たまりば

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2011年03月24日

やっぱり原発のこと






数年前、頼まれて、小学生に中学受験のための社会を教えていた。

その子の持っていたカラフルな塾のテキストは、子どもよりもむしろ大人が読んで面白いものだった。カラー写真が多く、読み物記事も沢山入っている。わかりやすく説明してくれているので、ああ、そういうことだったのか、と大人のほうが面白く読める。
子どもは、勉強するために与えられたテキストというだけで、つまらなく思えてしまうのだろう、面白いなんて決して言わないが。

エネルギー問題は、環境問題とからめて、大きな単元の1つだ。
中学受験生は、日本地図に描かれた点の集まりを見て、どういう種類の発電所の分布図か、見分けることができなければならない。
海岸部にいくつか点が打たれてあるのが、原子力発電所分布図。
都市部も含め、日本中にたくさん点が打たれてあるのが、火力発電所分布図。
山岳地帯に点在しているのが、水力発電所分布図。

それぞれの発電方法の長所と短所も記述できなければならない。

◎原子力発電
 長所 大量の発電ができ、二酸化炭素放出量が少ない。
 短所 放射線がもれるおそれがある。
◎火力発電
 長所 都市部周辺にも立地が可能。
 短所 二酸化炭素放出量が多い。
◎水力発電
 長所 二酸化炭素の放出量が少ない。
 短所 建設場所が限られ、多くの費用がかかる。
◎風力発電
 長所 二酸化炭素の放出量が少ない。
 短所 安定した電力の供給ができないおそれがある。

小学生がこれを記述するのだ。
「人生に必要なものはすべて幼稚園の砂場で学んだ」(ロバート・フルガム)という本があるが、「人生に必要なものはすべて中学受験で学んだ」と言ってもいいかもしれない。

原子力発電所の短所。
放射線がもれるおそれがある。

そうだ。
私たちは、知っていた。
子どもにも、教えていた。
今、それが現実になっただけなのだ。
私たちは、この危険を知っていた。

私が教えていた小学生は、頭はいいのだが、妙にトンチンカンなところのある子だった。
あるとき、短答問題の練習をしていた。

問 日本で、原子力発電所の多い地域はどこか。

正解は、北陸だ。
しかし、彼女は、こう答えた。
「広島」

生徒が間違えても、傷つけるような表情をしてはならない。
なので、無表情が仕事として身についている私だが、そのときは、あまりのことに驚いて、「なんで?」と叫んでしまった。
「広島に、原発があるわけないよ」
「え?なんで?」
彼女は、私の驚き方に、逆に驚いていた。

広島に、原発があるわけない。
でも、それは、私の勝手な思い込みだ。
実際、広島に原発はないが、その理由は、私の憶測だ。本当のところは知らない。
だた、思うだけだ。
広島の人は、原子力の「平和利用」なんて、信じないのではないか。
広島に原発誘致は、不可能だろう。
実際は、三角州は立地に適さないとか何とか、そんな理由があるのかもしれないが。

そんなことを思い出すと、また、私は、自分の本心に気づく。
私は、原子力発電の安全性を信じていなかった。
危険なものだと知っていた。
でも、突然爆発するようなものだとも思っていなかった。
じわじわと危険が広がるが、でも、最終的にはどうにかなるもの。
そんなふうに思っていたのではないか。

水道に、放射性物質が混じっている。
乳児は飲用を控えるように。
昨日流れたこのニュースは、衝撃的だった。
三鷹の水道が、利根川からのものだということさえ、私は知らなかったから。
野菜を洗っても、米をといでも、放射線が混じるんだなあ。
お風呂に入れば、皮膚にまとわりついてくるんだなあ。
微量だけれど。
大人の健康に影響するのではないらしいけれど。

自分に問う。
これは、想像していた範囲のことか?
いや、これは少し違う。
ここまでは、想像できていなかった。

原子力発電の短所  放射線がもれるおそれがある。

この1行を教えたとき、私は、その本当の意味に気づいていなかった。



写真は、南アルプス農鳥岳 大門沢の吊り橋。






  


  • Posted by セギ at 12:55Comments(2)講師日記