の発言をまとめた記事でした。
いわく、大人の指導に素直に従う子は伸びる。
大人の言うことを素直に聞けない子は、指導を無視して勝手なことをするので、間違った勉強をして、成績が上がらない。
すなわち、性格の悪い子は、成績が悪いのだ。

言っていることは、部分的にわからないこともないのです。
しかし、この言い方・・・。
「俺の言うことさえ聞いていればいいんだ。そうすれば、成績は上がる。成績が上がらないのは、俺の言うことを聞かないからだ」
そうした呪いの言葉に思えます。
これほど言葉はひどくないけれど、結局、自分も同じようなことを言ってしまっていないか、考え込んでしまいました。

私が以前に勤めていた集団指導塾は、私が勤務した頃には地域密着型の穏やかで小さな学習塾でした。
しかし、スパルタ式の教育で近隣に名を馳せ、教室をいくつも広げるほどに躍進していた時代があったと、昔から勤めている講師に聞いたことがあります。
宿題をやってこない子に対しては、男女関係なく、皆の前でビンタをしたそうです。
その恐怖と恥ずかしさを思えば、誰もが必死に宿題をやってくるようになります。
必死に宿題をやれば、成績が上がる。
成績が上がれば、保護者は満足。
塾にクレームをつけません。
「やり方が気に入らないなら、どうぞ退会してください。
うちの塾に通っていれば、しかし、成績は上がるんですよ」
そういう形で実績を上げた塾だったというのです。

大人の言うことを聞かない子どもは多いですが、そういう子ほど、恐怖と暴力で支配すれば簡単に従うのも事実です。
いえ、大人も、恐怖と暴力の支配から逃れられる人は少ないでしょう。
歴史がそれを証明しています。
だからこそ、私たちは、用心に用心を重ね、そうしたことが起こらないようにアンテナを張っていなければなりません。

「性格の悪い子は、成績が悪い」
この発言は、そうした暴力的支配が許されなくなった時代に、それでも子どもを従わせたい人の苦しまぎれの物言いに思えます。
ここでいう「性格が悪い」は、指導者にとって都合の悪い性格という意味に過ぎません。
「性格の良い子」というのは、指導者にとって都合の良い性格の子ということです。
言うことを聞かない子をどのように説得し、効果的な学習方法を伝えるか。
そこで勝負しないで、子どもの性格のせいにしてどうするんだろう・・・。


この夏、教室の入っているビルは大規模な外壁工事が行われました。
通路も教室のドアも塗り替えられてピカピカです。
4年前、今回ほどの規模ではないですが、ある土曜日、通路の床に防水加工の工事が行われたことがありました。
しかし、うちの塾は土曜日も営業しています。
業者の人と相談の結果、エレベーターからうちの教室の前まで養生をしてくれて、そこを通って教室に入れるようになりました。
私は保護者にメールで連絡しました。
「本日、うちの教室前の通路は塗装工事が行われております。エレベーターから教室の入口まで、養生してあるところを歩いてきてください」
これで大丈夫でしょう。

ところが、ここで不測の事態が発生しました。
そのメールの内容をお母様から伝えられた生徒は、外階段からやってきてしまったのです。
('_')

「エレベーターから教室入口まで、かなり歩きにくい状態になっているようだ」
というふうに情報を読んで、
「じゃあ、階段からなら、歩けるんじゃないか」
という発想になったのでしょう。

いやいやいや。
「エレベーターから教室入口までなら、歩ける。他に歩ける道はない」
というのが、私の伝えたかったことだったのですが。

というよりも、そのとき、私の中に階段という発想はなかったのです。

これは私の思考の癖なのかもしれません。
業者さんに、
「エレベーターから、この部屋の入口まで、通れるようにしますから」
と言われれば、
「なるほど、エレベーターからここまで、通れるのだな」
と、そのまま受け止めます。
「エレベーター」という言葉が思考のフックとなり、もうそれ以外の選択肢は念頭から消えます。
相手が通れるようにしてくれている、その通りにやっていれば、間違いはない。
はみ出す必要はない。

