たまりば

地域と私・始めの一歩塾 地域と私・始めの一歩塾三鷹市 三鷹市

2018年10月10日

ラジオ講座「ニュースで学ぶ『現代英語』」はお薦めです。

ラジオ講座「ニュースで学ぶ『現代英語』」はお薦めです。

「読む」「聴く」「話す」「書く」の4領域が、高校入試や大学入試に今後どのように影響し、日本人に英語能力にどう影響するか。
いまだに結論は出ていません。
入試に限定せず視野を広げた場合、音声としての英語に触れていくことは、英語教育に必須のことです。

「読む」「書く」は、自宅でもコツコツ学習できますが、問題は「聴く」「話す」力をどう伸ばすか。
うちの教室では、毎回の授業でリスニング問題を解いたり、英検の2次試験の模擬面接を行うなどで「聴く」「話す」演習をしています。
しかし、週1回の授業だけでなく、日常でもっともっと練習できる方法はないだろうか?
できれば、無料で。
あるいは初期費用のみで。
しかも、信頼できる内容の教材で。

そう考えると、NHKラジオ講座がやはり有効です。
街の英会話教室よりもはるかに能力の高い講師が教えてくれて、番組自体に英語教育のノウハウの長い蓄積もあります。
食わず嫌いで避けているのは勿体ないです。

私自身のことで言えば、中学に入学する際、入学案内の書類の1枚に「ラジオ講座『NHK基礎英語』を必ず聴くように」と記された案内が入っていました。
入学式より前にその年度の初回放送が始まるので、事前にそういう連絡をしたようです。
初回放送日・放送時間・NHK第2の周波数がその書類に記されていたと記憶しています。

ラジオ講座を聴かねばならない。
でも、『基礎英語』は朝早くとか、午後とか、夜の6時台とか、変な時間にやっていて、学校が始まったらその時間には聴けない。
ラジオ放送を録音できるようにラジカセが欲しいと、私は母にねだって買ってもらいました。
そのラジカセは、実際にはラジオ講座以外での活用も多かったです。
いえ、ラジオ講座もそこそこ真面目に聴きましたが。

ラジオ講座は、毎晩勉強を開始する良いきっかけでもありました。
ラジオ講座を聴くためにとりあえず机に向かう。
ラジオ講座を聴く。
その後、テキストの日本語訳を見ながら、英語の全文を言えるまで暗唱する。
それから、テキストの日本語訳を見ながら、英語の全文を書く。
テキストを見て、自分の書いたものを添削。

この作業で、当時、40分から50分かかっていました。
月曜から金曜まで毎日これでしたから、学習時間の中で英語に使う時間が随分多かったかもしれません。
しかし、これさえやっていれば、学校の英語の予習・復習はほとんど必要ありませんでした。
他には、テスト前に教科書準拠ワークを解くくらい。
それ以外の英語の勉強は必要なかったのです。
ただ聴くだけでなく、テキストを暗唱したり書いたりする学習が効果的だったのだと思います。

ラジオ講座を聴くために机に向かうのが毎日の習慣になり、いったん机に向かえば弾みがついて英語に続いて他の科目も勉強しましたので、毎日2~3時間の家庭学習も自然に行うことができました。

ただ、これは、私が自ら進んでやっていたから効果的だったことです。
これを強制されたらたまったものではないというのも理解できます。
ラジオ講座については、生徒からは否定的な話を多く聞きます。
いや、むしろ、生徒からラジオ講座について好意的な話を聞いたことがありません。

私立の中学校では『基礎英語』がテスト範囲に含まれることがあります。
しかし、ラジオ講座を聴く習慣を作れない子は多いです。
下手をするとテキストすら買い忘れています。
家にラジオがないし、ラジオの聴き方がわからない、と言う子もいます。
2か月分のラジオ講座のテキストが定期テストの範囲。
文法事項は何とかカバーできても、単語・熟語の数は膨大です。
そして、定期テストで出題されるのは、大半はその単語・熟語なのです。
他をどれだけ指導しても、『基礎英語』からの出題で失点があるので、80点取るのでも必死でした。
「塾で英語を習っているのに、なぜ70点台なの?私は中学時代に英語でそんな点を取ったことがないけど?」
と親から怒られたと、生徒から愚痴を聞かされたりもしました。
『基礎英語』の単語・熟語を宿題にして塾でテストしたりもしましたが、どうも定着が悪く、結局、テスト前には何も覚えていない子もいました。
教科書のほうが大事なんだから『基礎英語』なんかそんなにテストに出ないよと毎回言い出し、そうして、テストが終わったら落ち込む繰り返し。
教科書以外のテスト範囲を簡単に捨てる子は、親が思う以上に多いです。

