たまりば

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2018年06月29日

なぜ英語を話せるようにならないか。

なぜ英語を話せるようにならないか。

先日、Twitterを眺めていたら、こんな意味あいのツイートが流れてきました。

アメリカで5年暮らして帰国した生徒が準備なしで英検2級を受けたら、面接官の英語の発音が下手過ぎて何を言っているか聴きとれず、二次試験で落ちた。

私が見た段階でリツイートが3万以上、「いいね」が7万以上。
いわゆるバズっている状態でした。

何か心に嫌な引っかかり方をするツイートでした。
ツイートの最後が「英検2級の難しさを再認識させられた」という嫌味で終わっている点も不愉快だったのです。
しかし、それだけでなく、このツイートと、それをリツイートしている人たちの心情に違和感を覚えました。

このツイートをしたのは、予備校の英語講師のようです。
その人が見聞きした範囲のこととして、それは事実でしょう。
こんな嘘をついてもしょうがないです。
5年間アメリカで暮らし、昨年帰国した生徒がいる。
その子が準備をせず、英検2級を受けた。
そして、2次試験の面接で落ちた。
そこまでは、事実だろうと思います。

私が疑うのは、本当に聴き取れないほど、面接官の英語の発音は悪かったのか?
その子は聴き取れなかったのかもしれないが、むしろ本物のアメリカ人ならば、面接官の英語を聴きとれたのではないか?
まずは、この点です。
というのも、私も「英語が流暢な日本人の英語」は聴き取りに多少の苦痛を感じるからなんです。
ただ、私は、それは「英語が流暢な日本人」に責任があるのではなく、私に責任のあることだと思っています。

当たり前のことですが、私が最も聴き取りやすい英語は、リスニング問題の音声です。
あるいは、教材のCDなどのネイティブの範読の英語。
ニュース番組の英語。
英語圏の政治家の発する英語。
知らない単語が混ざっていれば聴き取れないですが、それでも、音としては聞き取れます。

少し難度が上がるのは、ドラマや映画の英語。
モゴモゴ喋られると聴き取りにくいです。
アメリカの田村正和みたいなものですね。
さらに聴き取りにくいのがアメリカの一般人の英語。
人によりますが、かなり聴き取りにくいことがあります。
音がグチャグチャベタベタしていて、簡単な英語が何でこんなに聴きとりにくいんだろうと感じます。
明らかに、本人の滑舌の悪さや発音の癖が影響しています。
「英語が流暢な日本人の英語」は、さらに聴き取りにくいです。
音の1つ1つが、私が予期しているネイティブの正確な英語の音とは違うのです。
「正しい英語の音」ではないのに、やたら流暢に喋るので、聴き取りにくい。
つまりは、正確な音の英語は聴き取りやすく、不正確な音の英語は聴き取りにくい。
繰り返しますが、「日本人の流暢な英語」を私は聴き取れません。
本物の英語とどこか違うからなんです。
NHKのラジオ講座の日本人講師の英語は、ちょっと違和感は覚えつつも聴き取ることができますが、それはかなりスピードを緩め、意味のまとまりごとに大きく区切っているからでしょう。

やはり私の側の聴き取り能力の問題と考えたほうがいい。
ネイティブは、「アメリカの田村正和」の英語を当然聴き取れるのですから。
なまりの強い不正確な音声の英語も聴き取れると思うのです。
ネイティブは、奇妙な発音の英語もある程度の許容範囲をもって聴き取れるでしょう。

これは日本語に置き換えてみるとわかりやすいことです。
外国人向けの「日本語講座」の音声は、明瞭で聴き取りやすいです。
発音・発声をきっちり訓練しているアナウンサーや役者さんが話している日本語ですから。
そうした日本語講座で勉強して日本にやってきた外国人は、現実の日本人の日本語にはかなり苦労すると思います。
滑舌が悪く発音が不明瞭な日本人は沢山います。
日常会話では、そんなに口をはっきり開いて正しく発音しないです。
外国人からすれば、何を言ってるか聴き取れないことも多いのではないか?
一方、我々日本人は、滑舌の悪い人の日本語も、小声過ぎる人のくぐもった日本語も、田村正和の日本語も、外国人のなまりの強い日本語も、聴き取ることができます。
ネイティブは、音の多少のズレや不明瞭な部分を補正して聴き取ることができるからでしょう。
ネイティブは、そういう聴き取り能力をもっています。

