たまりば

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2012年02月27日

御正体山に登ってきました


昨日、2月26日(日)、山梨県の御正体山に登ってきました。
すごく久しぶりにツアー登山に参加しました。

私は、30歳を過ぎて山を始めました。
最初は、1人で近郊の低山を歩き、山の専門誌や教本を読んで勉強し、それから、ツアー会社の登山教室に参加するようになりました。
登山教室には雪山もあり、そこから雪山をやり始め、でも、ツアーでは難しい山には行けないので、個人ガイドさんについて、アルパインクライミングをやるようになりました。
無雪期は、谷川岳一ノ倉沢とか。
積雪期は、八ヶ岳とか。
アルパインクライミングの入門ルートばかりです。
正直、あまり上手くありません。
(^_^;)
今は、お金も暇もなくなり、そっちのほうはお休みし、1人で山歩きを楽しんでいます。

1人でテントを担いで縦走していると、山岳会の人に誘われたりもします。
「うちの会は、しばりが緩いから楽しいよ。月に1度の例会に顔を出せば、あとは、好きな山行だけ参加すればいいから」
と言うのですが、その月に1度の例会が無理なんですよ。
私は、塾講師。
平日の夜の集まりには、参加できません。
「月に一度の例会に参加する」という縛りが、私には、一番厳しいです。
(^_^;)

ただ、山の世界は特殊です。
仕事を優先する人を別に否定はしないですが、
「あ。そういう価値観の人ね」、と切り捨てることはあります。
生活を支えるための仕事は必要。
でも、それは、山より優先されるものではない。
会社をやめずに山に打ち込むことが人生の目標。
そんな考えの人が結構いる世界です。
会社をやめずにヒマラヤやアラスカの遠征に参加するには、どうするか。
それができる奴が尊敬されるのですよ。
何だ、それ。
(*^_^*)


話は戻って。
昨日は、ツアー会社の登山教室。
目的地は、御正体山。標高1681m。
雪の山歩き教室・初級者コース。
6本爪軽アイゼンとストックで楽しく歩くコースです。
とはいえ、装備リストを見ると、「定価4万円相当以上の登山靴」「保温力に優れた雪山用ゴアテックス製の上下」など、3000m峰に登るような重装備が書いてありました。

要るの?そんな装備?

私は、靴に合わせてアイゼンを調節してあります。
6本爪軽アイゼンに合わせてあるのは、2万円相当の革製の軽登山靴。
10本爪アイゼンに合わせてあるのは、4万円相当の革製の雪山用登山靴。
12本爪アイゼンに合わせてあるのは、5万円相当の新素材の雪山用登山靴。
今回、歩き出しは、雪がないかもしれません。
泥の中を、雪山用の登山靴で歩くのは、嫌だ。
そんなわけで、装備リストに反して、安い靴で参加しました。
申し訳ありません。

1000mの山を行動している場合、雪山用アウターを着たら汗ばむのですが、さすがにそれも持っていかないと、装備不良で参加を断られる可能性を感じ、雪山用アウター上下は持参しました。
着ませんでしたけど。

この過剰な装備リストは何なんだろう、と思いながら参加すると、参加者の大半が、12本爪アイゼンなのに、さらに驚愕。
1681mの雪山ハイキングに、12本爪?
しかも、登山口から、アイゼン装着。
土曜日に、山間部では雪が降りましたので、それまでの凍結した雪面にうっすらと雪が乗り、歩き易い状態になっていて、これは、アイゼンなしで歩いたほうが練習になるし、楽しいのになあ、と思うのですが、しかし、参加者の様子を見ていると、やっぱりアイゼンは着けたほうがいいんだろうなあ、とも思いました。
アイゼンを着けていても、何かズルズル滑り落ちながら歩いている人がいます。
12本爪出刃アイゼンで歩く技量がなく、前刃が邪魔なのか、今にも転びそうにヨタヨタしている人が大半です。
でも、アイゼンを着けていなかったら、もっと転ぶだろう。
初級者教室ですから、アイゼンを着けて歩く練習になるし、これでいいんだろうなと思いました。
一歩踏み間違えただけで致命傷になるような場所では練習できないですし。

