たまりば

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2016年11月24日

三角形の線分の比と面積の比。



三角形の線分の比と面積の比。

さて、今回は、中学三年生の数学「相似」という単元の中の「三角形の線分の比と面積の比」の話。

例題 上の図で、AD:DB=2:3、BE:EC=4:1である。△BDEの面積は△ABCの面積の何倍であるか答えなさい。

この問題には何通りかの解き方がありますが、どれも、高さが等しい三角形は面積の比と底辺の比が一致するという考え方を利用します。
そのことがまず理解できるかどうかが鍵です。

上の図で、高さの等しい三角形は、例えば△ADEと△BDEです。
底辺が同じ直線上にあり、残る頂点が一致していれば、その2つの三角形の高さは等しいです。
図形の学習の難しさは、このことが理解できない子が少なからず存在するというところにあります。
2本の平行線の間に三角形を2つ描いて、この2つの三角形は高さが等しいねと説明してあければ理解できる子も、こうした図の中で高さの等しい三角形を自力で発見することができないこともあるのです。
「三角形の高さ」というものへの認識が漠然としていて、小学生の頃から底辺と斜めの位置の辺の長さも高さとして利用して面積を求める式を立ててしまう子は、上の図の三角形のどこが高さなのか把握できないようです。
あるいは、三角形が少し斜めになっていたり逆さになっていたりするだけで見えにくくなってしまう子も多いでしょう。

図形把握力の弱さは、小学生の頃から表れています。
正方形が斜めになっているだけで正方形に見えなくなる子。
図形の向きによって、直角三角形と二等辺三角形の識別ができない子。
三角形の高さをその三角形の外側の位置にしか示せないような形の三角形のときに、高さを把握できない子。
「では、どうしたら良いのでしょうか」
と保護者の方から相談されることがあるのですが、弱点というのはそんなに簡単には克服できません。
問題ごとに「この三角形とこの三角形が高さが等しいのですよ」とマーカーでなぞり、このように見えるものなのだということを教え込んでいくしか方法はないと思います。
知力がイメージ力を補っていくのを期待しましょう。
時間は相当かかると思います。

さて、一応、高さの等しい三角形は把握できるのだとして。
その先、この問題をどう解いていくかです。

私立中学を受験した子たちにとっては、この問題は学習済みの内容です。

教える場合も、正直に言えば、中学受験経験者に対するほうが相似は教えやすいです。
基本は理解できていますので、実際に解いてもらい、本人の習熟度を判断しながら、本人にわかる解き方で教えていきます。
同じ中学受験生といっても「相似」という単元に関しては習熟度に大差がありますので、理解できるレベルも個人差が大きいです。

まず最も基礎的な中学受験算数の解き方としては。
三角形の高さが等しいならば、底辺の比と面積の比は等しいから、
△ADE:△BDE=2:3
この2つを合体させた△ABEを➄とする。
同様に、
△ABE:△ACE=4:1
➄が4にあたるのだから、それを20と置き換えると、
△ABEは、20。△ACEは、5。
△BDEは、12。
△ABCは、25。
よって、△BDEは△ABCの12/25倍。

受験算数にもう少し習熟している子は、別の解き方をします。
△DBEと△ABCで。
底辺の比は、4:5。
高さの比は、3:5。
よって、面積の比は、12:25。
答え 12/25倍。
(底辺の比)×(高さの比)=(面積の比)
という「比の積」の考え方が身についている子には、これで話が通じます。
上の図に一応入れた補助線AEも必要としません。
ただ、底辺の比の4:5はともかく、高さの比が3:5であることは理解できない子が多いです。
式そのものは簡単なのですが、自力で使えるかどうかは個人差が大きい解き方です。
説明を聞けば理解できるのだとしても、試験中に自力で使えなければどんなテクニックも意味がありません。
「比の積」「比の商」は、中学受験生の中でもかなり受験算数に習熟した子でないと定着していない内容です。
多少もたついても、一番上の解き方のほうが理解できる子が多いのです。

一方、中学受験を経験していない子たちは、この問題をどう解くのがベストかというと。
一番上の解き方は、最小公倍数で揃えることを必要としない問題ならば良いのですが、今回のように「20に揃える」といった要素が出てくると、あまり定着しません。
〇や△を使って問題を解くことに慣れていないので、作業自体がもたつきますし、〇と△を使い分けることをせず混乱してしまう子がほとんどです。

そこで、分数を使ったきっちりした式で説明することになります。
慣れるとこちらのほうがわかりやすい面もあります。
これは、大きい三角形のほうから分割するように考えていったほうがわかりやすいです。
まず△ABEは、△ABCを4:1に分けた4つ分のほうですから、
△ABE=△ABC×4/5
また、△BDEは、△ABEを3:2に分けた3つ分のほうですから、
△BDE=△ABE×3/5
     =△ABC×4/5×3/5
     =△ABC×12/25
よって、△BDEは、△ABCの12/25倍。

ものの考え方がシャープな子に対しては、2番目の(底辺の比)×(高さの比)=(面積の比)の意味とその考え方を一度きっちり教えます。
これは公式として覚えなさい、この形の問題を見たら必ずこれで解きなさいと指示します。
「裏ワザ」的なことが好きな男子生徒は定着率が高いです。


同じ問題を解くときに、上のような問題は、中学受験の経験者にとっては解き慣れた基本問題ですが、中学で初めて学ぶ子にとっては初めて挑戦する内容だというのは大きな違いです。
この差は埋まらないことが多いです。
経験値が違い過ぎます。
毎日放課後遊べるはずの楽しい小学校時代の数年を受験勉強に注ぎ込むというのは、そういうことです。
何かを失ったかもしれない。
でも、得たものも大きい。
そういうことだと思うのです。

一番難しいのは、受験算数を勉強したけれど結局マスターできなかった子。
〇や△の記号を使おうとするけれど記号の使い分けをせず、無関係な比を同じものと誤解して使用し誤答してしまいます。
曖昧に身につけた技術がアダとなっている印象です。
他の解き方を教えても、逆に混乱する様子であまり定着しません。
何を解いても、何度解いても、間違える。
気持ちも滅入ってきます。

受験算数で挫折感を深めてしまうと、メンタルの問題としては、数学嫌いをこじらせてしまうことがあります。
世間一般のレベルから言えば、そんなに数学ができないわけではないのに、本人はそう思っていません。
苦手意識から、勉強が後回しになり、やがて本当に苦手になっていきます。

公立小学校・中学校の算数・数学しか知らず、自分は数学はよく出来ると自信を持っているほうが幸せかもしれない、とも感じます。
自分は数学は得意だ、数学は好きだ、という信念で、コツコツ勉強していったほうが、高校数学がよく身につく場合もあります。

その子にあった道がある。
どの道にも良い可能性はある。
そう思います。



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    Posted by セギ at 13:14│Comments(0)算数・数学
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