たまりば

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2018年08月17日

英語学習と映画 ノッティングヒルの恋人


このお盆休みは、前半はゲリラ雷雨が凄まじく、大気不安定。
後半は晴れてはいるものの風が強く、結局、部屋で映画三昧の毎日でした。
新しい映画ではなく、手元にある古い映画のDVDを見直していました。
そうして、以前、とりつかれたように1つの映画を繰り返し見て、英語がそれ以前と比べて格段に聴き取りやすくなった頃のことを思い出していました。

私が長年教えているのは中高生に向けての受験英語で、つまりは英語の入試問題をどう攻略するかを指導するのが仕事です。
この仕事を始めた頃は今とは随分事情が違い、長文読解は論説文と同じくらい小説も多く、今よりも英文としては難解で、一方、リスニングは今よりずっと簡単でした。
しかし、時代は変わり、入試問題は難解な小説よりも平易で実用的な文章を速読して内容を理解することが主流となり、一方、リスニング問題はボリュームが増え難度も上がっていきました。

仕事を続けていくためには、自分の能力を時代に即してバージョンアップしていかねばなりません。
私はCD付きの単語集やNHKのラジオ講座などでリスニング学習を続けました。
それは十分に効果があり、生徒にも勧めています。
しかし、塾講師としての立場からは特に勧めないけれど、劇的にリスニング力の上がる方法もあります。

1つは、英語の歌詞の音楽。
ただ、私が良いと思うものを生徒に勧めても意味がありません。
生徒はそれを「音楽」として勧められたと誤解するからです。
だから、つきあいのいい生徒でも、1回試しに聴くくらいのことしかしないでしょう。
しかし、1回や2回聴いたところで効果はありません。
100回、200回のリピートで初めて結果が表れます。
好きでもない音楽をそんなに聴けないですよね。

自分が本当に好きで、早口なのに発音が明瞭な英語の歌詞の音楽。
これは、そうしたものに出会えたときに、初めて可能な学習方法です。
私の場合は、エミネムでした。
抜粋した4曲ほどを延々と繰り返し聴いていました。
これは好きじゃなければ不可能なことです。
エミネムの歌詞は過激で、青少年の健全な育成に貢献するとはとても思えないので、生徒に勧めたことはありません。
音楽的には、わかりやすくカッコいい。
それでも、趣味というものがありますから、受け付けない人もいるでしょう。

何百回でもリピートできる曲に出会った私は幸運だったのだと思います。
早口で、しかも発音がクリアで、音がシャキシャキと耳に心地良い英語。
それを自分の楽しみとして繰り返し聴くことができました。
やたらとエミネムを聴き込んだ数日後、いつものように勉強のために英語のニュースを聴いたときの衝撃。
時事英語が何だか間延びして聞こえるほど聴き取りやすくなっていたのです。
センター試験のリスニング問題も、こんなに簡単なら有難いと感じる明瞭な聞こえ方に変わりました。

それまでは、聴き取れるにしても、いわば、自分の脳の英語スイッチを入れて、さらに電圧を上げて、聴くぞ、聴くぞ、というふうにもっていかないと聴き取れなかった細部が楽に聴き取れたのです。
効果は絶大でした。
歌詞ではなく、意味でもなく、英語の音を音として聴き取れるようになったのは、エミネムからだったと思います。

そこで1段階リスニングレベルが上がったところで、さらにもう1段階上がったのは、映画を英語で見るようになったことが大きかったと思います。
英語字幕で、あるいは、字幕なしで映画を見るようになりました。
映画俳優の英語は、エミネムより聴き取りにくいです。
何しろ圧倒的な早口です。
ナチュラルな英語って、本当に早口ですよね。
しかも音が不明瞭です。
ほぼ発音していないような音があります。
前の単語の最後の音と、次の単語の最初の音がくっついています。
で、その単語の最初の音と2番目の音との間にポーズがある。
1つの単語の途中にむしろ音の隙間があるのです。
ニュース英語や原稿を読んでいる英語、ラジオ講座の英語のように、聴き取らせるための英語とは次元が違います。

そのときどきで集中して見た映画は色々ありましたが、一番繰り返し見たのは、『ノッティングヒルの恋人』。
これは、日本語対訳付きの脚本集も買いました。
脚本を読む。
字幕なしで映画を見る。
また脚本を読む。
字幕なしで映画を見る。
その繰り返しで、50回は見たと思います。
そうすると、それまで聴き取れなかった音が聴き取れるようになっていきました。

