たまりば

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2011年07月19日

富士山に必ず登頂する方法

 



土曜の夜から日曜にかけて、富士山に登ってきました。
ご来光を見て、山頂のお鉢めぐりも満喫し、ザクザク歩いていた下山道で、前を行く女の子二人の微妙な空気に気づきました。
「そうだよね。八合目だったら、そうだねえ」
うん?と思ってしばらく話を聞いていると、1人は山頂でご来光を見たのですが、もう1人は高山病で倒れ、八合目の小屋で寝ていたらしいのです。
初めての富士山の山頂から見たもの全て、感動したこと全て、本当は話したい。
でも、あんまり興奮するのは、具合が悪くなって寝ていた友達に悪い。
寝ていた友達のほうでも、友達がどんなに感動しているか、実はわかっている。
ある程度は話を聞かなくちゃ悪い。
だけど、頂上の話を聞くのは、正直、楽しいわけではない。
そういう、互いに気を遣いあう、微妙な空気でした。

頃合いを見計らい、2人を追い越して、ざれた道をザクザク下りながら、考えました。
富士山は、高山病のリスクを軽減する登り方がある。
それさえ実行したら、皆で楽に山頂を極め、ご来光の美しさに泣いて、大興奮して、調子に乗って万歳三唱して、キヤアキャア言いながら下山し、温泉に入って、ビールで乾杯して、大はしゃぎできるのに。
夏の富士山は、そういう山なのに。

体力に自信がなく、高山病になりそうな予感がする人は、八合目の山小屋で半泊するのがベストです。
タイムスケジュールとしては、昼頃、五合目に到着。
そこでお昼を食べたり、お土産を物色したりして、2時間、高度順応。
それから歩きだし、夕方、八合目に到着。
夕食を食べて、仮眠。
深夜、出発。
山頂でご来光。

このスケジュールなら、余程体調が悪いか、高所に弱い体質の場合を除き、高山病で行動不能になることは、まず、ありません。
多くの登山ツアーがこのスケジュールで動き、富士山の現地ガイドたちが、登山客全員を無事山頂に案内しているのが、このスケジュールです。

とはいえ、私は、このスケジュールではなく、夜、バスで五合目に到着し、そのまま登って山頂でご来光を迎えるタイムスケジュールで動いています。
なぜかといえば、富士山は、晴れた日でなければ登ってもつまらない山。
ご来光が見られないし、天気が悪いと不快感が増します。
独立峰ですので、風雨が激しく、荒れれば、登れない可能性が高くなります。
天気図を睨み、気象情報を読み続けて、高速バスの予約をするのが、早くて三日前。
小屋の予約が取れる可能性はほとんどありません。
絶対に晴天の日に登りたい。
ならば、夜間登山となります。

しかし、夜、五合目に到着して夜を徹して登るやり方は、もっとも登頂率の低い方法です。
この登り方の場合の登頂率は、6~7割であると聞いたことがあります。
この数字、嫌ですね。
3人で登ったら、1人は高山病で倒れる。
ぶっ倒れた友達は、八合目の小屋に預けて、自分だけ登頂するのも、別にいいんですが、下山してから、大はしゃぎできません。
変な気の遣い方を互いにしなければならなくて、面倒くさいですよ。
全員で登らなかったら、やっぱり楽しくないんです。
楽しくないのに、山なんか行っても、疲れるだけです。
実際、七合目手前あたりから、登山道でうずくまっている人が現れ始め、八合目を過ぎると、もう完全に道で倒れている人も増えてきます。
単なる休憩をとっている人とは、様子が一目で違います。
登山道は、登るにつれて、死屍累々という様相を呈してきます。
それが、夜間登山です。

富士山は、標高3776m。
日本アルプスの山々が、3000mを越えるか越えないかでひしめきあっているのと比べて、ダントツの高さを誇ります。
日本で唯一、本格的な高山病になりうる山です。
高度障害というのは、低所から一気に上がる場合、ならない人はいません。
それが自覚症状が出るほどになるか、ならないかの違いがあるだけです。
原因は、高所のための酸欠。
もう1つは、気圧が下がるため、乾燥しやすくなり、体内の水分が欠乏すること。
この2つが、頭痛・吐き気を起こします。
ひどくなると行動不能となり、重い場合は、大至急下山する必要が生じます。

