たまりば

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2017年06月01日

グラフに対する認識も小学生と中学生では大きく異なります。



昔、大人のための数学教室で「1次関数」の復習をしていて、目から鱗が落ちる質問を受けたことがあります。
1次関数のグラフを描くときは、そのグラフを通る2点を取って、それを直線で結べばいいんでしたよねと説明したときのことです。
「本当に、それでいいんですか?何か、直線にならない気がするんですけど」
「・・・・・え?」
「yが途中で大きくなったり小さくなったりすると思うんですけど」
「・・・・?」
1次関数のグラフが直線であることに疑義を挟まれたことはそれまでなかったので、驚きました。
「傾きがマイナスだと、直線になる気がしないんです」
「・・・・・え?」

なぜ傾きが負の数だと直線になる気がしないのか?
例えば、y=-2x-3
xとyの一覧表を作って確認しましょう。

x -3 -2 -1  0   1  2   3
y  3   1 -1 -3 -5 -7 -9 

xが1ずつ大きくなると、yは2ずつ小さくなり、変化が一定であることがわかります。
これらの点を座標平面上に取っていくと、全ての点は1つの直線上にあります。

しかし、xが負の数であるときに、そのxに-2という負の数をかけてさらに-3をするときの値がどのように変化するか、頭の中だけでイメージするのは難しいかもしれません。
xが大きくなるとyも大きくなるような気もするし、小さくなるような気もする。
そのため、傾きが負の数の1次関数のグラフが直線になることがイメージできなかったようでした。 

正負の数の計算について正確なイメージがないと、1次関数も正確にイメージできないのです。
日頃、子どもからはこのように具体的な説明はなかなかないので、その場に立ち尽くしてしまうほどの衝撃がありました。
1次関数のグラフを描くこと1つでも、そのように不安定な感覚と闘っている子どもがいるのだろうと思います。


学校の数学教育が間違っているのかというと、そんなことはなく、中1の「比例」でも、中2の「1次関数」でも、初めて学習するときは、xとyがどのような値をとって変化するか、上のようにまずは表にして整理し、その表をもとにグラフに点を打ち込んでいき、それが直線になることを確認しています。
「1次関数」は直線であることや、y=ax+bのaが正の数のときは右上がりのグラフ、aが負の数であるとき右下がりのグラフであることを実際の作業で確認するのです。

ただ、そのような作業をしているときに、その作業の目的がよくわからない子は数学が苦手な子に多いかもしれません。
符号ミスや計算ミスをしやすいため、自分の計算通りに点を打つと、グラフはジグザグの折れ線グラフになってしまいます。
しかし、授業は、
「はい。皆さん、直線になりましたね」
と進行していきます。

何のために何をやっているのかわからず、
「点を打って結ぶだけだ。簡単なことをやっているなあ」
とバカにしてかかる子もいるでしょう。
しかし、
「aが正の数のときは右上がりの直線、aが負の数のときは右下がりの直線になりますね」
と、授業がまとめに入ると、何のことかわからずうろたえてしまうかもしれません。
1つ1つの事象はわかるけれど、抽象化されると途端にわからなくなる子は、そういう反応になりがちです。

あるいは、それすら「当たり前じゃん」と感じて聞き流す子もいるでしょう。
大切なことを、大切であると認識できず、聞き流します。
そうしてふっと気がつくと、1次関数が直線であるということに実感がありません。
aの正負で直線の右上がり右下がりが決定することにも実感がありません。
だから、aの正負によって場合分けして解かなければならない問題に対応できない。
解説を聞いても、意味がわかりません。
そういうことが起こります。


中学校の関数の学習の冒頭に行う、上のように一覧表を作ってグラフを描いてみる作業の意味に気がつかない子が多いのは、小学校の算数から脱皮できていないことにも原因があるのかもしれません。
関数のグラフは抽象化されたものなのですが、そのことがわかっていない子は多いと思います。
小学校のグラフの学習は、「関数」ではなく「資料の整理」という単元から始まります。
「1日の気温調べ」などの資料をグラフにし、点と点とを何の疑問もなく線分で結んでいくのです。
それが折れ線グラフのルールだからです。

ところが、小学校も高学年になると、そういう呼び方はしないものの「関数」の学習が始まります。
「関係を表す式」「ともなって変わる量」といった名称の単元です。
それは「資料の整理」とは別系統の単元ですが、グラフを使用するという点で、小学生には区別がつきません。
5年生になって、「比例」の学習に入っても、作成した表の通りに点を打ち込んで、それを結んだだけのグラフを描いてしまいます。
「原点と結んで」
「グラフ用紙の最後まで直線を伸ばして」
そう注意されれば、そんなものなのかと思ってその通りにするでしょうが、そうしなければならない理由を、小学生の大半はおそらく理解していないでしょう。

6年生になると「反比例」の学習に入ります。
そこでもやっぱり、点と点とを何の疑問もなく線分で結んで、カクカクした反比例のグラフを描いてしまう子は多いです。
「もっとなめらかな曲線で結んで」
と注意されると、素直な子は、ああそうなのかと直しますが、どうしてそうしなければならないのかを理解するのは、実は大変なことかもしれません。
今までの折れ線グラフは、点と点とをカクカク線分で結んでいて正解だったのに、なぜ「反比例」のグラフはそれではダメなのでしょうか?
そのことの意味を理解している小学生がどれだけいるでしょう。

小学生が描いている「1日の気温調べ」などの折れ線グラフで用いているのは、測定値です。
しかし、関数で描いているグラフは、測定値を結んだものではありません。
あれは、座標平面上の点の集合です。
共通の法則を満たす点の集合体としての直線または曲線です。

しかし、そんなこと、小学生に話してわかる種類のことではないですし。
中学生に話しても、わかる子もいればわからない子もいるでしょうし。

こういう根本的なことを、言葉で説明されなくても概念のまま理解するのが子どもの能力の大きな特徴なのですが、もしも理解できなかった場合、その子には関数のグラフはどのように見えているのでしょう。
意味のわからないことと、どのように折り合いをつけているのでしょう。

「関数」が苦手な子が、表面上の作業手順だけは身につけたとしても、根本の理解に至らないままに終わる理由の一つにこういうことがあるのかもしれません。



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