たまりば

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2017年10月12日

場合の数と確率。思考の幻影と闘う。


「場合の数」という単元は、小学校6年生で最初に学習します。
「ならべ方・組合せ方」といった単元名で、全ての場合を書きだして求めるのが基本です。
樹形図の基本もここで学びます。

中学2年生で、「場合の数と確率」を学びます。
「順列」「組合せ」「確率」という用語が登場しますが、この時期も基本は全て書きだして場合の数を求めることが多いです。
中高一貫校では、この時点で公式も教えますが、公立中学では、樹形図などを用いて全て書きだしていくのが基本です。
都立入試の問題も、そのような構造の問題が多いです。
例えば、以下のような問題です。

問題 サイコロを2回投げて出た目の和が6となる確率を求めなさい。

1つのサイコロで出る目は1から6の6通り。
よって、2つのサイコロで出る目の場合の数は、6×6=36(通り)
このうち、目の和が6となるものは、順番に書きだしていくと、
(1,5),(2,4),(3,3),(4,2),(5,1) の5通り。
よって、確率は、5/36。

簡単な問題に見えて、間違える子は案外多いです。
間違える子の多くは、以下のように間違えます。
和が6になるのは、(1,5),(2,4),(3,3) の3通りだけれど、順番が逆なのもあるので、
3×2=6(通り)
だから確率は、6/36=1/6。
(3,3)は1通りしかないことに気づかないのですね。

こういう思考をする子は、数学が特別できないわけではないのです。
全部書き出して済ますのではなく、何とか計算しようと工夫しています。
しかし、詰めが甘い。
全部書き出していくのが嫌なら、( )内の最初のほうの数字だけに注目して、1から5までだな、それなら5通りだなと瞬時に判断するほうがよりシャープな思考だと思います。

地道で丹念であること。
よりシャープな思考を選択すること。
「場合の数と確率」の単元は対極にあるような上の2つを同時に要求される単元なのだと思います。

「何だ5通りかあ。だまされた」
などとブツブツ言いながらも納得する子も多いですが、
「え?6通りでしょう?(3,3)は2通りあるじゃないですか」
と主張する子もいます。
「いえ。(3,3)は、1通りしかないですよ」
「2通りありますよ。こっちの(3,3)と、あっちの(3,3)は、違う(3,3)じゃないですか」
と言うのです。
もう1つの(3,3)の幻影が見えている様子です。
一度この幻影が見えてしまった子は、なかなか説得できません。
「場合の数と確率」という単元は、こういう思考上の幻影が見えてしまうのも1つの特徴なのかもしれません。


高校数学になると、順列も組合せも公式を用いて計算するようになりますが、上のような幻影はさらに濃くなり、多くの人を翻弄します。
数年前、高校生に組み合わせの計算を少し簡単にする方法を指導したときのことです。

問題
12人の生徒を7人のAグループと5人のBグループに分ける方法は何通りあるか。

その子は、まず、12C7という式を立てました。(12や7は、実際にはCより小さく書きます)
そこで私は、少し計算が楽になる助言をしました。
「12人から7人を選ぶ組み合わせは、12人から5人を選ぶ組み合わせと同じだから、そっちで式を立てたほうが、約分が少なくて楽だよ」
「ええっ?」
「・・・・・・え?」
その子の驚き方があまりに大きかったので、逆に私が驚いたくらいだったのですが、この話、その後が長くなりました。
「え?どういうことですか?」
「だから、12人から7人を選ぶということは、12人から5人を選ばないということと同じことだから、選ばない5人を選んでも、同じことなんだよ」
「え?それは、計算するとたまたまそうなるということですか?約分するとどうせ消えるからということですか?」
「・・・・・・たまたまじゃなくて、当然そうなるよ。12人から7人を選ぶことと、12人から5人を選ばないということは、同じことなんだよ」
「ええ?」
「わからない?」
「わかりません」
「・・・・・・・・そうか。じゃあ、とにかく、好きなようにやってみよう」
「見捨てないくださいよ!」
「いや、見捨ててないよ。自分のわかるやり方でいいよ」