だから、日本人の英語は、少しは聞き返されることはあっても、英語のネイティブに通じます。
基本的には、通じます。
発音が悪いという英検2級の面接官の英語も、ネイティブの人には通じるのではないでしょうか。
その程度の有資格者ではあるでしょう。
それを「わからなかった」と生徒が言うのは、本人の聴き取り能力の問題か、でなければ、底意地悪くコミュニケーションを拒む本人の性格に起因することではないでしょうか。

5年アメリカで暮らした。
帰国したら、日本人の英語を聴き取ることができなかった。
それは、その生徒の聴き取り能力に限界があったということだと思うのです。
いえ。
「発音が悪過ぎて」と批判しているところから察するに、相手の発音の悪さをバカにし、聴き取ることを放棄した可能性のほうが高い。
その子は、英検2級合格よりも、面接官の発音の悪さをバカにすることのほうを優先したのかもしれません。
これは、面接官の発音よりも、その生徒の性格のほうが悪い。
コミュニケーションの本質を理解していない。


とはいえ、こういうツイートに説得されたり、そういうことを嬉しく感じてリツイートや「いいね」をしてしまう日本人は多いのだということでしょう。
リツーイトや「いいね」をした人たちは、その英検2級の面接官よりも正確な発音の英語を発することができる人たちなのでしょうか?
そもそも、その人たちは英語を話せるのでしょうか?
この先は、想像の域を出ないのですが、私の想像は、暗澹たる闇に向かっています。
英検2級の面接官の発音が悪いというツイートに留飲が下がる。
信憑性も不確かなそのツイートをリツイートしてしまう。
日本人の英語の発音の悪さを一番気にしているのは、他ならぬ日本人。
そういう構図が浮かびます。
少なくとも、日々英語学習に励み、今日よりも明日はもっと英語が話せるようにと努力している学生や社会人は、こんなツイートはリツイートしないと思うのです。


とはいえ、こんなツイートが共感を呼んでしまうほど、日本人は、英語の発音に対して劣等感が強く、それが英語を話すことへの大きな抵抗の1つになっていることは否定できません。
英語を話すのなら、きれいな発音で話さなければならないという強い思いこみのために、むしろ英語を発することができなくなっている人も多いのではないでしょうか。
日本人の英語を一番バカにしているのは、おそらく日本人自身です。
日本人の英語が日本語なまりの英語なのは、最終的にはどうにもならないことだと思うんですよ。
繰り返しますが、「日本人の流暢な英語」を私は聴き取れません。
やはり本物の英語とどこか違うからなんです。
でも、英語圏の人は聴き取れるのでしょう。
だったら、もうそれでいいですよね。

日本に何十年も暮らし、日本語でジョークを言うこともできるアメリカ人タレントの日本語は、それでもやはり、少しなまっています。
外国人が日本語の歌を歌うテレビ番組がたまにありますが、発音だけに注目すると、特にアメリカ人は日本語の発音が下手です。
英語なまりが抜けない。
英語と日本語は、根本的にソリの合わない言語なのかもしれません。
事実として、アメリカ人は、どれだけ学習しようとも、正しい日本語の発音ができない。
だから、逆に、日本人の英語が日本語なまりなのも、大なり小なりあることで、どうしようもないと思います。
とりあえずカタカナ英語を脱している日本人の発音も、ネイティブの発音とはやはり違うのです。

