たまりば

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2012年10月08日

高柄山を歩きました 2012年10月


10月8日体育の日、高柄山を歩いてきました。
高柄山は、中央線沿線の低山。タカツカヤマと読みます。
駅から歩いていける山なのですが、多少険しいせいか、あまり人が来ない、静かな山です。
秋晴れの休日だったのに、私が出会った登山者は、15人ほど。
私は、普通のガイドブックに載っているのとは逆コースを歩きましたので、これが本日の登山者全員である可能性もあります。
お隣りの倉岳山なら、この10倍は登山者がいたはず。
山の人気・不人気って不思議ですね。

中央線上野原駅で下車。桂川橋を渡り、集落を通り、墓地を右手に御前山登山口へ。
え、ここ?と驚く、狭い登山口でした。
そして、いきなりの階段上の急登。
夏草がまだ生い茂っているせいもあるでしょうが、人1人やっと通れる狭さの登山道です。
少し広くなったと思ったら、傾斜が急すぎて、そこら中にトラロープが張ってあります。
えらいところに来てしまったかもしれない。
朝から、プレッシャーを感じながら歩きました。
駅から30分しか歩いていないのに。
電車の音は、ゴーゴー聞こえてくるのに。
それでも、この山、今日は、私しか来ていない可能性があると感じると、深山と同じ気持ちになってしまいます。
古いトラロープはいつ切れるかわかりませんので、あまり体重をかけず、信用せずに急登を登っていくと、人影が見えました。
先行者がいた!
さらに驚いたことには、小さな男の子と、若いお母さんでした。

「よくこんな山に来ましたね」
私自身が精神的にきついと感じていましたので、つい余計なことを言ってしまうと、若いお母さんは、
「こんなだと、知らなかったんです。後悔してます」
と答えました。
急とはいえ、距離は短いんですが、でも、この先も、どれだけやばいところがあるか、この山、よくわかりません。
とりあえず、追い抜かせていただき、先へ。
トラロープは、延々張られています。

急登を登ること30分。鶴島御前山山頂に着きました。10:15。
山頂の標識が、また、難解。
私が登ってきた方向は、「墓地コースを経て上野原駅へ」。
道なりに進む方向は、「鶴鉱泉を経て上野原駅へ」。
まだ朝だというのに、駅に戻ってしまいそうです。
私は、高柄山に縦走したいんですが。
(^_^;)

ともかく、登山地図では、道なりに先に進んで行けば良いはずなので、「鶴鉱泉を経て上野原駅へ」の道標通りに進みました。
結果的に、それで良かったですが、この山、道標も何のトラップ?という印象で、やはり、かなりやばいです。

しばらくは、尾根上を歩くと、分岐。
道標はありません。
直進すると、岩が2つ、爪のように立っていて、その向こうには、高柄山が見えます。
でも、そこは行きどまり。
右に折れる道はあるようですが、蜘蛛の巣があり、長い間、人が通った様子がありません。
だから、左の下り道を選びました。
結果的に、これも、それで良かったです。

急登の後は、当然、急な下り。
昨日の雨で、土が濡れているので、余計に滑ります。
トレッキングポールを持ってくれば良かった。
しばらく下ったところで、「鶴鉱泉」への分岐の標識がありました。10:35。
その標識の通りに行けば、鶴鉱泉経由で、上野原駅に戻ってしまう、ということなんですね。

では、この道は、高柄山への縦走路で間違いないだろう。
斜面につけられた細い登山道を登っていきました。
ときどき、左手には、樹間から、ゴルフ場が見えます。
地図と全て一致。間違いないです。
やがて道は下っていき、小さな沢。
昨日雨が降ったというのに、枯沢でした。

そこから、登り返しです。
斜面につけられた道は、全体に細い。
木の根や岩が段差を作ってくれていたら歩きやすいのですが、そういうものはなく、のっぺりとした坂です。
私は、こういう道、下るよりは、上るほうが好きです。
体力的には、上るほうがきついですが、こういう下りは、精神的に疲れます。
自分にあったコースとして、私が上野原駅から登ったのは、間違いではないだろう。
ガイドブックでは、私が今日歩いたのと逆コースが紹介されている場合が多いようです。


山は、登ったら、下りなければならない。

先週の日曜日、『世界の果てまでイッテQ』というテレビ番組で、タレントのイモトアヤコさんが、マッターホルンに登った様子が放映されました。
バラエティ番組ですから、主な視聴者は若い子なのでしょう。
「イモトすげえっ」
という賛辞が、ツイッターには多く寄せられていました。
「感動をありがとう!」
「勇気をありがとう!」
みたいな話にもなっていて、さすがにそれはどうなんだろう?とも感じたのですが、そういうところから勇気をもらって、自分も頑張ろうと思う子はいるでしょうし、それはそれで悪くありません。

1人の人が、野口健さんに質問をしたところから、雲行きが怪しくなりました。
「イモトさんは、下山にヘリを使っていましたが、登山ってそういうものなんですか?」
この質問、無視しても良かったんじゃないかと私は思います。
質問した人は、答えはわかっていたと思いますから。

