たまりば

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2018年05月24日

高校生の英語力が伸びない理由.


2013年に閣議決定された英語到達目標がありました。
2017年度までに中学3年生の50%が英検3級程度の英語力をもつこと。
高校3年生の50%が英検準2級程度の英語力を持つことでした。

しかし、実際には、2017年度に、英検3級程度以上のレベルに達した中3は全体の40.7%。
英検準2級程度以上のレベルに達した高3は39.3%。
目標達成はなされませんでした。

高校生に対しては、そもそも低く目標設定されていました。
英検3級は中学3年生程度の英語力を基準としていますので、学年相当の設定です。
一方、高校3年生に対する政府目標は英検準2級とされています。
英検準2級は、高校1~2年生程度の英語力です。
しかも、その目標を達成できませんでした。

数値も同じ40%程度ですので、中学3年生のときに英検3級程度の英語力のある子は、高校3年生のときには英検準2級程度の英語力がある、という流れが見えます。
2017年度の中3と高3の話で、同じ学年の子どもたちの継続調査ではないのですが、継続調査をしてもその程度ではないでしょうか。
これを、英検2級で調査したら、当然、もっと数値は低くなるでしょう。
中3のときにはそれでも学年相当の英語力のあった40%の子たちも、学年が上がるにつれて、学年相当の英語についていけなくなっていると予想されます。

どうすれば良いのか?
これは「4技能」の話とはちょっと違うのです。
「4技能」は、日本人は中学・高校と英語で秀才だった子も実際には英語を話せないという観点から、「話すこと」にも力点を置こうという話です。
「話すこと」の指導に力を入れれば英語の他の技能も上がる、ということではありません。
「話すこと」に力点を置けば、話す技能は今までよりは上がるかもしれません。
しかし、それに伴って「読むこと」「聴くこと」「書くこと」の能力が上がる保証はありません。
実際、これまでの例で言えば、中学生で英会話教室に通っている子は、「話すこと」「聴くこと」の力は標準よりあるけれど、ペーパーテストに弱いので、成績は「4」は取れても「5」はなかなか取れないのが実状でした。
高校生で英会話教室に通っている子になると、さらに効果は不明瞭で、高校の英語の授業についていくことができない子もいます。
でも英会話教室は楽しいらしいのです。
楽しいのなら何より。
もうそれはお稽古ごとの領域です。

ただ、英会話教室も今は多種多様で、昔ながらのネイティブの講師を囲んで数人のグループで会話をする形式のものは少なくなりました。
毎回自己紹介に授業の半分が費やされるという効果不明のものは淘汰されつつあります。
各種英語検定合格に特化したもの、大量のリーディングを課し速読力を強化するもの、高校受験・大学受験に対応しているものもあり、それは英会話教室というより英語教室と呼んだほうが良いのでしょう。
そして、そうした英語教室は「話すこと」が他の技能を伸ばすとは必ずしも考えてはいないのです。
4技能は、それぞれを伸ばさないと伸びないのです。

話を戻して。
中学英語にはまあまあついていけた子が、なぜ高校英語で学年相当の力がつかなくなっていくのか。
最大の原因は単語力だと思います。
高1になっても、高2になっても、高3になっても、単語力は中学生レベル。
そういう子が多いのです。
たまにわからない単語があるという程度ではなく、1文の文意を決定する単語のほとんどがわからないのです。

例えばこんな文。
She possesses a great capacity for overcoming any obstacle.
文法的にはシンプルです。
比較的短く、内容をとらえやすい英文です。
しかし、英語が苦手な高校生は、この文の意味を把握できません。
単語の意味がわからないのです。
主に以下の4単語です。
posess , capacity , overcome , obstacle
どれも高校レベルの単語です。
でも、覚えていない子は多いです。
1文に4つわからない動詞や名詞があったら、意味は把握できないですよね。
単語の意味がわからない限り、英語は謎の呪文です。
(-_-)

英単語はいきなり大量に出てくるものではないので、新出のときにしっかり覚えて2度と忘れないようにすれば、語彙は着実に増えていきます。
中学生の頃は、それがそこそこ上手くいっている子も多いのです。
しかし、高校生になると、新出単語を覚えきれなくなっていきます。

高校の英語の先生は、生徒の単語力不足を気にしていますので、単語集を配布し、週1回テストを課すことが多いです。
しかし、それも、その単語テストのために一夜漬けで覚えて、テストが終わればすぐに忘れてしまう子が大半です。
それを防ぐため、学校の先生は、そうした毎週の単語テストの範囲を定期テストの範囲に全て含めることがあります。
その場合、単語のテスト範囲は「捨てる」という暴挙に出る高校生が多いのです。
覚える単語数が多すぎるからでしょう。
他の教科の勉強もあるからと諦めてしまうのです。
定期テストでは、単語集からの出題はほぼ全滅。
身についた単語はほとんどありません。
この繰り返しで、教科書の本文も、テストに出る初見の英文も、わからない単語がどんどん増えていきます。
高校生で英語が苦手な子の大半は、そういう子ではないでしょうか。

知っている単語の数がもう少しあれば、文法力や文章の構造把握力でどうにかカバーする方法はあります。
上の英文で言えば、まずcapacity。
この単語がわかるとわからないとでは、かなり違ってきます。
そして、この単語は、半分日本語になりつつある単語です。

しかし、英語が苦手な子とは、こんな会話になりがちです。
「キャパシティは、もう半分日本語になっているね。キャパって言うじゃない?」
「言いません」
「武道館のキャパ1万2千人。東京ドームのキャパ4万人とか」
「言いません。知りません」
「・・・・」