そして、勉強をする上で、この考え方は楽だし、合理的なんです。
解説を聞いて、あるいは解説を読んで、まずはその通りに再現する。
その再現の正確さが、理解力。
勉強する内容は、数千年の人類の叡智です。
私の単なる思いつきが簡単に凌駕するわけがありません。
現代科学の最善で最高の内容を教わっているのです。
言われた通りに再現できることが、まず必要。

とはいえ、
「だから学校の秀才の考えることはつまらないんだ」
と言われれば、それもその通りなのです。
言われたことを言われた通りにやるのではなく、思ってもいなかった方向から発想できる人は、かっこいいですよね。
少数のそういう人が文明を牽引し、そして、それを多くの秀才が再生して、世の中は進んでいくのだと思います。

ただ、階段を使うという発想は、そういうユニークで魅力的なものなのかというと、そうではないように思います。
それは、たとえ思いついても、総合的に判断して、自分で却下したほうがいいのです。
階段を使えるのなら、最初からそういう誘導をします。
階段の先は塗装直後で、一歩も先に進めなかったのです。

相手が口にしないことを自分が思いつくと、思いついた途端に「それこそが最善」という思考の飛躍を起こす子がいるのではないか。


また別の子の話ですが、英語の「受動態」をなかなか理解できない中学2年生がかつていました。
最初の授業では、正確に理解したのです。
基本的に頭の回転の速い子で、その場では器用に身につけることができました。
しかし、家で復習する習慣がなく、宿題は、次の塾の日の直前に慌ててやってくる子でした。
1週間経ってからでは、たいていのことは頭から抜け落ちています。
宿題は間違いが多く、そうなると混乱し、わかったはずのことがわからなくなっていくようでした。
1週間、また1週間、むしろ、どんどん「受動態」がわからなくなっていくのです。
とうとう、簡単な穴埋め問題も解けなくなってしまいました。

問題 次の空所に適切な語を補いなさい。
(1) その歌は若い人たちに愛されている。
 The song (  )(   )among young people.
(2) この本は10年前に書かれた。
 This book (  )(   )ten years ago.

こういった、ごく簡単な穴埋め問題です。
(1)の答えは、is loved
(2)の答えは、was written
be動詞と過去分詞を空所に埋めるだけの、受動態のテストとしては何のひねりもない基本問題でしたが、全問不正解でした。
そこに全て過去分詞とbyを入れていたのです。
(1)は、loved by
(2)は、written by  と。

「・・・・・・何で、by?」
「だって、受動態は、必ずbyを使うし」
と、その子は言いました。
「・・・・・・そんなふうに教わった?」
「自分で気がついたよ。頭いいー」
「受動態かどうかは、動詞の形で決まるんだよ」
「だって、byを使うでしょう?」
「使わない受動態は、たくさんあるよ」
「えー?なんでー?」

・・・・・教わったことを教わった通りに再生していれば、早いのになあ。
なんで、別のルールを自分で見つけてしまうのかなあ。

しかし、それは思考の癖のようなもので、
「なぜ?」
と問われても自分で説明できないし、
「そのような考え方はやめなさい」
と言われても、やめられるものでもないのでしょう。

何か1つの情報を与えられたときに、いくつもの選択肢を発想すること自体は、むしろ良いことです。
問題は、その選択肢のうち、妥当ではないものを消去する判断力をもつこと。
「自分の思いついたことだから、正しい」
というバイアスがかからない総合的な視野を持つこと。

でも、子どもに総合的な視野を求めても難しい。
総合的な視野に乏しいから、それを身につけるために勉強しているんです。

結局、「A」と言われたときに「B」の発想をし、それに沿って問題を解決しようとしてしまうのは思考の癖です。
性格が良いとか悪いとか、そういうことでなく、思考の癖。行動の癖。
良い勉強法を教わっても、聞き流して、実行しない。
これだけは覚えなさいと言われても、覚えない。
「A」の提案に対して、常に「B」という案を本人は思いつき、大人の言う通りにすることに意味を感じない。
ピントがズレている間は成績向上の邪魔になりますが、ピントが合えば大きな潜在能力かもしれません。

この子の性格にあった勉強のやり方は、どういうものだろう?
どう説明すれば「A」と教えたときに「B」と発想せず、「A」のまま伝えることができるのだろう?
そのように考えていくのが建設的だと思うんです。
「性格が悪い」と子どもをなじって自分の責任を回避するよりも。



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