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2018年05月31日

中学生は、英語のどこでつまずくのか。

中学生は、英語のどこでつまずくのか。

本日は中学生の英語の話を。
英語が苦手という子の中には、単に覚えるのが苦手でなかなか覚えられないけれど、授業はまあまあわかるという、普通に英語が苦手な子も多いです。
しかし、なかには、大人が想像もしないようなところでつまずいて、その先に進めない子もいます。

まず、単語のスペルのルールが理解できなくておろおろしている子。
パソコンを扱える子は、パソコン方式のローマ字の打ち込みはできますから、ヘボン式とは多少異なるとはいえ、英文字と音とのつながりを理解しています。
ところが、英単語のスペルは、ローマ字とはかなり違います。
そこで混乱する子がいます。

英単語のスペルはどんなルールがあるのだろう。
なぜ、先生は、そのルールを教えてくれないのだろう。
教える必要もないくらいの常識なのだろうか。
自分だけが理解できないのだろうか。

かなり頭の良い子が、こういう混乱を起こすことがあります。
周囲は、その子の頭の良さを知っていますので、まさかそんなことが原因で英語不振に陥っているとは思ってもいません。
本人は勉強に関してプライドが高く、自分のそういう悩みを相談できません。
英語に関するもやもやが晴れず、どんどん英語が苦手になっていきます。

場当たり的な勉強や丸暗記の勉強は嫌いで、理屈が勝ってしまうタイプの子は、英単語のスペルにもルールを発見しようとし、そして発見できずに挫折してしまうのです。
他の科目と比べて英語だけ成績が悪く、これはちょっとおかしいという状態の子に、以下のことを説明するだけで、はっと覚醒し、その後、英語も他の科目と同じように理解することがあります。
英単語のスペルは、本当はルールがあるけれど、とても複雑だし、例外が物凄く多いから、今は、単語1つ1つのスペルを覚えていくといいよ。
日本語の漢字を覚えるようなものだよ。
そう助言するだけで、今までの霧が全て晴れ、英語がわかるようになっていくことがあります。


今は文法を全面に出して英語を教えるのは悪いことであるかのような風潮がありますが、理屈が好きな子には、文法で英語を教えたほうが効果があります。
文法用語を使わず何の文法事項を扱っているのか伏せた状態で、基本例文というのを暗記させられ、その文の意味を覚えていく学習を中1・中2とやっていくと、英語に対してモヤモヤしてしまう子は多いです。
そういう子に、例えば中3の「現在完了」などをゴリゴリの文法で解説するとバキッと開眼することがあります。

I have been in this town for two years.

➁She has kown the man since he was a child.

➂He has read the book three times.

➃I have already finished my homework.

問題 上の4つの文のうち、同じ用例のものはどれとどれか。

答えは①と②です。
文法的にこれをとらえる場合、使われている語句に着目します。
➀はfor two years 、➁はsince he was a child と、期間を表す語句が使われています。
いずれも、現在完了の「継続」の用法であることを示す語句です。
ちなみに、➂はthree times という回数表現があるので、現在完了の「経験」の用法。 
➃はalreadyが使われているので、「完了」の用法です。

文法的なアクセスができない子は、4つの文をいちいち和訳して解きます。
➀私は2年間この町に住んでいます。
➁彼女は彼が子どもの頃から彼を知っています。
➂彼はその本を3回読んだことがあります。
➃私はすでに宿題を終えてしまいました。

この日本語訳から、同じ用法のものを選ぶのです。
「完了」「継続」「経験」「結果」という現在完了の4つの用法という観点はなく、日本語の意味から、同じ意味あいのものを選ぶのです。

・・・・何てまだるっこしい。(-_-)
訳し方をちょっと失敗したら、終わりです。
「同じ意味あい」ってどういうことなのか、かなり曖昧ですし。
「完了」「継続」「経験」「結果」という、文法事項を正確に指し示すキーワードと、それに付随する語句をセットで覚えればはるかに楽ですし、正確に分析できます。

