たまりば

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2017年12月06日

受動態と日本語のリーディングスキルテスト。

新聞やネットでご覧になった方も多いかと思いますが、先日結果の一部が発表された、中高生を対象に行われたリーディングスキルテストは、興味深いものでした。
国立情報学研究所の研究チームが、2016年4月から2017年7月にかけて、全国の中高生約2万4000人を対象に行ったテストです。
実際の教科書に載っている文章を生徒が正しく読解できるのかどうかを試すテストでした。

例えば、こんな問題。

仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

オセアニアに広がっているのは( )である。
①ヒンドゥー教
②キリスト教
③イスラム教
④仏教

正解②
正答率 中学生62% 高校生72%

ほお。結構読解できているじゃないですか。
ところが、次の問題になるとガクンと正答率が下がっています。

問題
メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である。

この問題文を読んで、メジャー選手の出身国内訳の正しい円グラフを4つの中から選ぶ問題でした。
ドミニカ共和国が約9.8%のグラフが正解です。
正答率 中学生12% 高校生28%

これは、しかし、読解というより数学力かもしれません。
「割合」が苦手な中学生は本当に多いですから。
0.28×0.35=0.098 
の式をすぐに立て、計算して正答を導く子は少ないと思います。
割合×割合 という式は、私立中学を受験する小学生でも立てられない子は多いです。
これは大きな課題です。

でも、今回、私が驚いたのは、この問題ではありませんでした。
次の問題を読んでください。

問題 Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

Alexandraの愛称は( )である。
①Alex
②Alexander
③男性
④女性

正答①
正答率 中学生38% 高校生65%

あるいは、こんな問題も。

問題 
幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。

上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。異なるか。
1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

正答 異なる。
正答率 中学生57% 高校生71%

公開されている問題がまだ限られているので、正確な分析のはずもありませんが、これだけで判断すると、中学生はどうも「受け身」で語られることに弱いのでしょうか。

どちらがどちらと「呼ばれる」のか、わからない。
どちらがどちらに「命じられた」のか、わからない。
受動と能動の区別がつかない。
もしかしたら、そういう子が多いのではないか?

英語の「受動態」は中学2年の最後、あるいは中3の最初で学ぶ単元です。
解説すると、どの子も、大体は理解したような顔をします。
しかし、その定着はかなり差がつく単元でもあります。

問題 次の文を受動態に直しなさい。
Mr.Nakata wrote this letter.

「中田さんはこの手紙を書いた」という文です。
受動態は、
This letter was written by Mr.Nakata.
「この手紙は、中田さんによって書かれた」となります。

しかし、これを、
Mr.Nakata was written by this letter.
と書いてしまう子は、一定の割合で存在します。
「いやいや。意味を変えないで書き直そう。その英語だと、中田さんはこの手紙によって書かれたという意味になって、気味わるいでしょう?」
と説明しても、そういう子は、ポカンとしています。
「・・・え?どういうことですか?」
「だから、目的語と主語を入れ替えないと、同じ意味にならないでしょう?」
「・・・え?この単語とこの単語を入れ替えればいいんですか?」
「・・・・」
入れ替えればいいという言い方は、単に操作上の確認をしているだけのように聞こえるのです。
自分の誤答の何が問題なのか、本質がわかっているのかなあと不安になることがあります。

問題の指示が不親切なのだという意見もあるかもしれません。
「次の文を、文意を変えずに受動態に直しなさい」
とすべきである、と。
でも、わかる子は、わかるのです。
出来上がった文が意味をなさない奇妙なものになるのを避けたい子は、正解します。
なぜ、それを考えず、ただ機械的に受動態にする子がいるのだろう。
英語の学習をしていて、文の意味というものを考えているのだろうか?
言われた通りに単語を並べているだけなのか?
そういう疑問を感じてしまいます。

しかし、今回、リーディングスキルテストの問題の一部を見て、ああ、能動と受動の意味の違いを把握できない子が相当数いるのだと気づいて、目から鱗が落ちました。
じゃあ、奇妙な受動態を機械的に作っても仕方ないかもしれません。
意味が変わっていることに本人は気づかないのですから。
能動も受動も、その子にとっては同じ意味で、おそらく、能動の意味しか把握できないのだと思うのです。

母国語で区別がついていないものを、英語で理解できるわけがない。
だから困難が生じる。
そういうことなのかもしれせん。

ただ、それならばなおさら、英語で受動態をしっかり学習することで、日本語にも受動の文があることを理解できる可能性はあるのだとも思うのです。
日本語の文法を学習する意味も理解できるかもしれません。

国語で文法を学習していて「そんなの知らなくても日本語は話せるし」と言う中学生は多いです。
そういう子の多くは、日本語の文の主語・述語すら指摘できません。
そのことは、英作文の能力に影響しています。
「クラスの多くの男の子たちがやっているスポーツは野球です」
という日本語を英文に直すとき、
Class から書きだそうとし、その後が全く続かず万事休すという子に、私は問いかけます。
「日本語で考えてみよう。この文の主語は?」
「え?あ?男の子ですか?」
「違います。主語は『スポーツは』だよ」
「ええっ」

日本語で主語が把握できると、英作文は易しいのです。
上の文の書き出しは、The sport です。
逆に、国語の文法がわかっていないと、構造の複雑な英文は上手く作れないんです。


日本語の主語の見つけ方。
まず、日本語の述語は、倒置法などの例外を除いて文末にあります。
だから、述語はすぐに見つかります。
そこから主語を判断します。
日本語の文型は、主に、
「何がどうする」(述語に動詞を使った文)
「何がどんなだ」(形容詞・形容動詞を使った文)
「何が何だ」(名詞・代名詞を使った文)
の3通り。
その文型から判断すれば、「何が」にあたる主語は見つかります。
主語を見つけたら、英文は、その主語から始まります。
あとは冠詞や前置修飾の修飾語の存在を判断して書きだしていくだけです。

日本語の文法の知識が、英語の文法の理解を助ける。
そして、英語の文法の理解が進むと、日本語の文法がわかってくる。
その相乗効果はあると思うのです。

ただ、上のようなことを、
「理屈が通っていてわかりやすい。スカッとする。やっと英語がわかった」
と感じてくれて、英語がグングンできるようになる子も多い一方、上のような話をしている限り、その先一歩も英語ができるようにならない子もいます。
文法に対して信じられないほどの拒否反応のある子たちは、上のような話が大嫌いで、頭に残らないようなのです。
文法なんかわからなくても、英語ができるようになる方法はきっとあるはず。
そう考え、彷徨い始めます。

上のような「ゴリゴリ、ガチガチの文法」を、文法なんか教えていない顔で教える方法を考えるべきなのか。
理屈の嫌いな子に向けて。
文法からアプローチできれば、英語は簡単なんだけどなあ。
(*^^)v




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