たまりば

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2018年07月06日

人称代名詞はなぜ覚えにくいのか。


英語の人称代名詞とは、I  my  me  mine というお馴染みのもののことです。
厳密に言えば、四番目の形mineは、所有代名詞と呼ばれるもので、人称代名詞とは分けて取り扱うのですが、初学者にとっては正直そんなのどうでもいい。
英語を学び始めて半年以内には、この人称代名詞の学習が始まります。
そして、英語学習の最初のつまずきがこの人称代名詞である子は多いです。

集団指導塾で中学生に英語を教えていたときは、
「これは暗記しよう。テストに出るよ」
と言ったところで、暗記してくるのは一部の秀才だけですから、授業時間内で暗記をしました。
黒板に人称代名詞の一覧表を描き、皆で一度唱和します。
次に「I」だけ消して、また全員で唱和します。
次に「my」を消して、また全員で唱和します。
これを延々と続けて、最後のtheirsが消える頃には、完全に暗唱している子が大半でした。

しかし、それだけではすぐに忘れてしまいますので、次の授業でも、同じことを繰り返します。
一度に「I  my」まで消してしまうなど、消すスピードは速くなります。

その次の授業では、「I  my  me  mine」の全てを1度に消します。
それでも、大半の子は、暗唱できました。
そうして、順番通りの暗唱はできるようなっていきます。
暗記ものが苦手な子の中には、暗記のやり方を知らないだけの子もいます。
こうした授業は、ものを覚えるというのはこういうふうにやるのだよというデモンストレーションにもなり、賢い子は、同じやり方を他の科目でも活用し、暗記が得意になっていきました。

通常、それで暗記は大丈夫なのですが、このペースについていくことのできない子もいました。
多くの子は、機会を作って無理やり覚えさせれば覚えます。
しかし、他の子と同じペースでは覚えられない子も存在しました。
途中からは口を開いて何か言っているふりでごまかしていました。
算数の九九を覚えるのにとても苦労する子がいるように、こうした機械的な暗記が苦手で、他の子と同じペースでは覚えられない子は存在します。

その場で覚えられなかったのなら、家に帰って自分で練習すればカバーできます。
しかし、そうした子の多くは、学校で英語学習を始める頃には、もう勉強に対して諦めの気持ちが生まれています。
やってもどうせできないと思うのか、努力しません。
「自分はもの覚えが悪いから、他人の倍の努力をしてそれを補う」
そういう気持ちに本人がなっていれば大丈夫なのですが、思春期の自我でこの境地に至るのは難しいのかもしれません。
そんなことを認められる人は、強靭な精神の持ち主で、実は自分に自信のある人なのでしょう。
努力してきた自分に自信があるから、そういうことを認められるのだと思います。
普通は、覚えられない自分を認められず、他人の倍の努力でそれを補うことなどできず、諦めてしまいます。

小学校の高学年から中学生のあたりですと、反抗期に入っている子もいて、これも学習の障壁になることがあります。
どうせ暗記しなければならないものなら皆と一緒にちゃちゃっと覚えられればラッキーなはずです。
しかし、そう考えて積極的に暗唱に参加するのは、もう精神的に成長している子たちです。
反抗期真っ盛りで、機会があれば周囲の大人全てに反抗してしまう子は、言われた通りに大きな声で暗唱するなど幼稚なことに思うのか、暗唱に参加しないことがあります。

つまらない反抗心から暗記の機会を逸し、中3になっても高校生になっても人称代名詞が今一つわからない、何となく苦手という子。
そうした子に個別指導で何人か遭遇しました。
能力的に暗記が難しいタイプではありませんでした。
私と出会ったときにはもう成長していましたので、
「アホらしい。覚えるべきことは、覚えなければどうしようもないよ。ほら、やるよ」
とホワイトボードに一覧表を書いて、暗唱しながら1つずつ消す作業をすると、そのときにはよく覚えてくれました。
いつになってもいいから、どうしても覚えておかなければならないことは曖昧にせずに覚えるしかありません。
算数の九九も。
人称代名詞一覧表も。

個別指導の場合は、他の人と比べてもの覚えがいいとか悪いとか、授業についていけないとか、そういうことはありません。
本人のペースで、何度でも覚えるまで練習できます。
「センセイ、待って。まだ、そこを消さないで」
「え?マジで?」
本当に覚えられないんだなあと驚くことは確かにあります。
he の行にさしかかったあたりから、頭を抱えてひどく苦しそうな子もいます。
しかし、最終的に人称代名詞を覚えきれずに終わってしまう子はいません。

主格 所有格 目的格 所有代名詞
I      my       me      mine
you  your     you     yours
he    his       him     his
she  her       her      hers
it     its        it          -

we   our       us       ours
you  your     you     your
they their     them   theirs

「主格」「所有格」といった文法用語は難しいので、一応用語として教えますが、その下に「~が」の形、「~の」の形、「~を、~に」の形、「~のもの」の形と説明も加えます。
大抵の子は、それで用法も理解します。

heの行とsheの行を見比べるとわかるのですが、人称代名詞は規則的に変化するものではないので、丸暗記するしかありません。
なぜ、heの行は、所有格と所有代名詞が同じ形で、sheの行は、所有格と目的格が同じ形なのか、理由を考えてもわかりません。
そういうのは、英語学とか言語学的には面白い題材だと思いますが、それを知ったところで暗記の助けになるわけではなさそうです。

言語は長年の間に変遷を繰り返しています。
英語のルールは言語としてかなりシンプルなほうですが、それでも不規則な部分はあります。
しかし、英語が嫌いな子は、そういうところが英語は嫌だと言います。
英語は難しくて嫌だ、覚えにくくて嫌だと言います。

