たまりば

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2018年07月04日

独立試行の確率。

独立試行の確率。


今日は「独立試行の確率」です。
例えば、こんな問題です。

例題 
白玉2個、赤玉6個が入った袋がある。この袋から玉を1個取り出して色を調べてから元に戻す。このとき、1回目に赤玉、2回目に白玉が出る確率を求めなさい。

玉は全部で8個。
そのうち、赤玉が6個ですから、1回目に赤玉が出る確率は、6/8、すなわち、3/4です。
白玉は2個ですから、白玉の出る確率は、2/8、すなわち、1/4です。
玉はその都度袋に戻していますから、この2つの試行は互いに影響しあうことがありません。
ですから、1回目が赤玉で2回目が白玉になる確率は、3/4・1/4=3/16となります。

(1回目の確率)×(2回目の確率)で求められることは、このくらい易しい問題だと何の疑問も感じないようなのですが、この先、もっと問題の難度が上がったときに、
「何でかけ算なんですか?」
と質問する高校生がいます。
実は基本がわからなかったのに何となくスルーしていると、応用問題には対応できなくなります。
わからなくなったら、基本に戻りましょう。

なぜ確率×確率で計算できるのか?
今までの確率の求め方と、確率×確率は、実は同じ式になるのです。
今まで通りのやり方で式を立ててみましょう。
まずは、全体の場合の数を求めましょう。
袋の中に玉は8個ですから、1回目と2回目で全体の場合の数は、8×8。
そのうち、1回目の赤玉は6通り、2回目の白玉は2通りの玉の出方がありますから、6×2。
よって確率は、6×2 / 8×8 = 3×1 / 4×4 = 3/16
上の求め方と数字上は同じ式、同じ答えになりますね。
これを一般化して、文字で表しても、やはり同じ式、同じ答えになるのです。

さて、次の問題。
白玉2個、赤玉6個が入った袋から玉を1個取り出し、色を調べて元に戻す試行を繰り返す。3回目に初めて赤玉が出る確率を求めなさい。

問題の書き方に戸惑う人もいます。
3回目に初めて赤玉が出るとは、どういうことなのか。
1回目と2回目は赤玉ではなかったということです。
それは、つまり1回目と2回目は白玉だったということ。
この問題は、1回目に白玉、2回目に白玉、3回目に赤玉が出る確率ということです。
だったら、先ほどの問題と大差ないですね。
1/4・1/4・3/4=3/64
答えは、3/64となります。

式はシンプルなのですが、この問題の難しさは、「3回目に初めて赤玉」という条件の分析の仕方にあるのでしょう。
これが、白・白・赤の順に玉が出たことだと分析できない高校生は案外多いのです。
説明されれば、わかる。
でも、自力では分析できない。
異口同音にそのように言います。
では、「3回目に初めて赤玉が出た」とはどのようなことだと感じるのかと問うと、1回目・2回目にどんな玉が出たのかは謎のままのように感じると言うのです。

これは、読解力と関係のあることかもしれません。
「変な行間は読まないで。必要なことは文章の中に全部書いてあるから」
と私は生徒に繰り返し言います。
「3回目に初めて赤玉」ならば、白・白・赤の順に玉が出ています。
これは、「行間」ではないのです。
書いてあることです。
そのようにしか読み取れない形で書いてあります。

この場合の「変な行間」とは、例えば、
「赤玉くんは、出たくなかったんだね。袋の住み心地がいいのかな」
とか、
「玉を袋から出しているこの人は、赤玉に出てほしかったんだなあ。赤玉が出るといいことがあるんだね」
とかいうものです。
そんなことは、問題文には書いてないです。

子どもの読書指導をすると、こういう擬人化したもの言いや感情移入は子どもらしくて可愛らしいものですから、つい褒めてしまうことがあります。
想像力があって素晴らしいというのですね。
大人に「ウケる」と、子どもは、その方向で良いのだと思ってしまいます。
しかし、こういう読み取り方は「想像力」というほどのものではありません。
整合性を気にする必要がないので、あまり頭を使わなくてもこうした読み方は簡単にできますから、こんなことばかりに逃げて、正しい読み取りの姿勢が育たなくなる可能性もあります。
「赤玉くん」が本当に出たくなくてふんばっていたのなら、前後にそれを示す描写が必ずあります。
袋から玉を出している人が赤玉を出すことを強く望んでいる場合も同様です。
この問題文だけからでは、それは読み取れないことです。

今、数学の問題文でこんなことを書いているから奇妙ですが、小説の読み取りなどでも、自分の勝手な感情移入で書いていないことを読んでしまう生徒はいます。
勝手な読み取りを「自由な読み取り」「想像力が豊かな読み取り」と褒めてもらえた幼い時代のままなのかもしれません。

数学の問題があまりにも無機質なのがつらくて、擬人化や感情移入で緩和しているのなら構いません。
心情的にはどうであれ、この問題文から読み取れることは「白・白・赤の順に玉が出ていること」です。
それを読み取ることが読解です。

書いてあることを正確に読み取ること。
深く読み取ること。
どの科目の問題文であれ、そのように読んでいけば、正解は見えてきます。


では、こんな問題はどうでしょう。

問題
袋に白玉2個、赤玉6個が入っている。この袋から玉を1個取り出し、色を調べて元に戻す。これを3回繰り返すとき、3回とも同じ色が出る確率を求めなさい。

3回とも同じ色。
それは具体的にはどういうことでしょうか?
白・白・白と連続して玉が出た場合。
赤・赤・赤と連続して玉が出た場合。
この2つです。
このように具体的に分析できれば、式を立てることができます。
白白白の確率は、1/4・1/4・1/4=1/64。
赤赤赤の確率は、3/4・3/4・3/4=27/64。
この2つの事柄は同時には起こりません。
かぶる部分がありません。
ですから、確率は単純に足して良いです。
したがって、求めたい確率は、1/64+27/64=28/64=7/16となります。

この問題も、説明されればわかるけれど自力では発想できないと生徒に相談されることの多い種類の問題です。
これも読解力でしょう。
「3回とも同じ色」と言われたら、それが具体的にどういうことであるかを分析すること。
字面の表面を追うのではなく、具体的なイメージを持つこと。
それが読解だと思います。

数学という科目の好き嫌いとは別の次元で「確率」という単元の得意苦手が大きく分かれる原因の1つは、問題文をどう読解・分析するか、その得手不得手かもしれません。





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    Posted by セギ at 12:32│Comments(0)算数・数学
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