たまりば

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2018年05月16日

途中式のほどよい省略。


数学の答案を見ていますと、無駄なくらいに途中式を書く子と、途中式を省略しすぎて計算ミスをする子とがいます。
本人の計算力にもよるので、どの程度の省略がいいかは一概には言えないのですが。

例えば、こんなとき。

-8+3-7+5
=-8-7+3+5
=-15+8
=-7

上の式の2行目、要らないですよね?

あるいは、こんな例。

2x+3=5x-6
2x-5x=-6-3
-3x=-9
   x=3

上の2行目、要らないですよね?

やり方の説明のため、最初に学習するときには教科書に書いてある式です。
とはいえ、絶対に書かなければならない式ではありません。
慣れるまでは書いていくのもいいでしょう。
でも、慣れれば、特に頭に負荷のかかることなく暗算できることです。
書かなくて良いものです。
でも、中3になっても高1になっても、永久に書き続ける子がいます。
2年も3年も書き続けていると、省略したらそこで詰まってしまうのでしょう、絶対に省略できない様子です。
正答率に影響することではないので、書きたかったら書いたらいいのですが、早めに省略を身につけていれば1行書かずに済むのになあと思わないでもありません。

とはいえ、丁寧なのはそんなに問題ではないので、そのことには触れないことが多いです。
私の板書は、省略したものを書きます。
省略しても安全に解いていけることを示しながら、解説します。
テキストを見て解説するときも、
「この1行は説明のための1行で、実際に計算するときは書く必要はないよ」
と説明します。
それでも本人が書くのなら、もうそれでいいでしょう。

やはり、問題は過剰な省略。
これは正答率に影響します。

例えば、こんな例。

(√6-√2)2
=4-2√3

え?
何をしたの?

(√6-√2)2
=6-2√6√2+2
=8-4√3
これが正解です。

(a-b)2
=a2-2ab+b2
という乗法公式を利用しているのですが、これを、
=(a2+b2)-2ab
として、(a2+b2)のところは暗算で済ませるやり方は、ないわけではありません。
ただ、真ん中の負の符号に引きずられて、6-2=4としてしまうミスが起こりやすいのです。
また、-2abのところは、今回、-2√6√2=-2・2√3
なのですが、2がかぶっているため、暗算の中で1つになってしまい、その結果、
(√6-√2)2
=4-2√3
と誤答してしまった様子です。
途中式を書けば間違えるはずのないところで間違えてしまう勿体ないミスです。

1度このやり方を始めた子に、
「そのやり方は正答率が下がるから、やめたほうがいいよ」
と助言しても、まずやめません。
今度こそ正答してみせると逆にムキになってしまうのか、以後、このタイプの計算ではミスすることを含みこんでの得点しか期待できなくなってしまいます。

人間のやることなんて、そんなに正確じゃない。
あなたが不正確だと言っているわけではない。
人間は不正確なんですよ。
そのように諭しても、直しません。
人間の限界に思いが至るほどには精神的に成長していないからでしょうか。
ミスをすることがある自分を認められないのでしょうか。
理解は深まっているのに、同じ計算ミスが繰り返されるので得点が伸びない。
数学を指導していて感じる不条理の1つです。

そのやり方を否定しても直りません。
むしろ、本人のやりたいやり方で正解できるよう指導し応援するのが得点を上げる近道となります。
子どもの中には否定されることに異様に弱い子がいます。
何を注意しても「否定された!」と感じて傷つくだけで、肝心の注意されたことは直りません。
傷ついてもそれで直るのなら意味があるのですが、傷つくだけで直らないとなると、こちらも考えざるを得ません。
そんなことでは社会に出たらすぐ潰れるのではないかと老婆心ながら思うこともあるのですが、そんなにメンタルが弱いなら、せめて学力がその子の将来を守ってくれますように。

とはいえ、これは否定しないとどうにもならない省略もあります。

25(3x+1)2-49=0 を解け。
√3x =-√25/49-1

・・・・え?
何をやったの?
「この先は、どう計算するんですか?」
とその子は質問するのですが、私はむしろそこまでをどう計算したのか問いたい。

ノートにはその2行しかないのです。
与式の次は、もうその暗算の結果が書かれているのです。
こういう極端な暗算が癖になっている子もいます。
おそらく、中1や中2の頃は独りで勉強していて、方程式を型通りに解いたことがなく、全部暗算で出していたのではないかと想像されます。
それでもある程度の正答率は維持していたので、問題視されずにきたのでしょうか。
2次方程式になって、ついにそれでは解けなくなったということなのでしょう。

25(3x+1)2-49=0
25(3x+1)2=49
(3x+1)2=49/25
3x+1=±7/5
3x=±7/5-1
3x=2/5,-12/5
x=2/15,-4/5

これは、暗算は、ちょっと無理です。
正しい解き方を繰り返し解説したのですが、その子は、暗算が直りません。

どういうことなのだろう?
暗算は無理だと言われれば言われるほど、いや自分はできると思ってしまうのか?
正しいやり方が理解できないので、この解き方をしているのか?

本人に訊いたところ、予想外の第三の答えが返ってきました。
「言われたことはわかるし、直そうと思っているが、問題を解き始めると忘れてしまう」
「・・・・・・」
('_')

忘れてしまう・・・・。

この言葉、説得力があります。
忘れてしまうんだなあ。
その子に限らず、繰り返し間違えてしまう子たちの行動も説明してくれる言葉です。
そうか、忘れてしまうんだ。
問題を解き始めると、直したほうがいいことも、注意すべきことも、スマートな解き方も、全部忘れてしまう。
だから、間違った解き方を繰り返してしまう。
( ;∀;)

しかし、めげません。
忘れたら、また覚えましょう。
そのやり方では正解は出せないということを、まず覚えましょう。
れを思い出して、立ち止まれるようになれば、きっと変わると思います。
がんばれ、がんばれ。



  


  • Posted by セギ at 15:17Comments(0)算数・数学