いや、日本語のほうが難しいですよ。
日本語に比べたら、英語はシンプルなほうです。
そう言っても納得しない子には、こんな話をします。

日本語では、「1本」「2本」「3本」のそれぞれ、「本」の発音が違うんだけど、何で?
何で同じ「本」が「ポン」だったり「ホン」だったり「ボン」だったりするの?
しかも、物を数えるときの単位は、「本」だけじゃないよね?
「枚」とか「個」とか「人」とか「匹」とか「頭」とか、いちいち数詞が違うのは何で?
何でそんなものを全部覚えないといけないの?
日本語、おかしくない?
難し過ぎない?
私が外国人なら、日本語は覚えられない。
無理だよ、こんな言語。

素直は子は頷き、そうでもない子は、
「いや、日本語のほうが簡単だね」
と特に根拠や実例はないままさらに言い募りますが、とりあえず、それを中休みにして、人称代名詞の暗唱に向けてまた努力できたりします。

もっと言えば、日本人の若い世代には「1本」「2本」「3本」の読み分けができない子が増えてきているとか。
そのうちに、全て「いちほん」「にほん」「さんほん」でも許容されるようになるのかもしれません。
そのように使う人が多くなれば、それが正しくなるのが言語です。
「2桁」を「ふたけた」と読める子どもはとうに少なくなっていますし。
「にけた」は「みけた」と似ていてまぎらわしいから、「ふたけた」と読むほうが伝わりやすいということがピンとこないのだと思います。
ついでに言えば、「2乗」は「じじょう」ではなく「にじょう」と読むのが正しいですが、それは若い世代には逆にかなり普及してきているように感じます。
「2」をわざわざ「じ」と読む感覚が若い子にはないからでしょうか。
つまりは、若い子にとっては「2」は全て「に」で、他の読み方を覚える気はないのかもしれません。

話が逸れました。
さて、人称代名詞の一覧表を覚えるところまでは最終的には誰でも到達できます。
こうした機械的な暗記よりも、実際の例文に即して覚えていったほうが良いという考えもあるのですが、そういう英語教育を受けた子が、一人称複数のusを知らないということがたまにあります。
himだけ知らない、theirを知らないといった不可解なことも起こります。
いったん一覧表で網羅しないと、頭の中を整理できない子はいます。
まずは機械的な暗記。
それから一覧表の活用です。

活用。
一覧表を暗記しても、実際には人称代名詞を使い分けられない子がいます。
どうしてなのでしょうか?

問題 Tom paints pictures very well. I like (  ) picturs.
空所に入る適切な語は以下のどれか。
1. her  2.his  3.him  4.hers

勿論、答えは2ですが、この問題は中学生にとっては案外難しいのか、正答率はそれほど高くありません。
1としてしまう誤答もありますが、気になるのは、3という誤答が多いこと。

あるいは、このような問題を間違える子もいます。

問題 (  ) mother speaks English.
1.I  2.My  3.Me  4.Mine

この答えを1と誤答してしまう子がいます。

こういうミスは、どこから生じているのでしょうか。
どうも、空所の位置だけで判断しているようなのです。

文の先頭なら主格。
文の後半なら目的格。
そのような位置把握だけで解いているのではないでしょうか?
herのときは、所有格と目的格が同じなので、目的格のつもりでherを選んだのに所有格として正解した経験などがあると、さらに混乱が起こるようです。
自分は同じように判断しているのに、正解のときと不正解のときがある。
問題がおかしいんじゃないか?
自我の強い主観的な子は、そんなふうに思うこともあるようです。

文の主語として使うのが主格。「~が」の形。
動詞の後ろに置くのが目的格。「~に、~を」の形。
ただし、名詞の前は、所有格。「誰々の」の形。
動詞の後ろであることよりも、文頭かどうかよりも、これは優先されること。
そう何度も説明し、この種類の問題を沢山解くと、やっと定着していきます。
つまりは、中1の段階で、少なくとも「名詞とは何か」「動詞とは何か」くらいは理解していないと、人称代名詞に関する問題は解けないのです。
文法的な把握ができず、漠然と( )の位置だけから解こうとしても、正答には至らないのです。

所有格と目的格って何が違うの?
そう質問する子もいます。
かなりモヤモヤしてしまう様子です。
しかし、S・V・O・C・Mという文の要素や各品詞のことを詳細に説明する時期ではありません。
「誰々の」の形が所有格。
「誰々を」「誰々に」の形が目的格。
日本語は、「を」「に」「の」といった助詞をつけることで使い分けるけれど、英語は単語そのものが違う形になるんだね。
位置だけでなく意味からも考えれば区別できることなので、今はざっくり理解しておこう。

そう言っても、納得しない子もいます。
思うに、彼らは、なぜなのかを知りたいのではないのかもしれません。
英語に腹を立てているのです。
「誰々に」の形と「誰々の」の形とが異なることが不愉快なのでしょう。
そんなことをいちいち区別し、覚えなければならないことが不愉快なのだと思います。
せっかく位置で簡単に見分けてやろうと思ったのに、それではダメだと言われる。
もっと簡単であるべきなのに。
英語なんかクソだな。
こうしたわがままな感覚で問題を解いているため、ある程度は難しくて当然のことをひどく単純な形で把握しようとし、それほど単純ではないとわかると腹を立ててしまいます。

難しいことを自分は覚えきれないかもしれない。
そうした不安もその根底にはあるのだと思います。

英語は日本語よりははるかにシンプル。
でも、一国の言語なのだから、ある程度複雑であるのは当たり前。
英語に限らず全てのことはある程度複雑で、その複雑なことを理解していくのが勉強。
そして、大丈夫、理解できる。
これは、理解できることだよ。
英語で挫折している人へは、ものごとをあまりに単純にとらえることへの戒めとともに、そうした励ましが必要なのだと思います。 



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