たまりば

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2017年10月26日

三角比。サイン・コサイン・タンジェントは正確に。


今回も三角比のお話です。
まずは三角比の基本の確認から。

昔、大人のための数学教室で「三角比」を学習したときのことです。
最初の授業で欠席された方が、欠席した分を自習する際に、三角形の頂点の記号を使ってサイン・コサイン・タンジェントの定義を覚えようとして、凄く難しかったと話していました。
sinθ=BC/AC
というように覚えようとされたのですね。
それは無機質で覚えにくいでしょう。
中学生のテキストでは直角三角形ABCの頂点Aは上に描くのに、「三角比」の直角三角形の頂点Aは下にあるのでさらに混乱したということでした。
考えたこともなかった視点でした。

三角比の覚え方。
まずは、直角三角形を整地しましょう。
∠θが左下に、直角が右下にくるように直角三角形を置きます。
この位置が、最初は一番理解しやすいです。
直角三角形の各辺には名前があります。
直角と向き合う辺が「斜辺」。
∠θと向き合う辺が「対辺」。
残る辺を「底辺」と呼びます。(「隣辺」と呼ぶこともあります)

そして、
sinθ=対辺/斜辺
cosθ=底辺/斜辺
tanθ=対辺/底辺
こうして、辺の名称で覚えるのが基本です。

でも、それでもまだ覚えにくいですね。
アルファベットの筆記体のsを描くように分母からなぞるのがサイン。
cを描くようになぞるのがコサイン。
tを描くようになぞるのがタンジェント、と覚えます。
広く知られている覚え方です。

数年前、高校生の男の子にこの覚え方を説明したら、鼻で笑って、
「先生が考えたんですか」
と小馬鹿にしたように言うので驚いたことがあります。
高校生になって遅い反抗期が始まっていた子でした。
「・・・いや、私が考えたんじゃなくて、これはよくある覚え方なんだけど」
私がそう説明すると、その子は、否定されたと感じたのか、プライドが傷ついた様子で顔がこわばりました。
以後、この覚え方が「嫌な記憶」になってしまったのか、意地でもこの覚え方は使わず、その後も延々とサインとコサインが逆になったり正しかったりを繰り返していました。
しかも、私の前で間違えることが嫌なのか、ノートを手で隠したりもしました。
単なる直角三角形の三角比をマスターするまで、大変な労力と時間が必要でした。

助言には耳をかさず、自分のやり方で解こうとし、そしてさらに誤解を深めていく・・・。
教える方も多少厄介に感じますが、教わる側はもっと辛かったのではないかと思います。
教わっているのに素直に聞くことができないのですから。


少し前、定時制高校出身の芸人さんたちが集まって体験や思い出を語り合うテレビ番組がありました。
少し古い時代の、主に関西の定時制高校の様子が語られていました。
定時制高校には、年齢も境遇も様々な人が通います。
中学で不登校だった子。
成績不良でどうしても全日制高校に合格できなかった子。
非行を繰り返してきた子。
そして、経済的事情のために高校進学できず、数十年後にその夢を叶えた大人の人たち。

いわゆる不良少年たちは、定時制高校でも、教室で弱い者に暴力をふるったそうです。
そのとき、50代の韓国人女性が割って入り、叫んだというのです。
「ここには敵はいない」
殴られる側だったその芸人さんは、そんな言葉が通用する相手じゃないと思ったのですが、その不良はその女性に抱きしめられて号泣したというのです。
以後、学校で暴力をふるうことはなくなったそうです。

ここには敵はいない。

1対1の個別指導塾に敵など存在するわけもないのですが、そこに緊張関係を持ち込んでくる生徒がいないわけではありません。
「そうだよ、私がこの覚え方を考えたんだよ。凄いだろう」
とでも言ってふざけてあげたら良かったのかなあ。
私をバカにすることで、その子は留飲が下がったのかなあ。
もう何年も前の話ですが、悔いが残ります。

何よりも、その子が三角比を覚え直し、何とかマスターするまでの時間の長さ、その損失の大きさに悔いが残るのです。
以後は、覚え方を教えるときは、
「これは有名な覚え方で、参考書にもよく載っているね」
と前置きをして説明するようにしています。
私が考えた覚え方のときでも、そう説明することもあります。
そう説明することで素直に聞いて利用してくれるなら、それが一番良いことだからです。


集団指導塾で教えていたときは、その覚え方が有効なものである限り、秀才少年たちが、
「覚えやすいな、これ」
「これは初めて聞いた」
などとつぶやいてくれました。
それで教室の風向きが作られ、これを覚えることが良いことだという空気が生まれました。
塾に通う秀才は実利を優先します。
教え方がわかりやすく、覚えやすい限り、友好的です。

ただ、その一方、一般的には十分にわかりやすい説明や覚えやすいやり方でも、わからない子や覚えられない子はいます。
そうした子は、集団塾では、そのことを口にすることができません。
皆が「わかりやすい」と盛り上がっている中で、自分一人、わからないと感じる。
それを表情に出すこともできない。
そんな子もいます。

こちらはこれ以上はないくらいに噛み砕いて説明したつもりでも、
「わからない」
と言われてしまうのが、個別指導です。
これなら絶対覚えられるはずの覚え方を教えても、
「でも、自分は覚えられない」
と言われてしまうこともあります。

でも、むしろ、そのほうが健全な状態なのかもしれません。

個別指導でも、学生バイトが中心で、若くてカッコいい男の先生や可愛い女の先生が親切に教えてくれるところでは、気がひけてしまって、わからなくてもわからないと言えず、わかったふりをして迎合してしまう生徒がいます。
理解力はあるが勉強が嫌いな生徒は、素敵な先生に教わるだけでやる気が出て成績があがります。
でも、そういうことでは解決のつかない生徒もいます。
わからないままなので、いくら通っても成績が上がりません。

「わからない、わからない、わからない」
と生徒が言い、私に迎合しないのは、1つの信頼の形なのかもしれません。
遅々とした歩みですが、今回の中間テストは、これまで50点未満が指定席だった子たちが、全員、50点を突破しました。
何がわからないのか。
わからないことの一番奥にあるものは何なのか。
ときにはため息の出るようなやりとりもありますが、少しずつ結果は出ています。


三角比に話を戻します。
慣れてくれば、サインとコサインは、とにかく分母は斜辺で、サインの分子はθと関係のないほう、コサインはθと関係あるほうと把握できるようになります。
そうなれば、直角三角形が寝そべっていようが逆立ちしていようが、何でもなくなります。
まずは、そこは目指しましょう。



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