たまりば

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2020年02月05日

数Ⅱ「式と証明」2次方程式の解の範囲。アクティブラーニング的に。


さて、前回は、2次方程式の解の範囲に関して、数Ⅰで学習した解き方を解説して終わりました。
前回の問題は、数Ⅰの解き方が適していたのです。
しかし、数Ⅱで学習する「解と係数の関係」を用いると、もっと簡単に解くことができる問題も多いです。

今回は、こんな問題を見てみましょう。

問題 2次方程式x2+2(a+2)x-a=0 が異なる2つの正の解をもつような定数aの範囲を定めよ。

このタイプの問題の中では、一番易しいと思います。
まずは、もう一度、数Ⅰの解き方で解いてみましょう。
f(x)=x2+2(a+2)x-a という放物線をイメージします。
そのグラフとx軸との交点のx座標が、上の2次方程式 x2+2(a+2)x-a=0 の解です。
実際に、x軸と放物線との概形を描いて具体的にイメージすると、この解き方は理解しやすいです。

どうすれば、x軸と放物線との交点は2つともx軸の正の位置にくるか?
条件は3つあります。

(1)判別式D>0 であること。
これにより、放物線は、x軸と2つの交点をもつことになりますので、大前提です。

(2)放物線の軸が、y軸より右にあること。
もしも、放物線の軸が、y軸より左にあったら、x軸との交点の少なくとも1つは負の数になってしまいます。

(3) f(0)>0 であること。
放物線がx軸と2つの交点をもつことと、軸がy軸よりも右側にあることがクリアできても、そのままでは、放物線は横にだらしなく広がり、1つの交点のx座標は負の数になってしまう可能性があります。
y軸との交点、すなわちy切片が正の数であれば、放物線はスッとすぼまり、問題の条件通り、x軸との交点は2つともx軸の正の部分となります。

納得できない場合、この3つの条件を満たすが、x軸との交点は負の数になる放物線を描いてみようとしてください。
どう描いても、放物線はx軸の正の部分と2か所で交わるようになります。
反例が存在しない。
すなわち、この3つの条件を満たせば、必ず、放物線はx軸の正の部分と2か所で交わるのです。

ここのところは、「解き方」として丸暗記するだけでは忘れるのも早いので、心の底から納得できるまで理解を深めてほしいと思います。
ただ、この問題だけ急に理解を深めようとしても、それ以前の学習を「まあよくわからないけど、そういうものなんだろう」と流してきた人には難しいかもしれません。
こういう問題になると急に眉を寄せて、
「わからない。わからない。わかるように解説してほしい」
と要求する人がいます。
気持ちはわかりますが、放物線とx軸との交点が2次方程式の解だということも、まずなかなか理解できない場合もあるのです。
どこからわからなくなっているのか?
中2で学習した、連立方程式の解が2直線の交点の座標だということも、本質は理解していなかったのではないか?
中3で学習した、直線と放物線の交点の座標を求めるときに2つの式を連立して解くことも、本質は理解していなかったのではないか?

「覚えやすいこと」=「わかること」。
「覚えにくいこと」=「わからないこと」。
覚え方を教えてもらえば、意味なんかわからなくてもいい。
そういう学習を小学生の頃から続けてきたのではないか?
でも、高校数学は複雑で、とうとう覚えきれなくなってきた・・・。
そうして急に「意味がわからない」という方向にシフトし始めた。
本当は、意味なんか、小学生の頃からわかっていなかったのに・・・。

高校数学がわからなくなる子に、そういう子は多いです。
中学の数学は、暗記と反復で何とかこなしてきた。
なぜその解き方で解けるのか、深く考えたことなどなかったけれど、典型題の暗記と反復でそこそこの点数を取ってきた。
ところが、高校数学は、暗記しきれない・・・。
暗記しても暗記しても、頭から公式や解法が抜け落ちる・・・。

・・・そんな勉強をしてきたからですよ、と責めるのは簡単です。
でも、意味がわからないことに気づいた今こそが、チャンスです。
もう小学生のときの頭脳ではありません。
脳は日々成長しています。
中学生のときに、わからないから諦めてきたことも、もう理解できるかもしれません。
あのときはわからなかったことも、今ならわかるかもしれないのです。
1つ1つ、意味に立ち返ることができれば、高校数学はわかるようになります。
実際は、そんなに大したことはやっていないのですから。
高校数学なんて、数学の基礎のまた基礎です。
理解しようと努力すれば理解できるレベルです。
あとは、どれだけ粘れるか、です。
今までのように「もういいから、やり方だけ覚えよう」と思ってしまったら、今までと同じ。
それどころか、暗記することが本当に多いですから、もう数学は諦めることになります。
数Ⅱのここからが正念場です。


さて、問題に戻ります。
上の解法で解いてみましょう。
(1)判別式より
x2+2(a+2)x-a=0 の判別式をDとすると、
D/4=(a+2)2-(-a)>0
a2+4a+4+a>0
a2+5a+4>0
(a+1)(a+4)>0
a<-4,-1<a ・・・①

(2)軸の方程式より
f(x)=x2+2(a+2)x-a の軸の方程式は、x=-2(a+2)/2=-a-2
軸はy軸より右側にあるから、
-a-2>0
-a>2
a<-2 ・・・②

(3) f(0)>0より
f(0)=-a>0
a<0 ・・・③

①、②、③より
a<-4

これが解答となります。


この解き方で何も問題ないのですが、さてここからアクティブラーニング的に。
グループに分かれて、この問題の解き方を皆で考えなさいと指示された場合、当然、数Ⅰ的な上の解き方が案として出てくるわけですが、他の解き方はないでしょうか?
数Ⅱで解と係数の関係を学習しました。
それを利用した解き方も可能ではないでしょうか。
もう一度問題を見てみましょう。

問題 2次方程式x2+2(a+2)x-a=0 が異なる2つの正の解をもつような定数aの範囲を定めよ。

とりあえず、この2次方程式に異なる2つの実数解がないことには、前提が覆ります。
だから、判別式D>0 は絶対に必要です。
それは、数Ⅰの解き方と同じですね。
あとは、解と係数の関係から考えていきます。
この2次方程式の2つの解をα、βとします。
この2つが正の数なのですから、α+β>0 ですし、αβ>0 です。
この条件をクリアすれば、この2次方程式は、2つの正の解をもつでしょう。

解いてみましょう。
(1)判別式より
これは先ほども計算しました。
x2+2(a+2)x-a=0 の判別式をDとすると、
D/4=(a+2)2-(-a)>0
a2+4a+4+a>0
a2+5a+4>0
(a+1)(a+4)>0
a<-4,-1<a ・・・①

(2)解と係数の関係より
α+β=-2(a+2)>0
-2a-4>0
-2a>4
a<-2 ・・・②

αβ>0
-a>0
a<0 ・・・③

①、②、③より
a<-4


同じ答えとなりました。
そして、こちらのほうが、簡単に式を立てて計算していくことができるのが、答案を見比べて明瞭だと思います。

数Ⅰで学習した解き方、数Ⅱで学習するこの新しい解き方。
片方しか覚えない、面倒だから、ではなく、両方とも理解し、適宜使い分けることをお薦めします。

  


  • Posted by セギ at 11:33Comments(0)算数・数学