また、もっと積極果敢に家庭で英語教育に関わるお母様が、『基礎英語』を自ら録音し、子どもに毎日聴かせているという話も、生徒からは愚痴として聞かされたことがあります。
もう15年以上前のことで、あの頃の『基礎英語』は、月曜日と火曜日・水曜日と木曜日・金曜日と土曜日は同じ番組を放送していました。
「『基礎英語』って、月曜日と火曜日は同じ内容なのに、いちいち録音していちいち聴かせられるんだけど、無駄じゃね?そう言ってもママは怒るだけだし」
「・・・・・2回聴いたほうが勉強になるから。そういう意味じゃないのかな」
「どうせ聴くふりだけで聴いてないから、無駄だよ」
「・・・・聴こうよ、それは。その時間、縛られているのなら、せめて聴こうよ。意味のあるものにしよう」
「聴いていると何か別のことを考えちゃう。眠くなっちゃうし」

どんなに素晴らしいコンテンツが存在しても、本人が自らやる気にならない限り、何の意味もありません。
『基礎英語』が押し付けられた義務である限り、それは呪いでしかない。
そんなわけで、私は、生徒にラジオ講座を勧めることはありません。

とはいえ、良質で新鮮なコンテンツが豊富なので、本当に勿体ない。
ラジオは無料で聴き放題です。
学校のテスト範囲でない限り、テキストなんていちいち買わなくてもいいのです。
「聴く」「話す」練習のためにラジオ講座を利用するなら、テキストはないほうが良いくらいです。
ラジオ講座に関する負のイメージを払拭し、活用する生徒が多くなることを願います。
実際に英語が得意な人は、ラジオ講座肯定派が大半です。
一番良い方法を否定しながら「英語が得意になる良い方法はないですか?」といつもきょろきょろし、読まない参考書を買い、続かない英語教材を購入し、効果の薄い英会話教室に高いお金を払うのは勿体ないです。

2022年から始まったのが、「ニュースで学ぶ『現代英語』」。
毎週月曜日から金曜日の朝9:30~9:45に放送しています。
日曜日の夜22:00~21:15にまとめて5回分再放送もあります。
しかし、どれもこれも不便な時間帯です。
私は、ポータブル・ラジオ・レコーダーを使用しています。
予約録音が可能で、一度設定すれば毎週同じ時間帯に自動録音されていますし、スピーカーのついた土台からはずせば、ガラケーほどの重さとサイズになり、どこでもイヤホンで聴くことができます。
夕飯を食べている途中で、時間を見てカセットテープの録音スイッチを入れにいっていた中学生の自分に教えてあげたい便利さです。

さらに言えば、NHKはインターネット放送がありますので、今はスマホでラジオ放送を聴くことが可能です。
「NHKゴガク」というアプリもあります。
これは、先週放送分の語学放送を聴くことが可能なアプリです。
とにかく、「オンタイムでしかラジオを聴く方法がないが、そんな時間にラジオは聴けない」という件をクリアしないと、ラジオ講座を聴く習慣は作れません。
物理的に無理、ということになってしまいます。
ラジオなんて家にない、という子も今は多いですから。
一方、radikoというアプリで、スマホで民放ラジオを聴くのを好む若者も静かに増えてはいるのですが。

「ニュースで学ぶ『現代英語』」。
内容は時事英語です。
NHKの英語のニュースをピックアップして教材としています。
本物のニュースも聞けますが、比較的ゆっくりで明瞭な範読もあります。
月曜日・火曜日は、スピーキングに重点を置き、反訳トレーニングが導入されています。
「反訳トレーニング」。
本文からピックアップした文を、日本語から英語に直す練習です。
まずは、1文を3つに分けて、範読に続いてリピート。
次に、分解した1部分ずつを日本語の後に自分で英語で言ってみる練習。
さらに、1文全部を日本語の後に自分で英語で言ってみる練習。
この反訳トレーニング、講師の伊藤サム先生の造語ですが、英語の先生の間でじわじわと広まっています。
生徒の定期テストの範囲表を見ると、「反訳プリント」といった表現が当たり前みたいにされていることがあります。

上にも書きましたが、これは私が中学時代に自分でやっていた練習法です。
そして、今も塾で生徒に学校の教科書の本文を使ってやっている学習法です。
塾ではこれを「その英文を書く」までやりますので、さらにレベルが上がります。
英語学習としては一番ハードで、一番効果がある方法です。
とにかく、重要な英語表現を自分の中にインプットしないと、アウトプットなんて一生できません。
口をついて出る英語、すっと書くことのできる英語は、いつか覚えた英語そのままか、そのバリエーションです。
また、これはケアレスミス対策でもあります。
時制、冠詞の有無、前置詞は何を使うかなど、今学習している単元とは直接関係ないのに常に失点原因になることへの対策としても有効です。
ただの丸暗記ではなく、文法的把握をし、英語の構造を理解しながらの暗記が効果的です。