ここからは、ネタバレを含みますので、『ノッティングヒルの恋人』をこれから見ようと思っている人は読まないほうがいいです。
20年も前の映画なので、もうそんなのどうだっていいかもしれませんが。
そういえば、今年、ネタバレは絶対にダメということも含めて評判になっている日本映画がありますが、それに関して、あるラジオパーソナリティーが、
「『猿の惑星』のDVDのパッケージに自由の女神を描くくらいにダメなこと」
と言っていました。
うーん、それは絶対にダメだ。
絶対にダメなことの比喩として、私も使おう。

話がそれました。
『ノッティングヒルの恋人』の中でも好きなシーン。
主人公ウイリアムが、ハリウッド女優アナ・スコットに、新作映画についてインタビューをするはめになり、さらには共演者の少女にもインタビューするシーン。

ウイリアム  Is this your first film?
少女     No. It's my 22nd.
ウィリアム  Of course it is. Any favourites among the 22?
少女     Working with Leonardo.
ウィリアム  Da Vinci?
少女     Di Caprio.
ウィリアム  Of course. And is he your favourite Italian film director?

この、最後のセリフのItalian の「イ」の音が、最初は全く聴き取れなくて、
「このイを発音してないよね、ヒュー・グラント?」
と詰問したいくらいだったのですが、この「イ」は、その前のfavouriteの語尾とほとんど同時に発音されていて、1拍おいて「タ」が発音されるというからくりに気づいて愕然としました。
これが英語のリエゾン。
そんなの聴き取れるわけがない。
しかし、そのからくりがわかると、「イ」が聞こえるようになっていきました。
英語が聴き取れないというのはこういうことだという仕組みもわかってきました。
映画の脚本なんて、内容は中学英語です。
仮定法が使われていることを考えても、せいぜい高校1年の英語。
でも、易しい英語であるにも関わらず聴き取れないのは、日本人が予測している単語として音が聞こえてこないからです。
リエゾンと妙な隙間。
そのからくりと音に慣れることが必要です。

そうして、聴き取れない音を聴き取るようにしておよそ50回も同じ映画を見た後。
英検1級のリスニング問題がクリアに聴こえるのに愕然としました。
聴かせようと努力してくれている人の英語はこんなにも聴き取りやすい。
英語学習らしい英語学習も必要なのですが、回り道の娯楽が実は近道なこともあるのでしょう。

『ノッティングヒルの恋人』は、小道具や伏線の1つ1つが回収されていくのが気持ちよく楽しい映画です。
その分、セリフを聞き逃したり、セリフの意味がわからなかったりすると面白さが半減します。

例えば、ウィリアムが同居人スパイクと屋上で会話しているシーン。
 
スパイク  There's something wrong with the goggles.
ウィリアム No,they were prescription, so I could see all the fish properly.

このゴーグルに度が入っていることは、この後に活きてくるのですが、prescription という単語は他と比べて難度が高く、文字で見ても私は意味がわかりませんでした。 
英語圏の一般の人にもやや難しい単語なのか、魚がはっきり見えると説明して補強しているところに脚本の工夫を感じたりもします。

ハリウッド女優アナがウィリアムの家の屋上でセリフの練習をした後、ウィリアムに感想を求めるシーンも好きです。

アナ     What do you think?
ウィリアム Gripping. It's not Jane Austen, it's not Henry James, but it's gripping.

この映画の監督は、ジェーン・オースティン原作の映画で英国アカデミー賞を取った人で、そういう楽屋落ちもあるのかもしれません。

アナ     You think I should do Henry James instead?
ウィリアム I'm sure you'd be great in Henry James.
 
と、ワクワクした早口で言うウィリアム。かなり文学が好きな様子。
でも、アナの仕事を否定しません。

アナ     They would never say 'Inform the Pentagon that we need black star cover'.
ウィリアム And I think the book is the poorer for it.