理屈が好きな子は、文法で解く解き方を教えると覚醒し、
「わかりやすい」
「初めて英語がわかる」
と感動します。
成績も急上昇します。

他の科目もそうですが、英語の問題には、出題者の意図があります。
何の文法事項を問う問題なのか、その出題意図を見抜けば、答えは楽に出せます。
そうした出題意図を見抜くためにも文法からの分析は有効です。
上の問題でいえば、ああ、現在完了の用法の識別だなと把握し、サクサク解けば短時間で終わります。
しかし、何の問題なのか、何を問われているのかわからないまま、漠然と日本語に直し、何となくこれが答えなんじゃないかと判断して解いている子もいます。
まさか、そんな、バカな。
そんなことがわからないはずがない。
大人はそう思うのですが、文法が苦手ということは、そういうことです。
英語学習が常に曖昧な状態で進み、英語の問題をどう解いていいかわからず、ぼんやり解いている子は、案外どこにでもいます。

文法を理解することは、文法問題を解くのに有利なだけではありません。
英文をいちいち日本語に訳さずに読んでいく癖がつきます。
英文を英文のまま読んでいくというのはどういうことなのか、言葉で説明してもわからない子は多いのです。
文法問題のような短文を訳さないで読んでいく習慣が身につくと、長文を読んでいく際にも、訳せと言われない限りはいちいち日本語にしない習慣がついていきます。
日本語に訳さず、しかし意味のまとまりごとに英文を区切って読んでいくには、文法知識が必要です。

文法は教えない。
だが、意味のまとまりに区切って英語のまま理解しろ。
そんな要求をされた場合、そもそも意味のまとまりに区切る、その区切り方がわかりませんよと生徒が不満を持つのは当たり前のことだと思います。
文法がわからないと、英文の構造が把握できないので、どこで意味が区切れるのかもわからないのです。
文法を知れば、意味のまとまりは自明の理です。
そんなの、S、V、O、C、Mのことなんですから。


ところが、文法を教えても英語が得意にならない子も確かに存在します。
「現在完了の見分けがつかない」
というので、
➀完了の用法
「すでに~してしまった」「ちょうど~したところだ」の意味。
already,yet,justなどを伴うことが多い。

➁経験の用法
「~したことがある」の意味。
once,twice,three time,many times,beforeなどの語句を伴うことが多い。

といった文法事項を説明すると、そんなに覚えることが多いのは嫌だ、もっと簡単に分類できる方法を訊いたのに、と不満を感じる子もいます。
文法用語に対する拒否感が強いのです。
覚えることが多いのは苦痛を感じる。
理屈が好きじゃない。
もっと簡単で、もっと楽しいことがやりたい。
そういう要求の強い子は、文法をいくら説明しても、覚えてくれませんし、活用してくれません。
何を教わっても、1文1文を日本語に訳して意味を取ってからでないと解かないのです。
出題者の意図を汲み取りなさいといっても、そういう視点を持ったことがない様子で、ぼんやりしています。
何の文法事項を問われているのか考えてみてと問いかけても、そんなのわからない、と言います。
全てモヤモヤし、ぼんやりしている中で、意味だけを頼りに解いていこうとし、やがて英文の意味を読み取れなくなり、英語に挫折していきます。

修飾語句が多くなり日本語に訳すのが難しくなる中2の「不定詞」あたりから、英語がわからなくなっていく子が多いのはそのためでしょう。
英文の構造が複雑になればなるほど、意味だけで英文を理解していくのは難しくなります。


文法重視が悪いことのようになってしまうと、文法からアプローチすれば高度な英文も理解できるタイプの子から、その機会を奪うことになります。
文法が理解できる子には、今まで通り文法を教えるのが最善です。
勿論、進学校はそれを承知していますので、「過度な文法重視を排し」と言われようがどうしようが、文法をきちんと教えていくと思います。

問題は、文法に拒否反応が強く、文法をいくら教えても文法を活用しないタイプの子に、どのように英語を教えるか、です。
教えても活用しないのですから、それこそ「過度の文法重視を排し」ていかなければなりません。
文法を教えていないふりで、文法を教える。
文法を教えていないふりで、英文の構造を教える。
そうした面倒くさい作業が必要となります。
当然、英語学習の時間を今までより多くし、触れる英文の数を増やさないといけませんし、文法で骨組みを補強できない分だけ語彙力を鍛える必要が生じます。

それでも、相手によって教え方を変えないと、その子は伸びません。
その見極めが重要です。




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