たまりば

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2018年08月11日

不定詞の攻略法。まずは中学2年レベル。


中2の2学期あたりから急に英語の成績が下がっていく子がいます。
なぜそうなってしまうのか?
それまで学習していた英文とは語順が異なる文が増えてくるからでしょう。
実際のところは、それまでと根本の構造は同じなのですが、文法的なアプローチが苦手な子には、全く別の語順の文に見えてしまいます。
今まで、基本例文を暗唱して、英語は大体こんな順番で単語を並べればいい、と思ってきたことが覆されます。
また、英文を全て日本語に直して、その文の意味から文法問題を解いてきた子にとっては、どう解いていいのかわからない種類の問題が出てきます。

典型的なのは、不定詞の三用法の見分けです。

問題 次の英文のうち、同じ用法のものを選べ。
(1) I want to play the guitar.
(2) My hobby is to collect old coins.
(3) He was the first man to land on the moon.
(4) You come to school to study.

答えは(1)と(2)。
この2つは名詞的用法。
(3)は、形容詞的用法。
(4)は、副詞的用法です。

できるだけ文法用語に触れないで学習を進める場合、この3用法も、「名詞的用法」「形容詞的用法」「副詞的用法」という用語を用いないで説明することになります。
この用語を正しく定義し説明すれば何もかも上手くいくのですが、それを避けるために大切なことが伝わらず、全てが曖昧になっていくことがあるのです。

例えば、「名詞的用法」とは、不定詞を名詞として用いる用法です。
名詞として用いるということは、名詞と同じ働きをするということ。
すなわち、その文の主語・補語・目的語のいずれかになるということ。
(1)の to play は、動詞の目的語。
(2)の to collect は、補語です。
だから、どちらも、名詞的用法。

これが文法的な分析ですが、中2は、さすがにそれだけでは理解しづらいので、意味からもアプローチします。
名詞的用法というのは、動詞が名詞のように使われる用法。
つまり、「~する」という意味の動詞が、「~すること」という意味になるのが、名詞的用法の不定詞です。
(1)の直訳は、「私は、ギターを弾くことを欲する」。
さすがに、何時代の日本語なのだろう?という感じがするので、「私はギターを弾きたい」と訳しますが、構造を意識した直訳は「~すること」です。
(2)の訳は、「私の趣味は、古い硬貨を集めることです」。
「~すること」という意味なので、これも名詞的用法。

文法からと意味からと双方で補強しあえば、名詞的用法は理解できます。
これが意味から把握するだけですと、want to ~は「~したい」、like to ~は「~するのが好き」と、まるで熟語のように把握しがちで、そういうものが不定詞だと思うようになってしまう子がいます。
そのあげく、不定詞は「動詞+to」だと、逆転して覚えてしまう子すらいます。
不定詞は、to+動詞の原形だよ、と説明しても妙な顔をしたりします。

それでも、名詞的用法は、まだ理解しやすいのです。
問題は、形容詞的用法。
形容詞の働きは、名詞を修飾する働きと、補語になる働き。
しかし、中学生で不定詞を学んでいる間は、補語になる働きのことは無視しましょう。
名詞的用法と重なる部分があって紛らわしくなりますから。
不定詞の形容詞的用法は、名詞を修飾する。
これだけで大丈夫です。

しかし、これだけでも、文法嫌いな子には、ハードルが高いようです。
形容詞は、名詞を修飾する。
これの何を難しく感じるのか?
「形容詞って何?」
「だから、名詞を修飾するのが形容詞ですよ」
「・・・え?」
名詞を修飾するのが形容詞。そして、形容詞は名詞を修飾する。
これを堂々巡りのように感じ、よくわからないと思う子がいますが、これは堂々巡りではなく、定義です。
わかりやすいように少し補足するならば、
日本語に直すと言い切りの形が「~い」で終わる、性質や状態を表す言葉が形容詞です。
本当は、「~だ」で終わる日本語の形容動詞も英語では形容詞ですが、そういうことを言い出したらますます難しくなるので、ざっと理解しておきましょう。

前にも書きましたが、中1の段階で、文の中のどれが動詞でどれが名詞か識別できるようになっていると、少し楽です。
中2で不定詞を勉強する際に、今度は、形容詞と副詞の働きを理解すれば良いのですから。
でも、それが上手くできない子が多いのです。

どれが名詞なのかもよくわからないまま、不定詞の形容詞的用法を学ぶ。
確かにそれはハードルが高いでしょう。

He was the first man to land on the moon.

