たまりば

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2017年07月13日

2次関数の文章題


画像はギンリョウソウ。
今の時期、日陰の林床で見られる植物です。

さて、今回は「2次関数の利用」。
文章題です。
文章題を解く際に、子どもは語彙の面でつまずくことがあります。
例えば、こんな問題です。

幅16cmのトタン板を折り曲げて、切り口が長方形のといを作る。切り口の面積が最大となるようにするには、といの深さを何cmにすればよいか。またそのときの面積も求めよ。

この問題、高校数Ⅰの問題としては易しいのですが、解けない子は多いです。
問題を熟読している様子なので、考えているのかなあと様子を見ていると、かなり時間が経ってから質問してきます。

「・・・・・・といって、何ですか?」
「とい?雨どいのことでしょう」
「何ですか、それ?」
「家の屋根の下につけてある、雨水を受けるものだよ。見たことない?」
「ありませんね」

高1でも、日本語の名詞の中で知らないものがたくさんあります。

一応、といの件は理解して。
それでも手が動きません。
しばらくして、また質問。
「トタン板って何ですか?」
「金属の薄い板だね。鉄かな。錆びないように何かでメッキしてあるんだと思うよ」
「何かって、何ですか?」
「知らない。興味があるなら、自分で調べたらいいよ」
「知らないと、わからないじゃないですか!」
「トタン板の成分は、この問題を解くのに必要ないでしょう」
「・・・・・・・・」

現代の子どもがトタン板を知らないのは、仕方ないかもしれません。
辞書で調べたら、鉄を亜鉛でメッキしてあるものだそうです。

私も、トタン板とは何なのか、曖昧にしか理解していませんでした。
でも、問題を解くのに不都合を感じません。
そもそも、この問題、テキストでは、横に挿絵があるのです。
言葉による説明だけでは、わかりにくいからでしょう。
それでも、言葉でつまずく子がいます。
知らない言葉があると混乱し、もう解けないと思ってしまうようです。
自分の知らないことがたくさんあることを不安に思っていて、だから、そういう反応になってしまうのでしょうか。

言葉の意味がわからないだけではないのでしょう。
文章題は苦手だと思いこんでいる子の多くは、解法パターンを把握していません。
文章題を解いていく方法はどれも同じです。

➀何をxとするかを決める。
➁xを用いて、何かの数量を表す式を立てる。
➂式を解く。
➃解が問題の答えとして適切かを確認して解答する。

文章題が苦手な子は、この解法パターンを理解していません。
毎回、
「何をxとしますか?」
と声をかけないと、全く手が動かない子は多いです。
彼らは、では、何を考えて、どう解こうとして悩んでいるのでしょうか。
おそらく、文章題を見ると小学生に戻ってしまい、小学生として答えを出す式をうんうん考えているのではないかと推測します。
それは難しいでしょうね。
上の問題を、小学生として解くのは、普通の小学生には無理だと思います。
受験算数の訓練を積んでいれば、面積図を描いて強引に解く方法はあるでしょう。

「何をxとしたらいいのかわからない」
と言う子もいます。
「求めたいものをxとするんですよ」
「でも、そうじゃないときもあった」
「うん。増減に関する方程式の問題は、例えば昨年の女子の生徒数をx人としますね。でも、あれは、読めばすぐ増減に関する問題だとわかりますから、区別できますよ。それ以外は求めたいものをxとするのでほとんど大丈夫ですよ」
「でも、そうじゃないときもあった」
「・・・・どんなとき?」
「忘れた」
「・・・・・・・」

彼らは、数学に対してネガティブで、裏切られた記憶ばかりが濃く残り、標準的な解き方を信じることができないのかもしれないと思うことがあります。
易しいことを難しくしているのは、自分の心かもしれません
文章題だからどうせ難しいなんて思いこみは、捨ててしまいましょう。

上の問題で言えば、求めるのはといの深さですから、深さをxcmとします。
式はxではない数量を表す式を立てます。
ここでxに頭がとらわれ、xを表す式を立てようとする子がいますが、それは小学校の算数。
立てる式は、xそのものではない数量を表すのだということを理解しているだけで、問題はかなりほぐれてきます。
この問題の中で、といの深さではない数量というと。
1つはトタンの板の長さ。
もう1つは、といの切り口の面積。

どちらにするかは、センスの問題もあります。
数学が嫌いな子に、この二択を選ばせると、「トタン板の長さ」と答える子は確かに多くて、がっかりしてしまうのも本当です。
そちらのほうが求めやすそうだから選んでしまうのでしょうか。
目先の求めやすさを選び、問題を解くにはどちらが有効かという判断ができないのだと思います。
この問題では、切り口の面積も求めるのですから、面積を表す式を立てるという判断が妥当でしょう。
といの切り口は長方形。
その長方形の縦の長さはといの深さであるxcm。
では横の長さは?
トタン板の長さ16cmから、深さとして折り曲げたx㎝2個分を取り除いたものが、長方形の横の長さになります。
したがって、横の長さは16-2x(cm)。

