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2019年10月24日

中学数学「2乗に比例する関数」。変化の割合と a(p+q)の威力。



さて、今回は中学数学に戻り、「2乗に比例する関数」を考えてみます。

中学数学では、2次関数のグラフの頂点は常に原点です。
一般式は、y=ax^2 となります。
これが、「2乗に比例する関数」と呼ばれるものです。

この単元で重要なのは、単元の後半の「放物線と直線」「放物線と図形」などの問題です。
高校入試で出題されるのもそこです。
しかし、学習の前半、意外に苦戦するのが、「変化の割合」に関する問題です。

問題 関数 y=-1/4x^2 において、xが-9から-6まで増加するときの変化の割合を求めよ。

変化の割合とは、
yの増加量
xの増加量

で求められるものです。
それは、グラフ上の2点を結んだ直線の傾きでもあります。

1次関数においては、変化の割合はグラフの傾きと等しく、y=ax+b の a の値そのものでしたから、特に問題ありませんでした。
しかし、2乗に比例する関数は、y の増加量が刻々と変化するものですから、変化の割合は計算しないと求められません。

上の問題で言えば、まずそれぞれの x の値に対する y の値を計算する必要があります。

x=-9のとき、y=-1/4×(-9)2=-81/4
x=-6のとき、y=-1/4×(-6)2=-36/4
xの増加量は3。
yの増加量は、-36/4-(-81/4)=45/4
よって、変化の割合は、45/4÷3=15/4

負の数の計算であること。
変化の割合を計算する際に、分子が分数である、繁文数になってしまうこと。
そういうこともあって、途中で計算ミスをしたり、計算の仕方がわからなくなって答えが出せない子が多い問題です。

計算力がないから、自分はこういう問題は正答できない・・・。

しかし、諦める必要はありません。
2乗に比例する関数の変化の割合は、簡単に求める公式があります。
関数 y=ax^2 において、x が p から q に増加したときの変化の割合は、
a(p+q) で求められるのです。

上の問題で言えば、-1/4(-9-6)=-1/4×(-15)=15/4
と、実にあっけなく、正解を出すことができます。

何で a(p+q) で変化の割合が求められるのか?
まずはその証明をしましょう。

y=ax^2 において、
x=p のとき、y=ap^2
x=q のとき、y=aq^2
よって、変化の割合は、
(aq^2-ap^2)/(q-p)
分子を因数分解しましょう。
=a(q^2-p^2)/(q-p)
=a(q+p)(q-p)/(q-p)
分母・分子に同じ(q-p)がありますから、それで約分できます。
=a(q+p)
=a(p+q)

p や q が負の数のときは、その符号も含めて単純に足したものに a をかければ、すぐに変化の割合を求めることができるのです。


この公式は公立の中学校では教えません。
変化の割合の本来の意味と公式の見た目とがかけ離れているため、理解できない子や誤用する子が多いからだと思います。
中学の段階では、変化の割合の本来の意味をしっかり理解することのほうが重要です。
変化の割合は、高校数学では「平均変化率」という言葉に変わり、これが微分で大きな意味を持ちます。
非常に重要な学習事項です。
しかし、a(p+q) という公式は、頂点が原点にある放物線、すなわち y=ax^2 においてのみ使用できる公式です。
高校に入って、もっと一般的な2次関数 y=a(x-p)^2+q の学習をするようになったときには使用できません。
使用期間が限定的であり、かつ、実感に乏しい。
こんな公式、教えませんよね。

ところが、中高一貫校では教えます。
進学塾の、学力が上のクラスでは教えます。
私も、学力の高い子には教えます。

だって、本来の求め方をすると、時間がかかる上に計算ミスのリスクが高いのです。
この公式で求められるのなら、この公式で解いたほうが良いでしょう。

この公式を教えたときの公立中学の生徒の反応は色々です。
積極的に活用する子もいますが、教わってもこの公式を使わない子もいます。
理解できなかったからかな?というとそうではなく、学校で教わっていない公式を使ったらダメなのではないか、というためらいがあるようなのです。
学校の問題集の発展問題に、a(p+q) を証明する問題が載っている場合は、
「先生に、何でこんな解き方をしたのと言われたら、学校の問題集に載っていたと説明すれば大丈夫だよ」
と言うと、ほっとした顔をして、それからは安心して使う子もいます。
学校で教わった解き方をしないとテストでバツにされる、あるいは目をつけられると思っているのかもしれません。
実際、この公式の使用の禁止を命じた公立中学の先生もいますので、生徒の不安もわからないではありません。

中学の数学のテストは、「数学のテスト」なのですから、数学的に正しければ、その先生が教えた解き方であろうとなかろうと、マルをつけたらいいと思います。
実際、許容範囲の広い先生のほうが多いですし。
その先生が、その解き方を知らないわけではないのですから。
公立中学で教えても教育効果が上がらないと思うから教えないだけです。

こういうことは、でも、その子はむしろ被害者かもしれません。
大人を怒らせないように言動に気をつける。
目をつけられないように用心する。
それが行動規範になってしまっている子もいます。

学校で禁止されたら仕方ないですが、特に何も言われていないのならば、変化の割合を求める a(p+q) の公式は、計算ミスをしなくて済むという点で、計算に自信のない人ほど活用してほしい公式です。


  


  • Posted by セギ at 13:48Comments(0)算数・数学