この文の man が名詞です。
後ろの to land on the moon は、この man をより詳しく説明しています。
どんなmanなのか?
to land on the moon したmanなのです。
これで、どんな男か、より詳しくなりました。
言い方を変えると、「男」というだけと比べて、意味が限定されました。
より詳しく説明する、あるいは意味を限定する。
これが「修飾する」ということです。
to land on the moon という不定詞は、man と言う名詞を修飾しています。
名詞を修飾するのが、形容詞。
だから、この不定詞は形容詞的用法です。

形容詞的用法の不定詞の訳し方は何通りかあります。
「~する」名詞、「~するための」名詞、「~するべき」名詞、などです。
この訳し分けは日本語の都合で、英語としての違いではありません。
日本語に訳して自然なものを選ぶだけです。
不定詞の形容詞的用法を名詞との関係からさらに分類するのは、高校英語になってからです。
それもそんなに必要なことではないと私は思っていますが。
「文法のための文法」のような知識は不要。
でも、理解の助けになる文法は身につける。
何でも毛嫌いせずに、そのような姿勢で文法を利用すると、難しかった英文の構造がスッキリわかり、意味がスラスラ読み取れるようになります。

しかし、文法が苦手な子は、「名詞」「形容詞」といった言葉が説明の中に出てきただけで、もう耳を塞いでしまいます。
はい、もうわからなーい。
はい、その説明、難しーい。
頭が、心が、文法を拒絶する様子です。
そうした子は、文法の力を借りることができず、意味だけで不定詞の三用法を判断することになります。
そして、形容詞的用法だけで何通りも訳があることに混乱し、不定詞がわからなくなります。
名詞を修飾しているかどうかだけが判断の基準で、日本語の訳なんか何通りあっても全部同じなのですが。

形容詞的用法は、乱文整序問題や英作文で混乱する子が多いのも厄介な点です。
「彼は、子どもたちと遊ぶ時間がない」
この日本語を英語に直すと、
He doesn't play to time children.
といった謎の英文を書いてしまう子は多いです。
それまで、英語の語順はこういうものと思っていたのとは少し違う語順の文が、不定詞の形容詞的用法の文です。
名詞の直後に to 動詞。
文法的に理解していないと確かにこの語順は衝撃的で、自ら進んでこの語順で単語を並べていくには勇気が必要かもしれません。
今までの語順にこだわっていると、「動詞 to 名詞」の語順で書いてしまうのです。

主語を書いて、動詞を書いて、目的語となる名詞を書いて、to 不定詞。
「誰々が」を書いて、「何々する」を書いて、「何々を」を書いて、to 不定詞。
この呪文を唱えながら、そのナビの通りに英文を書いていけるようになるまで練習すると、段々とこの語順で英文が書けるようになっていきます。
He has no time to play with his children.


形容詞的用法と比べれば、副詞的用法は、まだ理解しやすいでしょう。
You come to school to study.
あなたは勉強するために学校に来るのです。

中2で学習する副詞的用法の不定詞は、動作の目的を表す用法の1種類だけです。
文がひと通り終わって、その後、最後に不定詞がくっついている印象なので、構造的にも理解しやすい。
ただし、意味だけから判断しようとする子は、副詞的用法と形容詞的用法の区別がつかないことが多いです。
「~するための」と「~するために」が似ているせいで混乱するのでしょう。

名詞を修飾するのが形容詞。
名詞以外のものを修飾するのが副詞。

これを理解するだけで、形容詞的用法と副詞的用法の識別は、完璧にできます。

三用法の識別。
基本を理解したうえで、さらに簡単に識別するための目安もあります。
「動詞 to 動詞」の形のときは、名詞的用法の可能性が高いです。
勿論、例外はあります。
He lives to eat.
この文は、動詞 to 動詞 の形ですが、名詞的用法ではありません。
この to eat は、lives の目的語ではありません。
「彼は、食べることを生きている」ではありません。
「彼は、食べるために生きている」です。
これは、副詞的用法です。

「名詞 to 動詞」の形のときは、形容詞的用法の可能性をまず考えてみます。
ただし、本当にその不定詞がその名詞を修飾しているか、確認が必要です。
I went to the library to do my homework.
名詞 to 動詞 の見た目ではあります。
しかし、この不定詞は、名詞を修飾しているのでしょうか?
「宿題をやるための図書館」。
おかしいですよね。
宿題をやるため専用の図書館?
そんなもの、あるはずがありません。
「私は、宿題をやるために図書館に行った」
これが正しい。
to do my homework は、went という動詞を修飾しています。
だから、これは、副詞的用法です。

意味からも補強するけれど、文法的な把握は問題を解くのにこんなにも助けになる。
不定詞の三用法は、文法を理解することがどれほど有利かを知ることができる学習内容です。
文法を理解できる子はここから英語で頭角を表し始め、一方、文法を理解できない子は、徐々に英語がわからなくなってくる境目です。

文法用語を多用せず、それでも、文法を理解してもらうこと。
教える側としても、ここからが正念場となります。
  


  • Posted by セギ at 14:39Comments(0)英語