2024年度からは、水曜日・木曜日・金曜日は、そのニュースの専門家を招いて、ニュース解説を加えながらという番組になりました。
進行役の女性の声が、英語講座にしては高くて鋭い。
専門家の方は、ラジオで話すことに慣れていないのか、これもちょっと聴き取りづらい。
2022年度・2023年度の進行役と講師のほうが良かったなあとは思うのですが、伊藤サム先生が月曜日・火曜日に残ってくれているので、贅沢は申しますまい。

「ニュースで学ぶ『現代英語』」は、高校生にお勧めの番組です。
この番組、テキストは販売されていません。
むしろテキストがあると「読む」ことに注意がいってしまい、ちゃんと聴かないし、反訳トレーニングもテキストをつい見てしまい、結果テキストを音読するだけになって効果激減の可能性があります。
テキスト無しで聴いて、内容の聞き取りも反訳トレーニングもどこまで可能か頑張ってみるとやりがいがあると思います。
そして、その後、NHKのサイトに飛べば、番組で扱われたニュースの全文が掲載されていて、その音声を1文ずつ聴くことも可能になっています。
日本語訳も見ることができます。
至れり尽くせるの良いサイトです。

「ラジオ英会話」も良い番組です。
これは、高校初級から中級向けの番組です。
月曜日から金曜日まで、朝6:45~7:00。
昼12:25~12:40。
夜21:45~22:00。
日曜日には、16:30~17:45に5回分まとめて放送されます。
内容は簡単で、英語が得意な高校生には少し物足りないかもしれません。
でも、楽しく英語を学べます。
2024年度は、再び、文法中心のカリキュラムとなっています。

「英会話タイムトライアル」も聴いてみました。
月曜日~金曜日の朝8:30~8:40。
昼12:15~12:25。
夜23:00~23:10。
土曜日の朝7:00~7:50に5回分まとめて再放送があります。
これは「話す」に特化した番組です。
言われた日本語をとにかく英語に直す練習が繰り返されます。
日常レベルの英語がとっさに口をついて出るようにする練習です。
週の前半は、日本語で言われてことをそのまま英語に直すだけのSPRテスト。
何のことかと思ったら、瞬(S)発(P)力(R)だそうです。
それはともかく、「洗濯洗剤」など、咄嗟に出てこないけれど実用的な単語や英語表現が盛り込まれているので、これは大人でも勉強になります。
週の後半は「対話カラオケ」に向けての復習と本番。
対話形式の練習で、放送の「無音」の部分を自分の英語で埋めていきます。
1文しか言えないこともあるでしょうし、3文くらいのまとまった内容を返すことも可能です。
模範を聴いて、もう一度トライできるのも良い構成です。
番組のレベル設定は「基礎英語」と「ラジオ英会話」の間くらいで、ヨーロッパ言語共通参照枠A2~B1と、基礎学習者のレベルです。
しかし、「話す」というのは通常4領域の中で最も遅れてしまう能力で、その分やりがいもありますので、実際にやってみるとそんなに易しくないと思います。
これもテキストは見ないでやるほうが力がつくでしょう。

「聴く」「話す」をラジオ講座で伸びる。
今回は、そんな話でした。
なお、この記事は、もう終わってしまった番組については、順次、新番組に変えて、加筆訂正しています。



  • 同じカテゴリー(英語)の記事画像
    英語の重要文を暗唱する学習法。
    誤読のメカニズム。主観で文章を読む子。
    質問しても、しなくても、大丈夫。
    共通テストで失敗したと感じたら。2024年1月。
    「覚える」ということが、何をどうすることか、わからない。
    英語長文読解。具体例から論理を推理する。
    同じカテゴリー(英語)の記事
     英語の重要文を暗唱する学習法。 (2024-04-18 12:08)
     誤読のメカニズム。主観で文章を読む子。 (2024-03-20 10:57)
     質問しても、しなくても、大丈夫。 (2024-02-25 14:59)
     共通テストで失敗したと感じたら。2024年1月。 (2024-01-16 14:24)
     「覚える」ということが、何をどうすることか、わからない。 (2023-11-24 12:15)
     英語長文読解。具体例から論理を推理する。 (2023-10-20 13:13)

    Posted by セギ at 14:18│Comments(0)英語
    ※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    削除
    ラジオ講座「ニュースで学ぶ『現代英語』」はお薦めです。
      コメント(0)