野口健さんは、
「イモトさん、ヘリで下山したんですか(笑)僕は、それは登山ではないと思います」
とツイッター上で答えました。
そこから、ネットは大もめです。
(^_^;)

自分の登った山を自分で下りられず、ヘリで下山。
それは、登山ではないと私も思います。
でも、あの番組を見ている子の大半は、登山なんて知らない。
話がかみあうとは思えません。

こういうことは、他にもあります。
「それは、SFではない」
「それは、詩ではない」
「それは、文学ではない」
そのように一言で否定されたら、イラッとし、カチンとくることがありますよね。
では「SFとは何なのか」と尋ねても、明確な答えが得られないことのほうが多いのですし。
そんなことは、簡単に説明できることではないですから。

何だかわからないことを根拠に全否定される。
イラッとしますよね。(^_^;)
「それは、芸術ではない」
「それは、ジャズではない」
「それは、映画ではない」
いろいろあります。
わかる人には明瞭に見える境界線。
でも、簡単に説明できることではない。

イモトさんを擁護する人たちの気持ちも、わかります。
マッターホルンは、登山シーズンの終わり。
少し積雪があり、ベストコンディションとは言えない条件でした。
登るのに、時間がかかります。
下りる時間を確保できない。
しかし、中止するわけにはいかない。
マッターホルンに登らないと、特番が成立しない。
登るのは、登山と真摯に向き合っている市民クライマー、というわけではなく、タレントです。
とにかく、登ればいいんです。
番組側からか、現地ガイドからか、提案したのは本当はどちらなのか、真実はわからないけれど、下山はヘリを使用するというのは、安全面と番組の成立と、両方を考えた苦肉の策だったんじゃないでしょうか。
今回、イモトさんがすごく頑張ったということと、あれが登山ではないということは、両方認められることだと思います。

私は、イモトさんが山に登るときは、必ずあの番組を見ているのですが、見ていて気持ちいいのは、彼女が、決して自惚れないこと。
常に謙虚です。
勘違いをしません。
「アルピニストとしての成長を」なんて言うときは、冗談であって、誰も、そんなこと本気で思っていない。
本気で思っていないけど、山というのは、やっぱり、努力しないと登れない。
そこらへんのバランスが絶妙で、面白いです。
イモトさんが少しずつ上手くなっていくのを見るのも、楽しみ。

マッターホルンというのが、また絶妙な山です。
山歩きが大好きな日本の中高年。
金銭的に余裕のある人は、海外にも行きます。

エベレスト街道とか、キリマンジャロくらいですと、誰でも歩けます。
まだ「登山」というレベルではなく、山歩きです。
高山病のリスクはありますが。

モンブランも、日本でひと冬、雪の上を歩く練習をすれば、登れるみたいです。
以前、お世話になっていたガイドさんに、
「私、モンブラン、登れますか?」
と質問したら、変な顔をされました。
「登れますけど、登りたいんですか?」

マッターホルンは、少し人を選ぶ山です。
登山ツアーもあるので、中高年の山好きが、たくさんチャレンジしていますし、登れてしまう人も結構いるのですが、登るのが遅いと、安全に下山できなくなるので、現地ガイドに強制的に途中で下山されられてしまいます。
しかし、以前、「世界の名峰グレートサミッツ」という番組で、NHKの女性ディレクターがマッターホルンに登ったときも、今回のイモトさんと同じくへっぴり腰で、もたもたしていて、何だか私とレベルが大差ない気がします。
私でも登れるかも。

高柄山の下りが急で怖いとか言っといて、どの口がそれを言うか、ですね。
(*^_^*)
しかし、マンツーマンガイドで登るということは、それくらい楽なんです。
ロープさえ結べば、客は怖くありません。
ガイドさんが登らせてくれます。
私も結構ホイホイ登っていました。

だけど、そんなの、自分の実力じゃないんですよね。
(-_-;)

ガイドとではなく、自力でマッターホルンに登れたら、ヨーロッパでは、アルパインクライミングの初級者として認められるらしいです。
カッコいいなあ。
そうして経験をたくさん積んで、いつか、未踏の岩壁とか、登っちゃうんだなあ。

しかし、私には、そもそも、ガイド登山をするお金も暇も今はありません。
金と暇も実力のうち。
日に日に技術は落ちていく。
以前は登れた岩も、今の私にはもう無理かもしれません。
せめて日帰り山歩きを楽しもう。
(*^^)v

そう、現実は、高柄山。
これが、なかなかに急で、人が少なくて、不安にさせる山です。
新矢ノ根峠。11:30。
そこからは尾根歩きだから大丈夫。
と思ったら、確かに快適な尾根道も多いのですが、またもトラロープの張られた急登が何箇所も出てきました。
このあたりのトラロープは新しく、最近整備された様子です。
「危険」「通行注意」と書かれた黄色いビニールテープが張ってあるところもありました。
しかも、今度は、1か所あたりが、結構長いです。
逆方向から歩いてきている人とすれ違い始めましたが、片手にトラロープをつかみ、片手でトレッキングポールをつき、そろそろと下っていく人を見ると、やはり、この山、逆コースは精神的につらいわ、と感じました。
なんで下りが難しいコースのほうがガイドブックに紹介されているんだろう。
それは、紹介している山岳ライターに登山技術があるので、その程度の下りは全然気にならないからかなあ。
体力だけで山を量るので、登りのゆるいコースを紹介するのかもしれません。

