たまりば

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2019年07月10日

数Ⅱ「式と証明」。多項式の除法。


今回は「多項式の除法」です。
中学数学でやっているような気がするのに、意外に一度もやっていないのが、多項式の除法です。

問題 (x3+3x2-5)÷(x-2) を計算し、商と余りを求めよ。

これは筆算していくことができます。
やり方・考え方は数字のわり算の筆算と同じです。

例えば、764÷6を筆算してみましょう。

6 )764

の7と6を見比べて、7の上に「1」という商が立つと判断します。
その後、1と6をかけたものを7の下に書いていき、そして7からそれを引きます。
   1
6 )764
   6  
   1

これと同じことをやっていきます。

x-2 )x3+3x2   -5

x3とxを見比べて、x3の上に「x2」という商が立つと判断します。
そのx2と「割る数」であるx-2とをかけたものを元の式に下に書いていきます。

    x2
x-2 )x3+3x2   -5
     x3-2x2

そして、元の式から、今書いたものを引いていきます。

    x2
x-2 )x3+3x2   -5
     x3-2x2
        5x2

次に、引き算の結果である「5x2」とx-2を見比べで、商を立てます。
「5x」という商が立ちます。
その5xとx-2をかけたものを下に書いていきます。
そして、上の行から下の行を引きます。

    x2+5x
x-2 )x3+3x2     -5
     x3-2x2
        5x2
        5x2-10x
            10x -5

次に、引き算の結果である「10x」とx-2を見比べて、商を立てます。
「10」という商が立ちます。
その10とx-2とをかけたものを下に書き、上の行から下の行を引きます。

    x2+5x  +10
x-2 )x3+3x2     -5
     x3-2x2
        5x2
        5x2-10x
            10x -5
            10x-20
                15

よって、商は x2+5x+10、余りは15です。

「本当にこんなやり方で割ったことになるの?」
「何でそれで答えが出るのか、意味がわからない」
という感想の多いところです。

そこで、ちょっと検算をしてみましょう。
わり算は、(割る数)×(商)+(余り)=(もとの数)
で検算することができるのでした。

(x-2)(x2+5x+10)+15
=x3+5x2+10x-2x2-10x-20+15
=x3+3x2-5

はい。
もとの式に戻りました。

やり方は理解できても、最初のうちはなかなか正答できない高校生が多いです。
ミスしやすい箇所としては、多項式の書き写し間違い。(特に指数と符号)
上の式の-5-(-20)のような箇所の符号ミス。

符号ミスは、中学生になって負の数の計算をするようになると同時に始まります。
答えが負の数になる問題は決して正答できないというくらいに符号を書き忘れる子もいます。
これを「ケアレスミス」ととらえ、本人が注意すれば解決すると思うのは、しかし、誤りだと思います。
そもそも、俗にケアレスミスと呼ばれるものが多い子ほど、ケアレスミスの意味を「ちょっとしたミス」などととらえています。
ケアレスミスは不注意なミスという意味だよと教えると、嫌な顔をします。
不注意と指摘されることにも傷ついてしまうようです。
しかし、問題はもっと深刻で、符号ミスは単なる不注意なミスではないと思ったほうが良いと思います。

小学校では必要なかった負の符号が中学数学では必要になるのに、そのことが知識として身についていない。
そうとらえたほうが現実に即していると思います。
つまりは、本人の脳内の根本のところで知識がバージョンアップされていず、いつまでもいつまでも、ついつい気がつくと負の数など存在しないような感覚で数学を解いてしまっているのだと思うのです。
バージョンアップは、簡単にできる人もいますが、非常に時間のかかる人もいます。

傍で見ていると、何でそんなに安易に負の符号を書きもらすのか、意味がわからない・・・。
ぼんやりしているから、そんなことになるのではないか?
・・・ついついそう思ってしまいがちですが、本人もミスなどしたくないから一所懸命やっているはずです。
それで書きもらすとなると、符号に関するバージョンアップがされていないと見るほうが自然です。
それは、本人が自覚すれば治るというものではなく、脳内でアップデートされない限り同じミスが繰り返されます。

では、どうすればアップデートされるのか?
それは脳次第であるところが歯がゆいところです。
人間の脳は自力ではコントロールできません。
何で覚える必要があることを覚えられないの?
何でアップデートできないの?
そういうこととの闘いです。
ただ、「数学なんか嫌い」「数学なんかやっても意味ない」と思っている人のアップデートは当然遅いです。
せめて、自ら数学から遠ざかることだけは避けたいところです。
結局、練習を重ねることで、脳がアップデートの必要を感じるのを待つしかありません。