思い出すヒント、覚えるヒントとしてこうした話を持ち出しているのですが、単語が苦手な生徒ほど、こんな反応になりがちです。
知らないことを責められていると感じてしまうのでしょうか。
他にも、
「ファッション誌に、インポート物とか書いてあるじゃない?」
「知りません」
「都知事がよくダイバーシティとか言っているじゃない?」
「知りません」
叩き返すような返答です。
「映画で、ミッション・インポッシブルってあるじゃない?」
「知りませ・・・あ・・・」
「・・・・知ってるよね?」
「知ってますけど、意味とか考えたことありません」
日本語としてなじみのない音のつながりでも、映画のタイトルだと覚えられたりしますから、それを利用しない手はないですよね。
ちょっとでも語彙を増やしていく、その気持ちが大切。
ヽ(^。^)ノ

単語力をつけたいと思っている人は、1万語をまとめてスルスル覚える方法を求めている様子の人が多いです。
そのためには3か月単語漬けになるくらいの覚悟が必要ですし、その後もそれを維持するための継続的努力が必要なのですが、その人にその覚悟があるかというと、それはまた別の話。
一方、身近なところから1つでも2つでも覚えていこうということもない。

英単語は、覚えられない。
私は、英単語を覚えるのは苦手だ。
全然頭に入らない。
それは仕方ないことだ。
それを解決できないのは、私の責任ではない。
楽にスルスル覚えられる方法が開発されたら、やってみないでもないが。
そういうところで停滞し何も動かないのが、中学英語と高校英語との間に高い壁を作っている一つの原因かなと思います。


ともかくcapacityは「能力」という意味だと、それはわかっているとして。
She posseses a great capacity for overcoming any obstacle.
文法の基本がわかっていれば、わからない英単語は英語のまま、意味を取っていくことができます。
「彼女はどんなobstacleもovercomeする大きな能力をpossessしている。」
何のこっちゃわからん、と言うこともできますが、とにかく能力の話なのだとわかります。
そして、英文というのはこの1文だけポツンと書いてあるのではなく、これは長文の一部分です。
この文の前後、大抵はその後ろに、その能力についてもっと具体的な描写があるはずです。
その能力は、どんなobstacleもovercomeする能力だそうですが、その後に具体例が書いてあり、それが読み取れれば、obstacleもovercomeもわからなくても大丈夫でしょう。
修飾部分ですから。
具体例のほうがもっとわかりやすく説明してあるはずです。
逆に、その後ろの具体例が読み取れなくても、あと一語、overcomeの意味がわかるなら、おおよその文意は把握してその先を読み進めることができます。
「彼女はどんなobstacleも克服する能力をpossessしている」
ここまでわかれば、ほぼわかったようなものです。
その後に、何かを克服した具体例が書いてあるのでしょう。

ただし、こうした読み方はかなりの集中力と推理力を必要とします。
単語の意味がもっとわかれば、こんなに苦労をしなくて済むものを。
せめてこの単語の意味だけでもわかれば。
そうした経験から、1つ1つ増えていくのが生きた語彙です。

単語集による単語暗記も並行して行う中で、覚えたはずの単語が長文中に出てきて、それなのに意味が取れないとき。
この単語の意味がわかれば、この文の意味はわかるのに。
覚えたはずなのに。
悔しいなあ。
そうして、その単語の意味を確認し、ああ、そうだった知っていたのにと感じます。
その単語は自分の語彙になるまで、あともうほんの少しです。
もう自分の語彙になっているかもしれません。
単語集の中の単語の羅列が、文章の中で生きた使われ方をした瞬間に、驚くほどすんなり頭に入ってきて忘れないことがあります。
だから、単語暗記と多読とを並行して行うことが効果的です。
重要な単語は本当に高い頻度で英文の中に出てきますので、英文を多く読めば読むほど、頭に残ります。

しかし、英語が苦手な高校生は、単語暗記も多読もしません。
教科書の英文だけは予習しようとしても、新出単語以外にもわからない単語が多く、いちいち辞書をひくだけで時間がかかります。
文法も苦手なので、単語の意味は調べられても、1文が長いと構造を把握できません。
関係代名詞とか分詞とか、学校の授業で説明されても、意味がわからない。
中学でちょっと勉強して終わると思っていたのに、何で毎回文章に関係代名詞とかいうのが出てくるんだろう?
全然わかんない。
教科書の予習だけでも、もう手が回らない。
そもそも英語にそんなに時間をかけていられない。
そう考えて、やがて諦めていきます。
そういう子が多いと思います。

この状態で、塾で、学校の英語の授業の予習復習を希望し、それ以外のことはやりたくないしやらないとなると、問題の解決はほとんど不可能です。
わからない単語は辞書を引かなくても教えてもらえるので、コミュ英の予習は一見順調となります。
教科書の問題を一緒に解いてくれるので、英語表現の予習も順調。
英語の予習がとりあえず楽になります。
わかってきたような気がします。
これなら、定期テストの点数も上がるかなあと本人は期待するのですが、その高校の定期テストが単語集からの出題や初見の英文の出題が多い場合、得点の伸びはあまり期待できないでしょう。
むしろ、長期的にはじりじり下がっていく可能性のほうが高いと思います。
自力で英語と対峙する機会がむしろ減っているのですから。

間口の狭い勉強にこだわっていると英語力は永遠に中学生のままです。
根本の英語力を鍛えることが必要です。
まずは単語力。
学校がせっかく与えてくれている単語集。
繰り返し繰り返し暗記してみてください。
学校が指示するよりも早く、何周でもしてください。
英語学習の間口を広げましょう。

  


  • Posted by セギ at 15:32Comments(0)英語