たまりば

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2020年07月08日

高校数Ⅱ「図形と方程式」。直線の方程式の求め方。その2。垂直に交わる直線。


数Ⅱ「図形と方程式」。今回は、直線の方程式の求め方の2回目です。
ある直線と平行な直線、あるいは垂直な直線の求め方。

問題を見てみましょう。

問題
(1)直線 y=2x+1 に平行で、点(-2,3)を通る直線を求めよ。
(2)直線 y=-1/3 x +1 に垂直で、点(1,-2)を通る直線を求めよ。

まずは(1)から。
ある直線と平行な直線の求め方は、中2でも学習しています。
平行だということは、傾きが等しいということ。
だから、求める直線の傾きも、2です。
そして、点(-2,3)を通るのですから、前回学習した直線の式、
y-y1=m(x-x1) に代入して、
y-3=2(x+2)
y=2x+4+3
y=2x+7

これが答です。

では、(2)はどうでしょうか?
ある直線と垂直な直線。
これも、私立中学や、進学塾の学力上位クラスでは、中学生で学習している内容です。
もとの直線の傾きと、垂直な直線の傾きとの積は、-1。
それを利用すれば、求める直線の傾きは、3です。
あとは、直線の公式を利用し、
y+2=3(x-1)
y=3x-3-2
y=3x-5

これが答となります。

ところで、解き方自体は簡単でしたが、もとの直線の傾きと、垂直な直線の傾きとの積は、なぜ-1なのでしょう?
これは、中学で発展的な学習をしてきた人でも、案外答えられないのです。
とにかく、-1になるんだ。
そう教えられて、それを使ってきた。
理由なんか説明されなかった。
そのように主張する人もいるかもしれません。

事実、そうだったのかもしれません。
しかし、理由も説明されたのに、それを忘れているだけかもしれません。
簡単そうに思えることでも、理由を説明するとなると結構大変なことが数学にはあります。
説明するほうも大変ですが、理解するほうも大変です。

前回説明した、「分数のわり算はなぜ逆数のかけ算で計算できるのか」という件もそうでした。
今回の件も、そういうものの1種だと思います。

なぜ2直線が垂直に交わるとき、2直線の傾きの積は-1なのか、説明します。

上の図を見てください。
今、垂直な2直線を、
y=m1x+n1
y=m2x+n2
とおきます。

それぞれの直線を原点を通るように平行移動すると、式はそれぞれ、
y=m1x
y=m2x
となります。
この2直線も、垂直に交わります。

それぞれの直線上で、x座標が1の点をM、Nとすると、それぞれの座標は、
M(1,m1)1、N(1,m2) となります。
点Mは、y=m1x上の点なので、x座標が1のとき、y座標はm1。
同様に、点Nの座標は(1,m2)となるのです。

2直線は垂直に交わっていますから、△OMNは、上の図のように∠MONが90度の直角三角形です。
三平方の定理より、
OM2+ON2=MN2 となります。

では、それぞれの辺の長さはどう求めましょう?
2点間の距離の求め方は、この前やりましたね。
O(0,0)とM(1,m1)との距離は、
√(0-1)2+(0-m1)2 ですから、
OM2=1+m1の2乗 となります。
同様に、
ON2=1+m2の2乗
MN2=(0-0)2+(m1-m2)2=(m1-m2)2

これらを、OM2+ON2=MN2 に代入して、
(1+m1の2乗)+(1+m2の2乗)=(m1-m2)2
これを展開すると、
m1の2乗+m2の2乗+2=m1の2乗-2m1m2+m2の2乗
移項して整理すると、
2m1m2=-2
m1m2=-1
よって、2直線の傾きの積は、-1である。

どうでしょうか?

・・・これも、1つ1つ段階を踏んで論理的なので、途中で、
「もういいから、垂直な2直線の傾きの積は-1と覚えます」
とため息をつく人もいるかもしれません。
簡単そうに見えることでも、証明は結構難しく、理解するのが大変なことはあります。

証明自体がエキサイティングで、証明を理解することで数学の面白さに目覚める!
・・・それならよいのですが、こうした証明は、そんなふうではないことが多いです。
もっと面白いかと思っていたのに、テンションだだ下がり・・・。

何とかショーアップして、この手の証明をエキサイティングなものにし、生徒が数学の面白さに目覚めるようにしたらよいのでは?
それが講師の能力というものなのでは?
・・・それもわかります。
その一方、そんなふうにいちいち「濃い味」のものに調理してスプーンで口の中に入れてあげないと味がわからないのなら、自立した学習者になるのは難しいのではないかとも思うのです。
面白さは自力で発見できるようであってほしい。
その狭間で、悩む日々です。

ただ、理解できたこと自体の快感はあると思います。
難しいけれど、理解できた。
霧が晴れた。
納得できたから、この定理を使おう。
そのほうが、意味もわからずただ使うだけよりも、精神的に安定した状態で数学の問題に向き合えると思うのです。


  


  • Posted by セギ at 13:49Comments(1)算数・数学