上の多項式の除法でいえば、引き算であるところをたし算してしまうミスも多いです。
商を立てた後、例えば3x2の下に-2x2という項を書くところまでは上手くできるのですが、下の項に負の符号がついていると、そのままたし算してしまうミスは多いです。
指摘してもピンとこない様子で、正しい筆算をしてみせるとようやく理解するということがあります。
これが繰り返されるのは、もはやケアレスミスというものではなく、そこが明らかに理解不足の弱点となっているのです。
ケアレスミスじゃないぞー。
明らかな理解不足だぞー。
そのミス、何度目だー。
・・・そのような指摘をするまでもなく、ほぼ全問どこかでひっかかって誤答しますので、さすがに本人の顔色が悪くなってくるところではあります。
やり方はわかっているのに、幾度解き直しても正解に至らない。
解き直す度に違う答えは出るけど、正解でないのはなぜ・・・?
解答が間違っているんじゃないの?
数Ⅱに入ると、そういうことが本当に増えてくると思います。
練習不足なんです。
数Ⅱの問題を正確に解ける計算力が身についていないのです。
一度でパッとできるようになる人もいます。
でも、沢山練習する必要のある人もいます。
そんなのは、スポーツでも何でも普通のことです。

こういう話をすると、何だ才能の話かと諦めてしまう人もいると思います。
これは、努力の話です。
例えば、目の前でやられると非常に煩わしいペン回し。
小学校高学年から中学生の頃、特に男子の大半は、あれに夢中になります。
数回で器用にできるようになる人もいますが、なかなか上手くできなかった不器用な人もきっといたはずです。
なのに、諦めない。
学校の授業中、延々とペン回しの練習をしましたよね。
そして、ついに習得しました。
努力の成果です。
努力って、実は誰でもできるのですよ。
努力の方向性はともかく。


さて、もう1問。

問題 (a3+2abc+b3-c3)÷(a+b-c) をaに着目して行い、商と余りを求めよ。

最初の問題との違いは、文字が1種類ではないこと。
「aに着目して」ということは、aについての文字式とみなし、他の文字は係数や定数項として扱いなさい、という意味です。
これは、筆算として書くときから順番を意識し、他の文字はaの係数や定数項であるとわかるようにしておくことで解きやすくなります。
aについて降べきの順に整理して書いてみましょう。

a+(b-c) )a3     +2bca+(b3-c3)

a3とaを見比べると、まずa2という商が立ちます。
その商と「割る数」であるa+(b-c)をかけていきます。

       a2
a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
         a3+(b-c)a2 

上の行から下の行を引きます。
上から次に使う項も下ろしておきます。

       a2
a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
         a3+(b-c)a2
          -(b-c)a2+2bca

ここでは、2次の項はもともと存在しなかったところから(b-c)a2を引くので、
0-(b-c)a2
=-(b-c)a2
となることに注意が必要です。
上からおろしてくる項は、あえて書けば、
2bca-0
=2bca
となりますので、符号は変わりません。
0から引くことと、0を引くこととは大違いですね。

次に-(b-c)a2とaを見比べて、-(b-c)aという商が立ちます。

       a2-(b-c)a
a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
         a3+(b-c)a2
          -(b-c)a2+2bca
          -(b-c)a2-(b-c)2a

例によって、上の行から下の行を引くのですが、ちょっと複雑で引きにくいですね。
こういうときは、ノートの横の空欄などを利用して、そこの部分だけ計算すると良いでしょう。
係数だけのひき算をすれば良いですね。
すなわち、
2bc+(b-c)2
=2bc+b2-2bc+c2
=b2+c2

上から定数項も下ろしてくると、

       a2-(b-c)a
a+(b-c) )a3        +2bca+(b3-c3)
         a3+(b-c)a2 
          -(b-c)a2+2bca
          -(b-c)a2-(b-c)2a
                  (b2+c2)a+(b3-c3)

次の商は、(b2+c2) ですね。

       a2-(b-c)a +(b2+c2)
a+(b-c) )a3        +2bca   +(b3-c3)
         a3+(b-c)a2 
          -(b-c)a2+2bca
          -(b-c)a2-(b2+c2)a+(b3-c3)
                  (b2+c2)a+(b-c)(b2+c2)

最後の定数項のひき算も複雑ですね。
ノートの空いているスペースで計算しましょう。
(b3-c3)-(b-c)(b2+c2)
=b3-c3-(b3+bc2-b2C-c3)
=b3-c3-b3-bc2+b2C+c3
=-bc2+b2c

これが余りとなります、
よって、商は  a2-(b-c)a+(b2+c2)
となりますが、整理したほうが見た目がきれいですね。
( )を外しておきましょう。
従って、商 a2+b2+c2-ab+ca
    余り -bc2+b2c
となります。

この筆算は複雑ですが、この先、「分数式の計算」や「因数定理」を学習する際にまた利用しますので、必ず身につけておきましょう。
とはいえ、ネットでは罫線を上手く引けないので、物凄く見にくいと思います。
全体の板書が上の画像です。

  


  • Posted by セギ at 12:58Comments(0)算数・数学