たまりば

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2012年05月30日

子どもの頃の豊かな体験



先日、ラジオを聴いていたら、若い頃、子育てしながら忙しく働いていた女性からの投書に、こんなのがありました。

毎日忙しくて、それでも、夜には、子どもたちに絵本を読んで聞かせるのですが、子どもと一緒に横になっていると、睡魔が襲ってくる。
絵本を読みながら、夢うつつになり、絵本の中に現実が入り込んでくる。
気がつくと、半分眠りながら、
「ぐりと ぐらは、 おおきな かごをもって、 ぎんこうに、おかねを おろしに いきました」
と読んでいたりしたそうです。
子どもたちは、絵本の暴走が始まるのを、とても楽しみにしていたらしいですが。

かの、のねずみ2人が、銀行のATMの前で、顔を見合わせている姿が浮かびます。

私の知人は、やはり子どもに本を読み聞かせる習慣を持っていましたが、これは別に眠くなったわけではなく、いつも同じ本で退屈なので、
「昔むかし、あるところに、ハリーとポッターがおりました。ハリーは、山へ柴刈りに、ポッターは、魔法学校へ行きました」
と適当なことばかり読んで、子どもに叱られていたらしいです。

私は数学と英語を教えていますが、どちらの科目にしろ、そもそも国語力の弱い子については、「今はこれが限界か」と感じることがないわけではありません。
数学は、単純な計算問題ならば関係ないものの、応用問題は、当たり前ですが、全て日本語で書いてあります。
見ていると、その読み取りにかなり苦労している子は存在します。

例えば、こんな問題。

ある2ケタの正の整数があります。その数の、一の位の数は、十の位の数より5だけ大きく、一の位と十の位の数字を入れ替えてできる数は、もとの数の2倍より4だけ小さくなります。
ある数をもとめなさい。

または、こんな問題。

1個130円のコップがあります。このコップを1個運ぶと5円もらえる仕事がありますが、もし、運んでいる途中でコップを割ってしまうと、運び賃がもらえないどころが、逆に、コップの代金を弁償しなければなりません。
600個のコップを運んで、1920円もらいました。途中で何個割ってしまいましたか。

こんな問題になりますと、大人は、読んでいて、
「なんで保険をかけていないんだ?」
などと、余計なことまで考えてしまうくらい内容がわかりますけれど、子どもは、何のことやら、何回読んでもさっぱりわかりません、ということがあります。

どう解くのかについては、若干、テクニックが必要ですが、問題文に書いてあることがどういうことであるか、一読で理解できるほうが、有利です。
どう解くか以前に、何が書いてあるかで悩むのでは、正解までかなり距離があります。

英語になりますと、普段の文法練習ならば、短文ですから、まだ何とかなるとして、結局、入試問題の大半は長文読解ですから、読み取れなければどうにもなりません。
日本語も読み取れない子が、英語の長文を読み取れるわけがない。

国語力は大切です。

子どもの頃の読み聞かせ、具体的なデータは知りませんけれども、やらないよりは、やったほうが、いいのかもしれません。
子どもの頃に、心と頭が動いたたくさんの幸せな経験のある子が、知力は高くなるでしょう。
親の作為だけが目立つと、知育玩具でも能力開発でも何でも、10歳を過ぎたら全部消えていくだろうなあと感じ、将来性は特に感じないのですが。

以前も書きましたが、数学が飛躍的に伸びている男子生徒がいます。
その子も、国語が抜群にできます。
1つには、それが伸びの原因だろうと感じます。

最近知った、もう1つの理由。
夜、教室の窓を開けて授業をしていましたら、網戸に、枯葉色の小さな虫が止まっていました。
「虫だ」
と、その子が言うので、虫が嫌なのかと思い、
「大丈夫だよ、網戸の外だから」
と答えますと、その子は、立ち上がり、網戸を開けて、外からその虫を観察し、名称を正確に言いました。
そのとき、私は、何度も訊き返したのですが、うーん、名前を、忘れてしまった。
メモしておくべきだったー。
聞いたことのない種類の虫で、カタカナの音だけ確認できても、あえて漢字で書くならどう書くのか、さっぱりわからなかったものですから。
それはともかく、その子が、虫の名前にそんなに詳しいというのは初耳で、私がびっくりしていますと、さらに他にも虫について饒舌に語りました。
虫を女子に押し付けてからかう嫌な奴をへこませたエピソード。
今でも、ランニングの途中で、カブトムシを確認にいくこと。
部活が大好きなスポーツ少年と思っていたら、こんな才能を隠していたか。
昆虫採集は、五感と身体をフルに使う知的活動。
自然の中で何時間も何かを一心に見つめ、また、本で調べる。
その繰り返し。
何年も何年も、1つのことを好きであり続け、積み重ねていく経験。
こういう経験を持っている子は、それは、飛躍しますよね。
ああ、そういうことか、とようやく腑に落ちました。

あ。

こんなこと勝手に書いたら、本人に怒られるか。

(@_@;)



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    Posted by セギ at 20:25│Comments(4)講師日記
    この記事へのコメント
    網戸にとまっていたのは、『アオクサカメムシ』だそうです。

    怒るどころか、大笑いして喜んでおりました(^_^)
    Posted by aki at 2012年06月01日 18:12
    おわっ。
    お母様から、コメントが。
    (@_@;)

    ありがとうございます。
    (*^_^*)

    怒っていなくて、良かったー。
    Posted by セギセギ at 2012年06月02日 12:31
    ただの虫オタクととらえず、こういう見方をしてくれる先生だからこそ、
    息子もついていき、今の結果につながっているのだと思います。

    いつも勉強する気持ちで読ませていただいています。
    今後とも、親子ともによろしくお願いいたします♪
    Posted by aki at 2012年06月02日 22:22
    ありがとうございます。

    虫オタク。(*^_^*)

    何か1つのことに熱中し、他人より深い知識があるということは、尊敬に値します。

    こちらこそ、よろしくお願いいたします。
    Posted by セギセギ at 2012年06月03日 15:56
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      コメント(4)