昔、テレビ番組で、「日本人歌手の中で、英語の発音が良いのは誰か」を在日外国人が答える企画がありました。
日本人から見れば英語が上手そうな日本人アーティストはたくさんいますが、そういう人たちは軒並みアウトでした。
留学経験があっても、帰国子女でも、やはりアウトなのは衝撃でした。
唯一、外国人から絶賛されたのが、宇多田ヒカル。
彼女は、子どもの頃からアメリカで暮らしていた、つまりはネイティブです。
結局、あそこまでいかないと、英語の発音が良いとは言われない。
努力は続けたほうがいいけれど、何だかもう戦意喪失します。
ちょっと留学したり外国暮らしをしたくらいでは、根本のところの発音は治らず、ただ、それを正面切って言われないだけのことなんでしょうか。
五十歩百歩ということですか。
いや、しかし、それでも、五十歩と百歩は異なると考えて、練習していくわけなのですが。

一昨年くらいに流行したピコ太郎の『PPAP』も、外国人が特に面白がったのは発音が変だったからだと、日本にいるアメリカ人が分析しているのを目にしました。
フランスのロケ先で、フランス人の司会者もそんなことを言っていました。
欧米人には、むしろ、あの発音は真似できないそうなのです。
あの発音って、どの発音でしょう。
「アポー」のあたりかな。
いや、もう全部変か。

タレントの草なぎ剛さんは、韓国語を流暢に話しますが、韓国人が聞くと、とても可愛らしい韓国語なのだそうです。
日本人の話す韓国語は、どの人も発音が凄く可愛いのだとか。
何が正しいのかわからないので、そう言われても、もう全くわかりません。
でも、バカにして言っているのではないのは伝わってくるのです。

発音が違うのは、事実としてある。
でも、それをあざ笑うわけではなく、面白い、好ましいと感じる感覚は、もう世界共通なのではないか?
だって、外国人が自国の言葉を頑張って覚えて話してくれたら、基本、もうそれだけで好ましいのですから。

ひるがえって、例えば、コンビニの店員がカタコトの日本語の外国人のとき。
そのカタコトの日本語をバカにする日本人はいない、とは私も思いません。
狭量で底意地の悪い人はどこにでもいるから、バカにしたり怒ったりする人もいると思います。
でも、同じ日本人の目から見て、そういうことをする人は、日本人の中でも劣っている人です。
本人が心に抱えている問題が現れているのだと思うのです。
だから、もしも日本人のカタカナ英語をバカにする外国人がいたら。
その人も、心に何か問題を抱えているのだと思います。
発音が悪いのは事実であっても。
欧米人の階級意識やら差別意識やら、難しいことは色々ありますが、そんなことは英語の発音が良くなったところで解消される問題ではありません。

あなたの英語はわかる。
聴き取れる。
十分に。
ネイティブは、そう思っている。
私たち日本人が、日本語を話す外国人に対してそう思っているように。
基本はそう信じれば良いのでしょう。


もう何年も前、NHKで『仕事ハッケン伝』という番組がありました。
タレントが、1週間、別の職業に就いてみて、そこで色々な経験をする様子をカメラが追っていく番組でした。
あるとき、5か国語に堪能な女性タレントが、長崎ハウステンボスの職員になった回がありました。
お客様を迎えいれ、さまざまな案内をする仕事です。
しかし、そのタレントさんは、お客様に話しかけることができないのでした。
内気で人見知りな性格で、お客様に積極的に声をかけていくことができず、そのことを職員の人に注意され、壁に向かって泣いていました。
どちらかと言えば、私もそういう気持ちはわかるほうなので、うーん、頑張れと思って見ていたのですが、スタジオでそのVTRを見ていた関西の芸人さんが一言。
「客に話しかけられんってどういうこと?何のために5か国語を勉強したん?」
がさつなその発言に、でも、見ていた私も心から笑いました。
本当にそうです。
たとえ5か国語に堪能でも、目の前の人に話しかけられないのなら、意味がない。

言語は何のために学ぶのか。
他人の発音の悪さを底意地悪く指摘するツイートなんかリツイートしていないで、まず声を出さないと。
日本人の発音の悪さをバカにするのは、いつも日本人。
その事実にまず気づくことで変わっていけると思います。




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