よって、切り口の面積は、
x(16-2x)。
これが最大になれば良いのです。
xの値によって、この式全体の値も変わっていきます。
ですから、これは、2次関数の最大値に関する問題ですね。
グラフの形や頂点を把握しましょう。
平方完成が必要です。

F(x)=x(16-2x) とします。
   =16x-2x2
   =-2x2+16x
ここで平方完成をします。
   =-2(x2-8x)
   =-2(x-4)2+2・16
   =-2(x-4)2+32

「何で平方完成するの?」
と質問されることがあるんですが、最大値や最小値を求めるのには頂点の座標が必要だからです。
しかし、それだけでなく、とりあえず2次関数を見たら平方完成して、軸や頂点の座標を把握してみるのは意味のあることです。
それを習慣にしておけば何も問題はないのです。
どんなときに平方完成したらいいかわからない、などと言わず、とりあえずどんなときも平方完成することをまず考えてみたら良いと思います。
数学が苦手な子は、この「とりあえずやってみる」ができない子が多いように思います。

上の式を2次関数としてとらえれば、
頂点は(4,32)、上に凸の放物線だとわかります。
すなわち、X=4のとき、最大値32です。

この問題、何を求めるんでしたっけ?
切り口の面積が最大となるときのといの深さと、そのときの面積でしたよね。
0<2x<16
0<x<8
という問題の条件に、この頂点の数値は一致します。
よって、といの深さは4cm、面積は32平方cmです。

「え?」
ここで固まってしまう高校生は多いです。
平方完成しただけで、何でもう答えが出てしまうのか、わからない。
何か物凄い飛躍がある。
全然わからない。
そういう表情で固まってしまうのです。

「何で32が、といの切り口の面積になるの?」
「この式は、といの切り口の面積を表す式だからだよ。その最大値が32なんだから、といの面積の最大値は32だね」
「ちょっと、何言ってるかわからない」
「・・・・・・・」

この深い断絶をつなぐ言葉が、なかなか見つかりません。
2次関数に関して普通のことが、彼らの頭の中で繋がっていないのを感じます。
といの深さをxcmとしたこと。
といの切り口の面積を表す式を立てたこと。
そうした最初の前提と計算の結果とが上手く繋がらないようなのです。
2次関数の最大値・最小値を求めなさいという計算問題ならば解けるのに、文章題になるとその考え方を利用できない子は多いです。
最大値・最小値に関する問題は、今後の単元でも、忘れた頃に出てきます。
その度、
「これは、最大値を求めよと言っているんでしょう。だったら、2次関数として解くだけだよ」
とヒントを出せば済む子と、答案を全て板書して詳しく解説しても理解した表情を見せない子がいます。


文章題になると、理解できなくなる。
それは小学生も同様です。
何年か前の小6対象の全国学力調査の算数に出題された文章題。
そこに、謎の言葉が登場しました。

「親指と人差し指を直角に広げ、その両端を結んだ長さを、ひとあた、と言います」
そのように、問題文中で説明されていました。
挿絵もありました。
「ひとあた」という見慣れない単位の意味を理解すれば、問題そのものは簡単でした。
「割合」に関する易しい問題です。
でも、言葉でつまずくタイプの子は、あの問題は解けなかったと思います。
知らない言葉が出てくると、「習っていない」「習っていないことがテストに出た」「習っていないから、わからない」となってしまう子は、真面目な秀才の中にもいます。

大人でも、「ひとあた」は、耳慣れない言葉です。
使いやすい箸の長さは「ひとあた半」と説明されると、ああ、そう言えばそんなことを聞いたことがあると、ようやく思い出す言葉だと思います。

でも、知らなくたって、いいんです。
問題文の中で説明されているんですから。
それなのに、問題の中でどれだけ説明されていても、自分が知らないことは解けない子がいます。

受験算数ですと、「約束記号」の問題が苦手な子は、そういうタイプの子です。

「大きいほうの数を小さいほうの数で割って、その商を3倍することを、記号◎を使って表すとします。例えば、2◎10=15 です。以下の問いに答えなさい」

こういう問題、受験算数としては簡単なことが多く、得点源なのですが、わからない子は全くわからない様子です。
問題の意味がわからないというのです。

「だから、そういう意味の記号なんだね」
「知らない。そんな記号、あるの?」
「いや、このときだけの記号だよ」
「知らない」
「だから、この問題だけの記号だから、覚える必要なんかないし、知らなくていいんだよ」
「何それ。そんなことして、いいの?」

新しい情報を飲み込めない。
頭が固い。
頑固である。
文章題が苦手な子の特徴の一つといっていいかもしれません。

もう何度も書いてきたことですが、大人よりも子どものほうが、むしろ保守的で頑固です。
視野が狭く、融通がききません。
視野を広げ、より柔軟になるために、人は学ぶのでしょう。

それでも、やはり子どもは柔軟です。
子どもの持つ柔軟さとは、自分の知らないことに失敗し傷ついたときの、そこからの回復力を指すのではないでしょうか。
自分の間違いに気づいてそれを受け入れる力は、子どもは圧倒的です。
今日の自分の固定観念なんて、明日は踏みつけて生きていけるはずです。
文章題が難しいなんてのも、くだらない固定観念かもしれませんよ。



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