高柄山山頂到着。12:30。
今回は、おにぎりもおいしく食べることができました。
ポットに熱いカフェオレも詰めてきました。
空が高い。
秋だなあ。

さて、下山。12:50。
高柄山から、大地峠に向かって下っていきました。
登山道には、コウヤボウキの花。ヤマハッカ。アキノキリンソウ。
高柄山は、花の多い山でした。
木の根が良い段差を作ってくれていて、こちらの道は、下りやすかったです。

尾根道の小さな登り下りを繰り返し、そろそろ下山路への分岐が気になります。
千足峠からも「四方津へ」という道標がありますが、道が少し荒れているらしいので、見送り、大地峠から下るつもりでいました。
でも、分岐を見過ごしてしまいました。
正確に言えば、分岐の道標はちゃんと確認したのですが、この分岐も、まだ違うのだ、と思ってしまったんです。
舗装された林道を横切って、登り返し。
そこから10分のところにあるはずの道標が、すぐ出てきたので、まだこれじゃないだろうと思ってしまいました。

まだまだ分岐は先のつもりで、さらにしばらく歩いて、別の道標を発見して、意味がよくわからず、立ち止まりました。
1:55。
いろんな方向とその行先は示しているのですが、肝心の、今いるここは、どこなのかが書いてない。
四方津は、戻る方向に矢印がついていました。
正確には、今来た尾根道とは違う道をV字を描くように戻る道を示していました。

地形から、道標の立つそこが大地峠であると判断し、道標の通りに、シモバシラの花が道を塞ぐほど咲いている道に入っていくと、ふっとまた尾根に戻ってしまいました。
そこにも、小さい道標。
ここで、一気に方向感覚が狂いました。
登山地図しか持ってこなかったことを後悔。
25000分の1地形図とコンパスがあれば、もっとちゃんと地形を判断できるのに。
普段はしないのですが、登山地図を回して、確認。
地図は頭の中で回すもの。
というより、自分と地面を地図の向きに回して判断するもの。
地図を回してたらダメなんですが。
高柄山がこっちの方向で、大丸山がこっちの方向なら、矢印が何もない、こっちの道が、多分、四方津駅への道。

でも、さっきの尾根をただ戻っているような、変な不安をぬぐえません。
舗装された林道がまた見えてきて、階段を下りていき、林道を渡りました。
さっきとは違う道だと明らかにわかるのに、同じように見えてきます。

これは、やばいぞ、と思いながら、林道を渡って、「四方津駅へ」の道標を発見し、少し安心。
しかし、すぐに突き当り、丁字路。道標はなし。
普通とは逆コースを歩いていることが、ここで災いし始めていました。
ついでに言えば、林道が伸びていて、登山地図と実際が違うことも、大きな災いです。
しかし、道標がないのは、逆コースで来た人は、ここの丁字路を迷うわけがないということなのでしょう。
ということは、逆コースの人は、普通に登ってきているのだ。
ならば、普通に下るほうに曲がればいい。
ということで、左折。
左下には、舗装された林道が見えました。
それも下っています。
多分間違いはない。
でも、不安です。
そして、その不安は、以後、1時間続きました。
それきり、1時間、道標はなかったんです。
林道と並走するように続く登山道。
少し離れては、また林道が見えてくる繰り返しでしたが、やがて、林道と別れ、道は暗い感じになってきました。
緩い下りの広い道。
整備されたとても歩き易い道ですが、不安なときは、そんなことはどうでもよくなります。
ショッキングピンクのリボンは、うるさいくらい張られていて、こっちだよ、こっちだよ、といざなってくれるのですが、大量のリボンより、1本の道標。
紙に書いてビニール張ってあるだけのでいいから、1枚、掲示が欲しい、とつくづく思いました。

樹間からは、奥多摩の山々が遠く見えています。
中央線沿線の市街地も見えます。
方向的には間違っていないのですが、1度不安になると、確信が持てず、歩きながらも不安が増します。
もしも道を間違えて1時間も下ったら、ほぼ取り返しがつかない。
ですが、これだけピンクのリボンがあり、登山道が明瞭ならば、どこかの道路には出るのだろうし、そこから、バスなりタクシーなり使って、何とか帰れるだろう。
そう覚悟を決めて歩いていくと、道はだんだんえぐれてきて、もこもこしているのに段差があったりもして、何だか荒れてきました。
でも、正しい道でした。
ついに道標。
「四方津駅まで、40分」
やったー。
あとは、ほどなく舗装道路に出て、そこからは道標も豊富でした。
川合の集落で、通りかかった人に「お帰りなさい」と言われ、それがしみじみ嬉しくて、会釈を返しました。
四方津駅着。3:25。
  


  • Posted by セギ at 23:28Comments(2)