高山病を防ぐには。
酸素が足りないことを自覚して行動すること。
水分が足りないことを自覚して行動すること。
実は、この2つを守るだけなんです。

できれば、高速の最終バスより1本早いバスに乗り、五合目で最低1時間の高度順応を図る。
1時間なんてすぐです。
下界の薄着から、山歩きができるような姿に着替えて、食事をして、外国人に道をきかれたら説明して、なんてことをやっている間にたちまち1時間は過ぎてしまいます。

最終バスしか取れなかったら、30分でもいいから、少しでも長く五合目にいる。

そして、とにかく、ゆっくり歩き出す。
土曜日の夜も、私は、同じバスの乗客や、次のバスの乗客ほぼ全員に追い抜かれたのですが、おそらく、山頂に着いたのは、私のほうが早かったと思います。
富士山は、ゆっくり歩けば早く着く。
そういう特別な山です。
河口湖口五合目から六合目は、下り道ですし、歩き始めたばかりで元気いっぱいなので、見ているほうがぞっとするようなスピードで歩いていく人が多いですが、それは、自ら高山病を招いているだけです。
調子に乗れば20分で歩いてしまう六合目までを、1時間かけて歩く。
ざわわ・ざわわ・ざわわー、と頭の中で歌いながら歩く。
「ざわわ」で一歩です。
これは、富士山で働く登山ガイドが作るペースです。
びっくりするくらい遅く歩くのがコツ。

何しろ、酸素が薄いんです。
息切れするような行動を取ったら、弱い人から、酸欠で倒れるんです。
酸素スプレーなんて、気休めです。
常に吸いながら歩いていけるわけではないんですから。
酸素スプレー、私は持ちませんが、休憩のときの楽しみなおやつのつもりで持っていくのは、いいと思います。
でも、あれが高山病を防いでくれる可能性は、ありません。
息切れがするような行動はしないこと。
それだけで、楽に山頂を極めることができます。
ゆっくり歩けば、別に疲れませんから、休憩は、1時間に1回程度で済みます。
ガシガシ歩いては大休止しているから、遅い私に抜かれ、そのうち、頭痛がしてきて、行動不能になるんですよ。

それでも、息が切れてきたら、深呼吸。
とにかく酸素を吸おうと、パクパクと浅い呼吸をしがちですが、肺の中に入っているものを吐いてしまわなければ、新鮮な空気は入ってきません。
まず、吐く。
風船を膨らませるイメージで、深く吐く。
そうすれば、自然に、酸素が肺に入ってきます。
深呼吸は、吸うことよりも吐くことに集中。
そして、喉が渇いていなくても、意識して、水分を補給。

ストックは、特に下山のバランス保持に有効なので、私も富士山には持っていきますが、登りでは使いません。
河口湖口(吉田口)登山道は、七合目から九合目まで、岩場が続きます。
夜間でも歩ける程度の易しい岩場ですが、ストックは、邪魔になる場合のほうが多いです。
ストックのやり場ばかり考えて、悪戦苦闘しながら登ると、気がつくと無呼吸で登ってしまいます。
高山病になります。
両手で岩をつかみ、バランスを保持しながら、意識して呼吸し、ゆっくり岩から岩へと移動しましょう。

混雑しているときは、ご来光に間にあうか不安になることがありますが、ゆっくりペースで登っても、大渋滞に巻き込まれても、六時間あれば五合目から山頂まで行けます。
それに、河口湖口(吉田口)の場合、九合目から上に出れば、斜面のどこからでも、ご来光が見えます。
むしろ、山頂で長い時間寒さに耐え、混雑に押しあいへしあいし、場所とり競争に疲れ果てて見るよりも、鳥居直下の安定した岩場に座って待つほうが、ご来光のベストショットも撮影できます。
太陽は、辺りがかなり明るくなり、もうヘッドランプも要らなくなってから、三日月に見える山中湖方向から、ゆっくりと登ってきます。
最後まで、焦らず、ゆっくりゆっくり。

自分の強さを誇るような登り方ではなく、弱い人を常に気遣う登り方をしてください。

そうやって登って初めて、ご来光を心から拝むことができ、山頂で笑って万歳ができ、感動を大声で言い合っても誰にも遠慮の要らない、楽しい打ち上げが待っています。





  


  • Posted by セギ at 00:36Comments(4)