たまりば

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2011年12月02日

山のリスク


「三つ星」の指定を受け、ちょっとした高尾山ブームが起きた頃から、高尾山についてのガイドマガジンがたくさん発売されるようになりました。
今も発売され続けています。
そんな中で、ひと味違うのが、上の写真のガイドマガジン。
発行が山岳雑誌「山と渓谷」を出している山と渓谷社なんです。
旅行雑誌系の会社の出しているガイドマガジンと、どこが違うのか?
説教くさくならないように、でも、随所に、安全面への言及がなされているんです。

高尾山は、事故が増えています。
私も、複数の事故を目撃しています。
たとえば、小仏峠近くの滑りやすい道で転び、骨折した人。
私が通りかかったときは、怪我人は毛布でくるまれ、ソリのようなものに乗せられ、ロープで固定され、搬送されていくところでした。
周囲の人の話では、怪我をしたのは、ハイキング姿の女性だったとのことでした。
周りには、救急隊員や山岳救助隊員が10人以上。
ものものしい雰囲気でした。

また別のとき。
あれは、2008年11月23日。
三ツ星ブームと紅葉と祝日が重なり、高尾山の入山者は1日で7万人に達しました。
いまだに破られていない異常な記録です。
陣馬山から呑気に縦走してきた私は、高尾山の異様な混雑に気づいたときには、もう巻き込まれ、逃げ場を失っていました。
ケーブルカーやリフトは、3時間待ち。
歩きやすい1号路からも観光客があふれだし、装備不良な状態で、登山道である稲荷山コースを下り、不慣れなために上手く歩けず、さらに渋滞を悪化させたようでした。
登山道は人であふれ、身動きできなくなっていました。
そのまま日没を迎え、登山道は闇に包まれ、ヘッドランプを持たない人たちは、足元が暗くて歩けなくなり、転んで怪我をしてしまいました。
救急要請は、たしか、あの日だけで9件、だったかな。

その後も、休日の高尾山の上空を防災ヘリが飛んだり、救急車が日影沢林道を上がってくるのは、そう珍しい光景ではありません。

山は、どれほど気をつけても、事故が起こります。
けれど、高尾山は、入口が観光地であるため、そこが山であることを自覚せずに来てしまう人がたくさんいます。
小学生はスニーカーで遠足に来ますが、子どもは、身体が柔らかい。
転んでも、かすり傷で帰ってきます。
でも、大人が同じ感覚でいるのは危険です。
1号路とケーブルとリフトだけ使って帰るのなら、それでも大丈夫です。
しかし、1本道を変えれば、そこは、低くても山。
捻挫・骨折のリスクは、常にあります。

上の写真のガイドマガジンは、2009年5月、あの高尾山の最悪の日から半年後に発売されました。
随所に、やわらかい言葉でアドバイスがなされています。

山には、食べ物・飲み物を持って行こう。
あったかい服を持って行こう。
山の天気は変わりやすいよ。
街灯がないから、日が暮れると真っ暗になるよ。

そして、見開き2ページで、靴底の写真が載っています。
どんな靴底なら、どこを歩くことが可能か。
「軽登山靴」「トレッキング・シューズ」と言われてもわからない初心者のために。

高尾山のおいしいお店。
売れているお土産。
きれいな景色はどこで見られるか。
それも大切だけど、でも、初心者に、どうしても伝えたいことがある。
山岳雑誌ならではの信念に貫かれた、でも、表面はとてもやわらかいガイドマガジン。

地図やコース案内も読みやすいし、写真がきれいだし、読み物記事も充実しているので、今でも、ときどき取り出して読み返します。

明後日の日曜日は、みたか身の丈起業塾3期生で奥高尾を歩きます。
今回も、無事に下山できますように。
  


  • Posted by セギ at 13:22Comments(1)