それともう1つ。
これほど理解できないということは、彼女は何か他に誤解していることがあると感じたのです。
それを見極めれば、その子が理解できる説明があるかもしれません。
その子は、首を傾げながら、再びその問題を解き始めました。
彼女が書き終えた式は、12C7+12C5というものでした。

「待て。なぜ、それを足すの?」
「え、だって、Bグループも選ばないと」
「・・・・・12C7・12C5なら、まだわかる。いや、それも誤解なんだけれど、まだ意味がわかる。でも、たし算って何?」
「えー?」
「この問題は、12C5だけで答えが出るよ」
「ええっ。何でですか?」

12人から7人を選べば、5人が残ります。
残った5人が自動的にBグループになるので、それを計算する必要はありません。
Aグループに入る人を選んだ後で、さらにBグループに入る人をわざわざ選ぶ必要はないのです。
足すこともかけることも不要です。
12人からBグループの5人のほうを先に選んでもいい。
選ばれなかった7人が残ります。
その人たちが自動的にAグループになります。
だから、人数の少ないBグループを計算するほうが少し楽なんです。

しかし、いったん誤解し、思考がねじれてしまっている子が、上の話を理解してくれる可能性は低いのです。
「場合の数と確率」の単元で、生徒が見てしまった幻影を消すのは大仕事です。
例えるならそれは、シャツのアイロンかけをするとき、普通の洗濯じわなら簡単にまっすぐに伸びるのに、アイロンで誤って作ってしまったアイロンじわはなかなか取れないようなものでしょうか。

ただ、上の話は理解してもらえなくても、理解してもらえる別の説明の仕方があります。
12人から7人を選ぶ選び方は12C7。
そのそれぞれに対して、Bグループは残った5人から5人を選ぶから、5C5。
だから式は、12C7・5C5。
でも、5C5=1なので、わざわざ書かなくてもいいですね。
12C7=12C5 は、約分するとどうせそうなるからという理解でもいいです。
一般式として証明するときは、そういう証明の仕方をしますから。

この説明をすると、
「最初からそう言ってくれれば、わかったのに」
「・・・・・・・はい」
そのように理解してくれる生徒は多いです。
Bグループを選ばないままにしておくことは、どうしても納得できないので、5人から5人を選んであげると、頭の中がスッキリする様子です。
そこがスッキリすると、12C7=12C5 の件は、大した問題ではなくなるようなのです。

わかりやすさの基準はどこにあるのか。
使っている言葉は、ほとんど変わらないのに。
言葉を組み変えたり説明を変えたり、いろいろ試行錯誤をし、どれかがヒットするのを待つのですが、それでも伝わったり、伝わらなかったり。
最初は伝わらかったことが、時間をおくと伝わったり。
でも、それが面白いから、この仕事が好きなのかもしれません。


最後にもう1問。これは少し難問です。

問題 4人でじゃんけんを1回するとき、あいこになる確率を求めよ。

シャープな思考と地道で丹念な解き方は、最終的に一致するものです。
こういう漠然とした問題は、まずは具体的に地道に考えます。
人を、A君・B君・C君・D君と名付けましょう。
4人の手の出し方は、1人が3通りですから、全部で、3×3×3×3=81(通り)です。
その中であいこになるのは、大きく分けて2通りあります。
「全員が同じ手になる場合」と「3つの手が同時に出ている場合」です。

まず、全員が同じ手になる場合は、
全員がグー、全員がチョキ、全員がパーの3通り。

次に、3つの手が同時に出ている場合。
グー・チョキ・パーのどれかの手を2人が出し、あとは1人ずつでしょう。
まず、グーを2人が出し、あとの手は1人ずつと考えてみましょう。
A、B、C、Dを横に並べて、グー・グー・チョキ・パーのどの手を出すかを割り振っていきます。
同じものを含む順列の公式で割り振ることができます。
4!/2!=4・3=12(通り)
これは、チョキを2人が出す場合も、パーを2人が出す場合も同じ数となるでしょう。
だから、12・3=36(通り)

よって、あいこになる場合の数は、
3+36=39
したがってあいこになる確率は、
39/81=13/27 となります。

このように、より具体的に考えていくことで立式が可能になります。
高校数Aの「場合の数と確率」の問題は、より具体的に考えることが幻影を見ないコツだと思います。




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