核戦争から世界を守る近未来の将校役で映画に出演するアナは、文芸作品なら「ブラックスターカバーが必要だとペンタゴンに知らせて」なんて言わないわよねと自嘲するのですが、ウィリアムは、文芸作品のほうが、だからそれだけ内容が乏しいんだよとジョークで和ませます。
二人の気持ちが通う良いシーンですし、これが、その後、二人は別れたのに、アナはヘンリー・ジェームズ原作の映画に出演することを選ぶという展開につながっていきます。

主演の二人も良いですが、50回も見ると、もう主演なんかほとんど見ていなくて、セリフを聴いている他は、ちょい役の役者さんたちの芝居に見入っていました。
今回、久しぶりに見直しても、そうでした。
ウィリアムの友人たちや妹ではなく、もっともっと脇役。
例えば、ハリウッド女優アナの広報の人らしいのですが、日本人から見てほぼマネージャー的役割の、いかにも仕事が出来そうなアメリカ女性。
一応、カレンという役名があります。
ウィリアムが、アナ・スコットの新作映画に関するインタビューの場に紛れ込んでしまったときに、重要な役割を果たす女性です。
映画に対する予備知識もないのに何人もの俳優にインタビューし、消耗して部屋から出てきたウィリアムに、
Do you have a minute?
と軽快に問いかけ、ウィリアムが疲れ果てて「No」と答えると、眉を寄せるものの従わせていく芝居。
アナの意向に添い、おそらく二人の関係も汲み取っているドアの開け方と表情。

あるいは、ウィリアムの家の前に集まる記者たちからアナを庇って車に導くときの、ドアが開いたその一瞬の表情。

アナがヘンリー・ジェームズ原作の映画のロケをしているときにウィリアムに快活に声をかけるのもカレンでした。
カレンは、アナの近くでアナとウィリアムの恋を知っていた唯一の人物なのかもしれません。

もう1人好きな脇役さんは、最後のヤマ場、アナの記者会見の場面で、アナに2回同じ質問をする記者、ドミニク。
1回目の質問は、
How much longer are you staying in UK then?
2回目、同じ質問をするよう請われて、
How long are you intending to stay here in Britain?
と言っています。
これ、最初のうちは、Britainがほとんど「ブ」としか聴き取れなかったのですが、今は聞こえるなあと感慨深いです。
それはともかく、映画は、この2度目の質問へのアナの返答でようやく記者たちは何が起こったか気づいて大団円となります。
このドミニクは、記者の中でも最初にそれに気づいたという設定なのでしょう。
アナの返事を書き留めながら、もう微笑んでいます。
それから、自分の質問がそういうふうにおしゃれに使われたことが嬉しいのもあってか、相好を崩してウィリアムに近づいていきます。
その芝居が上手い。
ドミニクは、この後、うきうきと長文の署名記事を書くだろうね、と思ってしまいます。

事の次第に気づいた2人目の男性記者の表情。
3人目の女性記者の表情。
上品そうな人たちで、ゴシップ誌ではなく、権威ある映画雑誌の記者なのでしょうか。
このあたりはアップになっていますから、説得力のある芝居なのは当然なのですが、それ以外の記者たちも、それぞれ芝居をしています。
His name was Thacker.
と、ご親切にウィリアムに教えた記者の表情もいい。
ウィリアムをじっと見ているくせに、彼こそがMr Thacker だと気づいていない。
やはり、ウィリアムがかつて言った、
Today's newspapers will be lining tomorrow's waste bins.
今日の新聞は、明日にはゴミになる。
という言葉のほうが真実ではないかと思わせてくれる演技です。
だけど、まぬけな記者というのでもなく、アナとドミニクとのやりとりを窺う表情の厳しさと、事実を悟って、うわっと表情が緩む様子がいいんです。
ゴシップ誌の記者なんだろうなあ。
仕事に真剣なのは素敵なことだ。

ウィリアムの友人バーニーに突然キスされた若い女性記者は、その後もニコニコ笑ってバーニーに話しかけていましたから、良いサイドストーリーを聴き取って独自の記事にするかもしれません。
お手柄だね。

そんなことを色々考えるのも、同じ映画を50回も見たからこそ。

『ノッティングヒルの恋人』を見ろという話ではなく、こんなふうに、メインストーリーや主役の芝居に興味がなくなって脇役ばかりに目がいくくらいに繰り返し同じ映画を見ると、英語が聞き取れるようになりますよ、という話。
私の『ノッティングヒルの恋人』は、他の人にとっては全く別の映画だろうと思います。

短大の英文科だと思いますが、半年かけて『ノッティングヒルの恋人』の映像を繰り返し見て音声を聴いて脚本を読み込む授業を受けた人の感想をネットで読んだこともあります。
試験は、脚本をほぼ暗記して受けたそうで、懐かしい思い出になっているようです。
確かに、授業の素材に選ぶ先生がいるのも頷けます。
SF大作やアクション映画よりも、セリフの駆け引きが面白い映画のほうが英語学習に向いているでしょう。

お盆休みのせいか、ちょっと普段と違う内容になってしまいました。

いやあ、映画って本当にいいものですね。(^-^;



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