私のすぐ前を歩く人は、うーむ、やっぱりアイゼンが曲がっていました。
靴底とアイゼンが合っていないんです。
しかも、歩き方に癖のある人でした。
靴底の外側ばかり減るタイプの人。
アイゼンの刃が、雪面に斜めに入るので、12本爪でも、効いているのは、3本程度。
しかも、斜めですから、効きが悪い。

ストックも、変に長めにしてあります。
登りでストックが長いと、これも雪面に正しくささらず、ストックは、しょっちゅう後ろに跳ねていました。
登りの場合、ストックは、地面についたときに、ひじが軽く曲がる程度に調節します。
スキーではないので、ストックは跳ね上げません。
山のストックは、自分の身体から後ろには行かせないものです。
ダブルストックを利用し、跳ね上げて推進力を上げる歩き方は、海外のトレッキングで行うもので、日本の山岳には向きません。
だだっ広くてゆるやかな道を何日も歩く場合での推進力をつける歩き方を、日本の狭くて急峻な山道で行っても、バランスはとれないし、後ろで怪我人が続出します。

でも、その人は、常連客のようで、添乗員さんと親しげで、言葉の端々に「自分は上手い」と思っている自信が見られます。
顔をつぶしても気の毒だし、私の言うことを理解してもらえる可能性も低いので、何も言いませんでした。
とりあえず、今回のレベルの雪山歩きを楽しんでいる分には、大丈夫ですし。

でも、私は、ときどき、添乗員を睨みました。
心の中でつぶやきます。

「登山客に、本当のことを伝えていかなかったら、その先に何が起こるか、わかっているんでしょうね」

添乗員の気持ちは、わかるんです。
本当のことを言ったら、客は傷ついて、もう参加しなくなるかもしれません。
だから、筋がいいですよ、とほめなければなりません。
体力ありますね、とほめなければなりません。
技術があるので、安心して見ていられますよ、とほめなければなりません。
皆さんの力なら、経験者コースも大丈夫ですよ、とほめなければなりません。
そうして、またどんどん参加してもらわなければなりません。

経験者コースといっても、大勢で歩けるようなところですから、そんなに危険なわけではないのですし。
やばかったら、すぐ撤退するんですし。
アイゼンもまともに着けられない客でも、面倒みるから、まあ連れて行こう、ということになります。
「あの会社は面倒見がいい」という評判のツアー会社です。
でも、それは、他のツアー会社よりもさらに技術も気持ちも甘い登山客が集まってくるという意味でもあります。
なのに、参加を重ね、自信だけは深めていく。
自分の技量に合わない難しい山に挑戦していく。
それでも、何とか面倒みられるから大丈夫だ、と会社も無理をする。

その先に何が起こるか、もうわかっていることです。
装備リストだけ、やたら重装備にしたところで、責任を回避できるわけではないだろう。

山の中で、そんなことを考えて、何となく暗い気持ちになっていると、小休憩のときに、添乗員の近くに寄っていった参加者が、次のツアーのことで相談をしていました。
経験者向けの浅間前掛山ツアーに行きたいというのです。
少し岩場があり、また、雪面がクラストしている可能性のある山です。
まあ、その場合は、登頂はあきらめ、全員Uターンするのだとしても。
添乗員は、首を横に振りました。
「まだ、やめておきましょう。前掛山は、ちょっと難しいところがあるから」

なるほど。
個々の客のレベルをちゃんと見ているんだ。

登りの途中で、別の客のアイゼンが壊れました。
アイゼンの刃と枠とをつなぐビスが外れてしまったようです。
添乗員は、持っていた針金で応急手当。
そして、山頂で、その客に簡易ハーネスを装着させ、自分もハーネスを着け、もしも途中でまたアイゼンが壊れた場合にはロープを結んで下りる準備をしていました。

繰り返しますが、たいした山ではありません。
昨日の雪質ならば、アイゼンなんかなくても下りられます。
それでも。

昨日、私が参加した雪山教室のツアー会社は、数年前の夏、北海道で、登山史に永久に残るだろう悲惨な遭難事件を起こしました。
その会社の、これが現在の姿なのだと、いろいろなことを感じた1日でした。
  


  • Posted by セギ at 13:22Comments(1)