たまりば

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2011年11月22日

25歳の我が子をイメージして



秋も深まり、日曜日は、大学入試の模擬試験の会場責任者の仕事が多く入ります。
もう6年ほど、この仕事をしています。
年に15日から20日ほどしかない仕事ですが、何年も続けていますと、やはり、そこから感じることがあります。

2~3年前のことになりますが、ある大学会場の責任者をしたときのことです。
もうすぐ1時間目が始まるという頃、運営本部から電話がかかってきました。
受験生のお母様から、クレームの電話が来ている、というのです。
そのお母様のお子さんが、入口にある教室案内の大掲示を読み取ることができず、わからないからと、家に帰ってきた。
「これが本番だったら、どうしてくれるんですか」
と、お母様は、非常に怒っているとのこと。
うーん。

本当に、これが本番の大学入試だったら、どうするつもりなんだろう?

受験番号の何番から何番までは何階の何番教室、と一覧になっている大掲示は、それほど読み取りにくいものではありません。
ただ、それが読み取れない高校生が存在する、とは感じていました。
掲示に書いてあることが、読み取れない。
掲示に書いてあることの中から、自分に必要な情報を読み取るという、こう書くと難しそうですが、生活していくのに必要なことが、できない高校生がいる。

とはいえ。
大掲示が読み取れなかったら、大掲示の横に立っている誘導係に、自分の受験番号を見せて尋ねたらいいのです。
読み取れない子が増えたから、そういう配慮をしています。

・・・・模試を受けたくなかったんじゃ、ないかなあ。
根拠があるわけではありませんが、電話を切って、私はそう考えていました。
本当に本当に模試を受けたかったら、訊けばいい。
他人に訊くこともせず、家に帰ってしまった。
既に、気持ちで負けています。
本当は、模試を受けたくなかったんじゃないかなあ。
悪い結果が出るのが、嫌だったんじゃないかなあ。
掲示がよくわからなかったと、会場側のせいにすれば、お母さんの怒りがそっちに向くのを、その子は、知っていたんじゃないかなあ。

掲示をしてありましたし、誘導係も配置してありましたから、こちらにミスはなかったということで、それ以上の問題には発展しませんでした。

ただ、切ない。

そういう親子関係は、そのとき突然始まったわけではなく、似たようなことを繰り返してきた可能性があります。
子どもが、もっと幼い頃から、ずっと。
かばうから、子どもは成長できないのですが、子どもが成長できないから、親は、かばい続けなければなりません。
それを批判したり、否定したりしても、解決しません。
お母さんも、苦しいと思います。

模試運営側としては、大掲示の前に立ったまま、なかなかその場を動かない子には、こちらから積極的に声をかけ誘導するよう、指導しているのですが、誘導係も学生バイトですから、暗い顔で「おはようございます」を言うのが精一杯なのが実状です。
単発のバイトで、その朝、突然、誘導係を任命され、笑顔と大きい声と積極的な気配りで見事にやり通せたら、それは凄い人材ですが、そういうことが求められていると気がついていない子が大半です。
レベルの低い雑用係を言いつけられた、と思っているのかもしれません。
誘導係って、会場の「顔」なんだけどなあ。
大人が、そういうことを高く評価する、ということに気がついていないのでしょう。
ただ、質問されれば、一所懸命に説明する子が多いです。
それをさぼる子は、最近の学生バイトでは見かけません。


私が去年まで勤めていた塾の副学院長が、保護者会で十八番にしている話がありました。
「25歳の我が子をイメージして、子育てをしてください」というもの。
25歳の我が子に、どのようであってほしいか。
現実には、25歳よりももっと前に、就活という大きな関門が待っています。

画像は、センニンソウのそう果。
  


  • Posted by セギ at 14:35Comments(2)講師日記