たまりば

地域と私・始めの一歩塾 地域と私・始めの一歩塾三鷹市 三鷹市

2017年11月24日

三角比と余弦定理。上手な利用の仕方。

三角比と余弦定理。上手な利用の仕方。

「三角比」の学習。いよいよ佳境です。
今回は、余弦定理の学習をしましょう。

△ABCにおいて、
a2=b2+c2-2bc cosA
b2=c2+a2-2ca cosB
c2=a2+b2-2ab cosC

公式としては、きちんとサイクリックで覚えておいたほうが良いです。
サイクリックとは、ab、bc、ca、といった循環のことです。
caを見ると、必ず「ac」と直そうとする人が、数学が苦手な人の中にときどきいるのですが、それは不要なこと。
a、b、cしか文字がない式の場合、caのほうがサイクリックで美しいのです。
そして、普段からそのような意識を持って文字を見ていれば、余弦定理は、3本あるように見えて、実は1本の公式であることが理解できると思います。
文字を順番に使っているだけなのがわかりますね。

余弦定理の証明はここでは省略しますが、使うのは、三角比と三平方の定理です。
そう難しいものではないですので、興味があれば、検索してみてください。
課題は、やはり余弦定理をどう利用するか、です。

問題 △ABCにおいて、b=1、c=√2、A=45°のとき、aを求めよ。

a2=b2+c2-2bc cosA
に代入すれば良いですね。
というわけで、答案としては、

余弦定理より
a2=1+2-2・1・√2・1/√2
  =1+2-2
  =1
a>0 より
a=1

問題 △ABCにおいて、a=√2、b=2、c=√3-1のとき、Bを求めよ。

角の大きさを求める場合、余弦定理を変形させた式を覚えておくと楽です。
それも含めて余弦定理です。
今回利用するのは、
cosB=(c2+a2-b2)/2ca
という式です。
b2=c2+a2-2ca cosB
を、cosBについて解いた式ですね。

余弦定理より
cosB={(√3-1)2+2-4}/2・(√3-1)・√2
    =(3-2√3+1+2-4)/2√2(√3-1)
    =(2-2√3)/(2√6-2√2)
    =(1-√3)/(√6-√2)
    =(1-√3)(√6+√2)/(6-2)
    =(√6+√2-3√2-√6)/4
    =-2√2/4
    =-√2/2
0°<B<180°より
B=135°

これは、一番地道な解き方で解きました。
しかし、この計算過程を正しくたどれない高校生は多いです。
複雑な式の中で、2乗の乗法公式を忘れてしまう人。
分母が2種類のルートのとき、どうやって有理化するのかわからない人。
単純な符号ミスを起こしやすい人。
複雑な計算をしているとストレスが強くかかるのか、数字の書き間違いをしてしまう人。
エラーの原因は無数に存在します。

一方、数学が得意な人は、答えをある程度予想し、それにそって式を変形します。
上の問題は、「Bを求めよ」と言われています。
Bは角度です。
cosBを求めよと言われているわけではありません。
三角比の表を使わない限り、三角形の角度は、30°、45°、60°、90°、120°、135°、150°のどれかでなければ計算では求められません。
15°や75°などの特殊な角度の三角比を暗記している人もいますが、その暗記を前提とした問題が出題されることはまずありません。
ということは、角度を求める問題ならば、コサインの値は、見慣れた数字のどれかになるものです。
それを見越してまとめていくと、計算はかなり楽になります。

cosB={(√3-1)2+2-4}/2・(√3-1)・√2
    =(3-2√3+1+2-4)/2√2(√3-1)
    =(-2√3+2)/2√2(√3-1)
    =-2(√3-1)/2√2(√3-1)
ここで、分母・分子を(√3-1)で約分して、
    =-2/2√2
    =-1/√2

分母の√3-1 は、三角比としては必要のない数字です。
これは、おそらく約分できるでしょう。
だから、最初から( )を開かないのです。
その方向で分子をまとめていくと、確かに、同じ√3-1の要素が出てきます。
そういうまとめ方です。

地道な解き方でも良いのですが、地道な解き方ほど煩雑な計算に耐えられる計算力が必要です。
しかも、地道に計算すると答えは-√2/2となります。
これが-1/√2 と等しいことがわからず、B=135°と求められない人もいます。
いろいろなことが悲しい結果に終わりがちなのが、余弦定理です。
( 一一)

ところで、cosB= などで始まる余弦定理について、数学が得意な人は、
「こんな式、覚えていなくても、必要になったらいつでも復元できる」
と簡単に言うのですが、四則計算に今ひとつ習熟しきれていない高校生の場合、普通の余弦定理をこの形にすぐに変形できるかというと、残念ながらできない場合があります。
式の変形はなぜそれほどハードルが高いのでしょうか。
方程式なら計算できるのに。

例えば、
3x=2
を解けない高校生はほとんどいないと思います。
数字とxだけの方程式なら解くことができるのです。
けれど、それは解き方を覚えているだけで、等式の原則を理解して操作しているわけではないのかもしれません。
だから、極端な話、
2=3x
という見た目になっただけで、もう計算できなくなる子もいます。
手順を暗記しているだけの人の計算力は脆弱で、少しの揺さぶりに耐えられないのです。

cosB= の形の式を別に暗記しておくのが安全でしょう。
同時に、中学の数学に戻って、「式の変形」を復習すると良いと思います。
苦手だから、嫌いだからと言って、避けていなかったでしょうか。
式の変形の仕方さえ理解できていれば、確かに、cosB= の公式なんてすぐに復元できるのです。

ところで、もっと応用問題になって、複雑な図形の中で余弦定理を利用する場合に、aにあたる長さを求めるのに、どちらがbでどちらがcにあたるかわからなくて、混乱してしまう人がいます。
実は、そんなことは、考える必要がないのです。
bとcなんて、どっちがどっちだっていいのです。
余弦定理は、3本も式があることもあって、初めて見ると動揺しがちなのですが、これは、三角形の合同条件と連動して考えれば、とてもシンプルな式です。
一番上のa2から始まる式を例にとって考えてみると、Aというのはその対角、bとcは残る2辺であることがわかります。
すなわち、右辺にあるのは、「2辺とその間の角」なのです。
つまり、余弦定理は、2辺とのその間の角がわかれば、残る1辺の長さは計算できる、という定理です。

bとcが逆転しても、計算の結果には全く影響しません。
どうせ、図を裏返せば、bとcはひっくり返るのですから。
とにかく、2辺とその間の角から残る1辺の長さを計算できるのです。
そういうことが把握できると、余弦定理はざっくりと、そして快適に利用できるようになります。




  • 同じカテゴリー(算数・数学)の記事画像
    中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。
    考えて問題を解く習慣のない子。
    図形問題の攻略。
    勉強を自分でどう進めていくか。
    アクティブラーニングはどうなったのか。
    中1数学「正負の数」。正負の数の加法・減法。
    同じカテゴリー(算数・数学)の記事
     中1数学「正負の数の乗法」。旅人は東を目指す。 (2024-03-12 12:23)
     考えて問題を解く習慣のない子。 (2024-03-06 13:57)
     図形問題の攻略。 (2024-02-18 17:25)
     勉強を自分でどう進めていくか。 (2024-02-13 21:51)
     アクティブラーニングはどうなったのか。 (2024-02-03 18:11)
     中1数学「正負の数」。正負の数の加法・減法。 (2024-01-24 12:51)

    Posted by セギ at 13:12│Comments(0)算数・数学
    ※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    削除
    三角比と余弦定理。上手な利用の仕方。
      コメント(0)